イングリッシュ・ナショナル・バレエが5月より劇場で公演を再開、タマラ・ロホ振付・演出『ライモンダ』世界初演ほか

ワールドレポート/その他

香月 圭 text by Kei Kazuki

英国では2020年12月からワクチン接種が開始され、全国民のおよそ半分が第一回目のワクチンを接種したと伝えられているが、その結果、新型コロナウィルス感染者が激減し、明るい兆しが見えつつある。イングリッシュ・ナショナル・バレエ English National Ballet (ENB)では昨年春パンデミックが起きて以来、「バレエ・オン・デマンド」で過去の公演をレンタルしているほか「バレエ・アクティブ」プログラムでタマラ・ロホはじめ所属のダンサー、教師たちによるオンライン・クラスを提供してきた。今回、イギリス政府によるロックダウン緩和のためのロードマップのステップ3に従い、2021年5月17日よりサドラーズ・ウェルズ劇場で劇場公演を再開することとなった。ENBの2021〜22年シーズン・プログラムの概要と、ユース・カンパニーのオンライン・クラスなどについてお伝えしよう。

◆『Reunion(再会)』2021年5月17日〜30日 サドラーズ・ウェルズ劇場
2021〜22年シーズン開幕と劇場上演再開を告げるプログラム。2020年後半のデジタル・シーズン中に制作・動画撮影が行われた作品群で、劇場での上演は初めてとなる。
『Laid in Earth』シディ・ラルビ・シェルカウイ振付
『Echoes』ラッセル・マリファント振付
『Senseless Kindness』ユーリ・ポソホフ振付
『Take Five Blues』スティナ・クウァグブーア振付
『Jolly Folly 』アリエル・スミス振付

Fernanda-Oliveira-and-Fabian-Reimair-in-Russell-Maliphants-Echoes-©-English-National-Ballet-1.jpg

ラッセル・マリファント『Echoes』
Fernanda Oliveira and Fabian Reimair in Echoes by Russell Maliphant © English National Ballet

◆タマラ・ロホ振付・演出『ライモンダ』世界初演
2022年1月13日〜23日 ロンドン・コリシアム
クリミア戦争で活躍した看護師フロレンス・ナイチンゲールの話にインスピレーションを受けたロホが、『ライモンダ』の舞台を1954年の英国に設定。平穏な生活を捨て、戦地で看護師となったライモンダと兵士との恋の行方を描く。
タマラ・ロホはイングリッシュ・ナショナル・バレエに対する展望について次のように語っている「古典作品を新鮮な目で見つめ直し、新たな状況を見出し、それらを今日の問題と直結させ、新たな声を広げ、究極的には舞踊芸術の発展につなげていきたいと、ずっと思い続けています」。『ライモンダ』オリジナル版の全幕が上演されたことはこれまで英国内でほぼなかったことと、タマラ・ロホが振付・演出を初めて行ったという点で、この新解釈版『ライモンダ』は注目に値する。
フィンランド国立バレエとの共同制作/プロダクション・パートナー:サウサンプトン・メイフラワー・シアター/2021年度フェードラ・ヴァン=クリープ&アーペル・バレエ賞にノミネート。

Raymonda-RD-Images.00_04_15_22.Still009.jpg

『ライモンダ』創作中のタマラ・ロホ /Raymonda R&D © Laurent Liotardo

◆アクラム・カーン振付『Creature (クリーチャー)』
2021年9月23 日〜10月2日 サドラーズ・ウェルズ劇場、2022年2月24日〜26日 ハリス・シアター(アメリカ、シカゴ )
『Dust』『ジゼル』に続いて、カーンとENBとのコラボレーションは3作目となる。
カーンの新作『Creature』は、放棄、孤立、精神の脆弱性をテーマにしたアウトサイダーと帰属への希求の物語である。ゲオルク・ビューヒナーの未完の戯曲『ヴォイツェック』に触発され、メアリー・シェリーの『フランケンシュタイン』の影響も感じられる。
2019年度フェードラ・ヴァン=クリープ&アーペル・バレエ賞にノミネート。

Akram-Khan-and-Jeffrey-Cirio-in-rehearsals-for-Creature-by-Akram-Khan-c-Laurent-Liotardo.jpg

Akram Khan and Jeffrey Cirio in rehearsals for Creature by Akram Khan © Laurent Liotardo

◆「Solstice(至点)」ENBのレパートリーで夏至を祝う舞踊と音楽の饗宴(ガラ・コンサート)
2021年6月16日〜26日サウスバンク・センター内ロイヤル・フェスティバル・ホール
『眠れる森の美女』ケネス・マクミラン振付
『Dust』アクラム・カーン振付
『Three Preludes 』ベン・スティーヴンソン振付
『海賊』マリウス・プティパとコンスタンチン・セルゲイエフ版をアンナ=マリー・ホームズが改訂振付
『コッペリア』ロナルド・ヒンド振付
『Broken Wings 』アナベル・ロペス・オチョア振付
『Hollow 』スティナ・クウァグベーア振付
『白鳥の湖』デレク・ディーン振付
『プレイリスト (トラック 1, 2) 』ウィリアム・フォーサイス振付

Tamara-Rojo-and-James-Streeter-in-Dust-by-Akram-Khan-©-Photography-by-ASH.jpg

アクラム・カーン『Dust』
amara Rojo and James Streeter in Dust by Akram Khan © Photography by ASH

Jurgita-Dronina-and-Isaac-Hernandez-in-Swan-Lake-©-Laurent-Liotardo.jpg

『白鳥の湖』
Jurgita Dronina and Isaac Hernández in Swan Lake © Laurent Liotardo

◆『くるみ割り人形』
2021年12月16日〜2022年1月8日 ロンドン・コロシアム
クリスマス・シーズンに欠かせない名作。ENBではウェイン・イーグリングによるコンセプト&振付、20世紀初頭のエドワード朝時代のロンドンが舞台となっている。

Daniel-Kraus-as-Mouse-King-and-Skyler-Martin-as-Nutcracker-c-Laurent-Liotardo-2.jpg

『くるみ割り人形』Daniel Kraus as Mouse King and Skyler Martin as Nutcracker © Laurent Liotardo

◆「THE FORSYTHE EVENING (フォーサイスの夕べ)」
2022年3月31日〜4月10日サドラーズ・ウェルズ劇場
ネオ・ソウル・ミュージックのグルーヴを感じながら、ウィリアム・フォーサイスの先鋭的なコンテンポラリーの身体言語で踊るダンサーたちの姿を堪能できるトリプル・ビル。
『Blake Works I』
『Playlist (EP)』
『Approximate Sonata 2016』

ENB70-Gala-Playlist-Track-12-by-William-Forsythe-©-Bill-Cooper.jpg

フォーサイス「Playlist(Track 1,2)」 English National Ballet in Playlist (Track 1,2) by William Forsythe.© Bill Cooper

◆ENB YouthCo-nnect サマー・プログラム 2021
2021年5月8日〜26日 合計4回 日本時間 毎週土曜日 深夜1時30分 -2時45分
Zoomレッスン 11〜15歳対象。ダンス経験があるほうがのぞましい。
参加費:27ポンド(約4,050円)
ENBのユース・カンパニー「ENB YouthCo」のクリエイティブ・ディレクター/ダンス・アーティスト、ジョー・メレディスによる指導で、テクニックと創造性のブラッシュアップを目指す、1か月4回の夏季プログラム。ENBのクラシックとコンテンポラリーのレパートリーが教材に採用される。

◆ENB YouthCo デジタル・オープン・デー
2021年5月16日(日)日本時間19時〜20時30分
Zoomにて行う 14〜18歳ダンサー対象
無料だが予約が必要
ENBユース・カンパニーの様子をオンラインで見学でき、スタッフやダンサーにオーディションのコツやテクニックなどについて相談できる。クラシック・バレエ界でまだ人数の割合が少ないアジア系や男子、イースト・ロンドン在住者などの参加歓迎。

◆アーツ・アワード・スクール・ワークショップ・オンライン
ロンドン・トリニティー・カレッジに運営母体がある「Arts Award アーツ・アワード」は地域の芸術団体と芸術に関心がある若い世代をつなぎ、次世代への芸術の啓蒙活動を促進している。ENBでも「アーツ・アワード」の理念に賛同し、「ドゥミ・パッケージ」「グラン・パ・パッケージ」として子どもたちにENB舞台を見てもらい、ワークショップに参加し、理解を深めてもらうオンライン教材を提供している。

記事の文章および具体的内容を無断で使用することを禁じます。

ページの先頭へ戻る