英国ロイヤル・バレエが待望の公演再開!「21世紀の振付家によるバレエ小品集」「バランシンとロビンズ小品集」他、演目・配役が発表された

ワールドレポート/ロンドン

アンジェラ・加瀬  Text by Angela Kase

世界に先駆けて国民に新型コロナ・ワクチンの無料接種を始めたイギリスでは、4月25日現在、全国民中1,258万人が接種を終え、3,366万人が2度目にして最後の接種を待っている。未だに特効薬こそ無いものの、変異種蔓延を阻止するため、昨年クリスマスに急遽施行した都市封鎖の結果が実を結び、この疾患の入院患者数は激減した。ワクチン接種以外にも、例えば国内の特定の地域で変異種コロナ感染者が確認され、感染者数が増えれば、住民とその地域で働く勤労者に「急遽PCRテストを受けるよう」連絡がなされ感染拡大を防ぐよう厳重な体制がしかれている。

変異種蔓延防止のための都市封鎖は現在も続いているが、3月初めより少しづつ緩和されている。イギリスの場合、イングランド、スコットランド、ウェールズ、北アイルランドの4つの地域で日程に微妙な違いがあるため、首都ロンドンと第2の都市バーミンガムを含むイングランドの緩和スケジュールについて紹介すると、3月8日に学校校舎での授業が再開され、3月29日には2世帯・計6人まで屋外での面会が可能になった。4月12日には食料品や薬局以外の店舗、図書館やヘア・サロンの利用や、パブ、カフェ、レストランの屋外座席での飲食が可能に。今後、変異種コロナ患者数の激増が無ければ、次は5月17日にパブ、カフェ、レストラン内部での飲食や劇場の再オープンが予定されている。劇場内の観客席の間に空席を持たせ、大劇場でも観客を最大1000人迎えて、劇・オペラ・バレエ・ミュージカル公演やコンサートを行うことが可能になるのである。

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「オーロラの結婚」ヤスミン・ナグディ、マシュー・ボール© 2017ROH Photo by Angela Kase

4月13日、英国ロイヤル・バレエとロイヤル・オペラの本拠地、ロイヤル・オペラ・ハウスでのサマー・シーズンの演目、公演・ストリーミング・スケジュールが発表された。これは英国ロイヤル・オペラ、ロイヤル・バレエ、ロイヤル・バレエ・スクールの現シーズン最後の5月17日〜7月下旬までの公演と、8月下旬までのストリーミング日程を網羅するもの。
バレエについていうと変異種コロナ蔓延防止に心を砕きながらも、アメリカ人新進振付家カイル・エイブラハムとバレエ団のファースト・ソリストで優れた振付家であるヴァレンティーノ・ズケッティ振付による2つの世界初演作品を含む魅力的なラインナップで、メイン・ステージおよび中劇場リンバリーともに満席に出来ない観客動員減を有料ストリーミングと寄付金で補う試み。

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フランチェスカ・ヘイワードとマルセリーノ・サンベ 青い鳥
© 2014ROH Photo by Angela Kase

バレエ団芸術監督ケヴィン・オヘアは
「長い休演期間の後、英国ロイヤル・バレエが誇る最高の演目と、優れたダンサーたちによる魅力的なパフォーマンスを皆様にご覧いただきます。バレエ団は今年で創設90周年、そして本拠地を現在のコヴェント・ガーデン、ロイヤル・オペラ・ハウスに移して75周年になります。この記念すべき年をバレエ団の18番であるプティパの古典『眠れる森の美女』3幕より「オーロラの結婚」で締めくくり、シーズンのハイライトとさせていただきます」
と語っている。

バレエ団はまず劇場再開直前の5月14日よりバレエ団内外の新進振付家による実験的作品を団員が踊る「ドラフト・ワークス」を、有料オンライン・ストリーミングで世界のバレエ・ファンに披露する。
その後、ロイヤル・オペラ・ハウスにて5月18日〜7月 11日まで公演を行う予定だ。
また昨年は劇場閉鎖に伴い公演できなかった、英国ロイヤル・バレエ・スクールの生徒たちによる学校公演もチケット数こそ少ないが例年通り行われる予定。
英国ロイヤル・オペラは、5月17日〜23日まで、モーツアルトのオペラ『皇帝ティートの慈悲』を上演。ベレニス役でバレエ団から金子扶生が出演予定だ。チケットの一般売り出しは5月7日(月)。

バレエ団とバレエ・スクール公演の日程、金子出演のオペラおよびダーシー・バッセル主催のバレエ・ガラ公演とストリーミングの詳細は下記の通り。有料ストリーミングやチケット購入はロイヤル・オペラ・ハウス公式HP www.roh.org.uk から

「スプリング・ドラフト・ワークス」(ストリーミングのみ)
マシュー・ボール、アシュリー・ディーン、ベンジャミン・エラ、ジョシュア・ユンカー、クリスティン・マクナリー、マルセリーノ・サンベ、アメリア・タウンゼント、スタニスラウ・ウェグリジン、ヴァレンティーノ・ズケッティ振付新作小品
有料ストリーミング鑑賞期間 日本時間5月15日(土)午前3時〜30日間 £10

英国ロイヤル・オペラ『皇帝ティートの慈悲』La clemenza di Tito モーツアルト作曲
5月17日(月)、19日(水)、21日(金)19時〜、23日(日)15時〜
有料ストリーミング鑑賞期間 日本時間5月22日(土)午前3時〜30日間 £16

「21世紀の振付家によるバレエ小品集」(初日/ストリーミング当日の予定配役)
『ウィズイン・ゴールデン・アワー』クリストファー・ウィールドン振付(オサリバン、ムンタギロフ、ヘイワード、ズケッティ、ナグディ、平野)
カイル・エイブラハム振付新作・世界初演(オシポワ、サンベ)
『ザ・ステイトメント』クリスタル・パイト振付(ディーン、シセンズ、マクナリー、リチャードソン)
『ソロ・エコー』クリスタル・パイト振付(ヘイワード、ガスパリーニ、グレネル、サンベ、コラーレス、ビヨルンボー・ブレンツロド、チャーチズ)
5月18日(火)、20日(木)、22日(土)、24日(月)、25日(火)、26日(水)28日(金)19時〜、30日(日)15時〜 
*ダブルキャスト で 5月20日、24日、26日19時〜、5月30日15時〜には『ウィズイン・ゴールデン・アワー』に高田と金子、『ザ・ステイトメント』に高田、ソロ・エコーにアクリが出演予定

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「ウィズイン・ゴールデン・アワー」© 2019ROH Photo by Angela Kase

「バランシンとロビンス小品集」(初日/ストリーミングの予定配役)
『アポロ』ジョージ・バランシン振付(ムンタギロフ、ナグディ、オサリバン、マグリ/ボール、ハミルトン、カルヴァート、金子)
『チャイコフスキー・パ・ド・ドゥ』ジョージ・バランシン振付(オシポワ、クラーク/ヌニェズ、ムンタギロフ)
『ダンシィズ・アット・ア・ギャザリング』 ジェローム・ロビンズ振付(ヌニェズ、ヘイワード、ヒンキス、金子、モレーラ、キャンベル、ボネッリ、ズケッティ、アクリ/ナグディ、マグリ、オサリバン、パジャック、サンベ、クラーク、デユブロイ、エラ、ヘイ他)
6月4日(金)、5日(土)、7日(月),8日(火)、9日(水)、10日(木)、11日(金)19時〜、6 月13日(日)15時〜
有料ストリーミング鑑賞期間 日本時間6月12日(土)午前3時〜30日間 £16
*6月8日(火)、10日(木)にはチャイコフスキー・パ・ドドゥに高田とコラーレスが出演予定。

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「ダンシィズ・アット・ア・ギャザリング」マリアネラ・ヌニェズ、フランチェスカ・ヘイワード、金子扶生
© 2020ROH Photo by Angela Kase

ダーシー・バッセル主催 英国バレエ・チャリティ・ガラ
有料ストリーミング鑑賞期間 日本時間6月19日(土)午前3時〜30日間 £20
2020年3月中旬から複数回施行された新型コロナと変異種コロナ感染防止のための都市封鎖とそれに伴う劇場閉鎖のため、イギリス舞台芸術界は多大な経済的打撃を受けた。
元ロイヤル・バレエ団プリンシパル、ダーシー・バッセルは、新型コロナ禍からのバレエ界復興を目指し、英国内の8つの主要ダンス・カンパニーである英国ロイヤル・バレエ、バーミンガム・ロイヤル・バレエ、イングリッシュ・ナショナル・バレエ、ノーザン・バレエ、スコティッシュ・バレエ、ニュー・アドベンチャーズ、ランバート、バレエ・ブラックに呼びかけ、6月3日ロンドンのロイヤル・アルバート・ホールで寄付金を募るガラ公演を行う。当日のチケット金額は£1,860 (4名用ボックス席シャンパン他ドリンク・食事込)〜£2,790(6名用ボックス席シャンパン他ドリンク・食事込)。この有料ストリーミングはイギリスのダンス・カンパニーのスター・ダンサーたちが、カンパニーの代表作を踊る夢の競演を家に居ながらにして廉価で観ることが出来るという趣向だ。

『眠れる森の美女』第3幕、ディベルティスメント集、ズケッティ新作
(初日、ストリーミング当日の予定配役)
『アネモイ』ヴァレンティーノ・ズケッティ振付・世界初演(佐々木、ディアス、ビヨルンボー・ブレンツロド、中尾)
ディベルティスメント集(後日発表)
『オーロラの結婚』マリウス・プティパ振付(後日発表)
6月26日(土)、28日(月)、30日(水),7月 2日(金) 3日 (土)19時〜、7月11日(日)14時〜
有料ストリーミング鑑賞期間 日本時間7月10日(土)午前3時〜30日間 £16
*6月30日(水),7月 3 日(土)19時〜、7月11日(日)14時〜には『アネモイ』に佐々木と五十嵐が出演予定。

「サマー・ドラフト・ワークス」
バレエ団内外の新進振付家による実験的作品を団員が披露
7月 1日(木)19時〜、2日(金) 3日 (土)14時〜

英国ロイヤル・バレエ・スクール公演 中劇場リンバリー・シアター公演
6月23日(水)19時15分、24日(木)昼14時半、夜19時15分、25日(金)19時15分、 26日(土)昼 14時半、夜19時15分、

英国ロイヤル・バレエ・スクール「サマー・パフォーマンス」 大劇場公演
7月10日(土)正午

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© 2018 The Royal Ballet School

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