次回ローザンヌ国際バレエコンクール審査員長はリチャード・ウェアロック/ヤング・クリエーション・アワード5人の候補者決定した

ワールドレポート/その他

香月 圭 text by Kei Kazuki

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リチャード・ウェアロック PDL2020 ©A. Isenegger

2021年1月31日〜2月6日開催の第49回ローザンヌ国際バレエコンクールが「ビデオ・エディション」として動画による審査が行われることはすでにお伝えしたとおりだが、スイス北西部に位置するバーゼル劇場バレエのディレクター兼首席振付家リチャード・ウェアロックRichard Wherlockが今大会の審査員長に就任するとコンクール事務局が発表した。
リチャード・ウェアロックの作品はローザンヌ国際バレエコンクールのコンテンポラリー課題ヴァリエーションに選ばれており、コンクール決選のテレビ放映などでバレエ・ファンには馴染み深い。『(A) Swan Lake(ある白鳥の湖)』の女子向けに採用された部分は、チャイコフスキーの『白鳥の湖』第三幕の黒鳥(オディール)とジークフリート王子のグラン・パ・ド・ドゥより「アダージョ」の楽曲に、ポップなダンスを重ねたヴァリエーションとなっている。歴代の出場者たちは白いラインが入った黒のハイソックスに黒のミニワンピースを着たガーリーな衣装で舞台に臨んできた。

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『(A) Swan Lake』デイリー・アリエル/2020年第48回ローザンヌ国際バレエコンクールにて PDL2020© Gregory Batardon

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『ディエゴのためのソロ』二山治雄/2014年第42回ローザンヌ国際バレエコンクールにて PDL2014© Gregory Batardon

2021年第49回ローザンヌ国際バレエコンクールでは、コンテンポラリーの課題ヴァリエーションには女子のために『春の祭典』、男子向けに『ディエゴのためのソロ』が選定された。
『ディエゴのためのソロ A Solo for Diego』はギリシャを舞台にした名作映画『その男ゾルバ』へのオマージュともいえる作品で、音楽はギリシャにおける20世紀最大の作曲家と評されるミキス・テオドラキスが手掛けた。ギリシャの民族楽器ブズーキが奏でる旅情豊かな映画のメインテーマに乗せて異国の街を訪れた青年の心の高揚感が描かれる。
ストラヴィンスキーによる不協和音が鳴り響く音楽に合わせて女性が激しく踊るウェアロック版『春の祭典』は野性的なアマゾネスの世界を想起させる。この作品はバーゼル劇場バレエ プリンシパルの中野綾子(1992年ローザンヌ国際バレエコンクール入賞)のためにウェアロックが振付けたもの。

リチャード・ウェアロックは1958年イギリス西部の港湾都市ブリストルに生まれ、ランバート・バレエスクールで学び、 ランバート・バレエ・カンパニーにダンサーとして入団。1991〜96年ドイツ西部のハーゲン劇場でバレエ・ディレクターを務める。スイスのルツェルン・バレエ、ドイツのベルリン・コーミッシェ・オーパー(現ベルリン国立バレエ)の芸術監督を歴任、バーゼル劇場バレエでは2000年から芸術監督を務めており、今年で在任20年目となる。バーゼル劇場バレエのためにウェアロックが振付けた作品は数多く存在する。ウェアロックはバーゼルのダンス・フェスティバル「バーゼル・タンツト」の芸術監督も務めた。1999年にはブノワ賞にノミネートされている。
ウェアロックはローザンヌ国際バレエコンクールについて次のように述べている。「このコンクールは才能ある若いダンサーたちにとって飛躍への本物の足がかりとなるものだ。コンクールの過程にはクラス・レッスンやバレエ界を代表する著名な講師たちによるコーチングも行われる。このコンクールが非常に評価できるのは、賞に関連する活動が一般にも公開されている点である。この透明性こそ、ダンスという我々が愛する芸術に信頼と高い関心を生み出すのだ」
審査員長ウェアロックとその他8名の審査員は2021年2月にローザンヌに会して動画による審査を行う。

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マウロ・ヴィゴンゼッティ振付『Andante Ballabile』2020年第48回ローザンヌ国際バレエコンクール振付プロジェクトにおけるリハーサル PDL2020 © Rodrigo Buas

また今年新設された新人振付賞(ヤング・クリエーション・アワード)部門に5人の候補者が選出された。
20カ国18の提携校(欧州、アメリカ、豪州、中国)から54名(32名女子、22名男子)が応募した。候補となった5名の内訳は男性4名、女性1名で、国籍別ではオーストラリアより3名、アメリカ、スペインより各1名、在籍校別ではジョン・ノイマイヤー・ハンブルク・バレエスクールとクイーンズランド・バレエアカデミーより2名ずつとカナダ・ナショナル・バレエスクール1名となっている。日本人は男性1名,女性1名が応募、振付作品を踊るダンサーとしてのエントリーは女性2人だった。振付担当者および作品を踊るソロ・ダンサーの応募資格はローザンヌ国際バレエコンクールと提携するバレエスクールおよびカンパニーに在籍する2001年2月7日〜2007年2月6日生まれとなっているため、彼らは全員いずれかの海外の提携校に留学中であろう。新人振付賞の審査は2021年2月6日に行われ、2組が入賞となる。受賞作品は2022年のローザンヌ国際バレエコンクールのコンテンポラリーの課題ヴァリエーションのリストに入り、そのなかから出場者が選択することができるようになる。初回となるこの新人振付賞はハインツ・シュペルリによる後援となっている。

◆第49回ローザンヌ国際バレエコンクール「ヤング・クリエーション・アワード」候補者
ジョシュア・オスターマン Joshua OSTERMANN
(19歳1ヶ月/オーストラリア/クイーンズランド・バレエアカデミー)/作品名「Question」(音楽:「Aurora」)男女双方に対応した振付

パブロ・ポロ Pablo POLO
(19歳11ヶ月/スペイン/ジョン・ノイマイヤー・ハンブルク・バレエスクール)/作品名「Guiado por...」(音楽「Dismantle」)男女双方に対応した振付

マヤ・スモールウッド Maya SMALLWOOD
(17歳7ヶ月/アメリカ/カナダ・ナショナル・バレエスクール)/作品名「Unravel」(音楽「Euphoria」)/男女双方に対応した振付
ルイス・ヴァン・エッテンLouis VAN ETTEN(19歳4ヶ月/オーストラリア/クイーンズランド・バレエアカデミー)/作品名「Self Control」/(音楽「Dismantle」)/男女双方に対応した振付

サミュエル・ウィンクラー  Samuel WINKLER
(19歳9ヶ月/オーストラリア/ジョン・ノイマイヤー・ハンブルク・バレエスクール)/作品名「Suppress」(音楽「Aurora」)/男女双方に対応した振付

●ローザンヌ国際バレエコンクール公式サイト
https://www.prixdelausanne.org/

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