再び閉鎖された英国ロイヤル・バレエが、高田茜、平野亮一、金子扶生ほかの日本人ダンサー7名が参加する舞台を有料配信する
- ワールドレポート
- ワールドレポート(その他)
掲載
ワールドレポート/ロンドン
アンジェラ・加瀬 Text by Angela Kase
11月5日、イギリスの首都ロンドンや第2の都市バーミンガムを含む国内総人口の80パーセント以上、総面積の3分の2以上を占めるイングランドが、新型コロナ感染第2波のあおりを受け今年2度目のロックダウンに入った。ヨーロッパの人々にとって大切なクリスマスを家族や友人と祝えるようにと現時点では12月2日までを予定しているが、11月下旬になってもコロナ感染者数が減少しなければロックダウンの延長もありうる。
イングランド内の生活必需品以外を売る店や劇場、映画館、ジム、ヘアサロンなどは再びその扉を閉め、テイクアウト販売を行わないレストランやカフェ、パブもロックダウンが終わるまで店を閉ざしている。春から夏にかけてのロックダウンとの大きな違いは、学校が閉鎖されず子供たちが通常通り学校で授業を受けクラブ活動も行っていることだ。
「エリート・シンコペーションズ」サラ・ラム、平野亮一
© 2018 ROH Photo By Tristram Kenton
「エリート・シンコペーションズ」サラ・ラム
© 2018 ROH Photo By Tristram Kenton
「エリート・シンコペーションズ」© 2018 ROH Photo By Tristram Kenton
英国ロイヤル・バレエ団は当初11月4日を初日として、11月中に2演目での本拠地公演を予定してチケットを売り出し、直後に主要キャストも発表した。にもかかわらず第2次ロックダウンにより初日の公演を最後に、再び観客にロイヤル・オペラ・ハウスの扉を閉ざしている。
11月4日の公演は有料配信された10月9日のガラ公演のように、人気のプリンシパルやソリストが名作バレエのソロやパ・ド・ドゥを踊った後、ケネス・マクミラン振付『エリート・シンコペーションズ』で華やかに締めくくられる内容で、当日は新型コロナ感染防止のため、通常は2,256席ある観客席をディスタンスを取って950席に抑えて行われた。
当日は、幕開けにプリンシパルの高田茜がフレデリック・アシュトン振付『ラプソディ』を踊り、トリの『エリート・シンコペーションズ』では平野亮一が男性主役を踊るなど、相変わらず日本出身ダンサーの活躍が印象的であった。2人の他にも金子扶生が10月9日に続いてキャシー・マーストン振付『イン・アワ・ウィシュズ』、アクリ瑠嘉が『エリート・シンコペーションズ』のホット・ハウス・ラグとザ・ゴールデン・アワーズを踊った。日本出身ダンサー以外ではフランチェスカ・ヘイワードが『白鳥の湖』、マヤラ・マグリとマシュー・ボールが『海賊』、マリアネラ・ヌニェスとワディム・ムンタギロフが『チャイコフスキー・パ・ド・ドゥ』を踊り、当日ロイヤル・オペラ・ハウスに集うことが出来た950人の幸運な観客を熱狂させた。
「海賊」マヤラ・マグリ、マシュー・ボール
© 2020 ROH Photo by Rachel Hollings
「海賊」マヤラ・マグリ、マシュー・ボール
© 2020 ROH Photo by Rachel Hollings
「白鳥の湖」フランチェスカ・ヘイワード
© 2020 ROH Photo by Helen Maybanks
「白鳥の湖」フランチェスカ・ヘイワード
© 2020 ROH Photo by Helen Maybanks
芸術監督のケヴィン・オヘアは、当日夕方のBBC1のテレビ・ニュースで、「再び一般客を入れての公演初日になるはずだった11月4日が、公演初日でかつ最終日になってしまったこと、また翌11月5日以降今回のロックダウン中の公演やイベントはすべてキャンセルとなること」を嘆きながらも、3月中旬からの第1次ロックダウンと違って「ダンサーたちは各人の家でレッスンする必要はなく、本拠地ロイヤル・オペラ・ハウスでレッスンやリハーサルが出来る」と話し、「クリスマスには、ぜひ公演を再開したい」と締めくくった。
バレエ団は4日当時から11月13日の「バレエ小品集」とクリストファー・ウィールドン振付『ウィズイン・ザ・ゴールデン・アワー』全編公演を全世界に向けて有料配信し、2時間10分の有料配信は日本時間の11月14日早朝4時半〜12月13日まで10ポンド(日本円で約1,400円)で視聴が可能となっている。
演目と各作品の配役は下記の通り。
『スケルツォ』ヴァレンティーノ・ズケッティ振付
佐々木万璃子、前田紗江、中尾太亮、佐々木須弥奈、ルーカス・ビヨルンボー・ブレンツロド、レオ・ディクソン、レティシア・ディアス、ユウ・ハン、ハリス・ベル、ジョセフ・アーミアー、ソフィー・アルナット、マディソン・ペイリー、ボミン・キム、リアム・ボスウェル、ジャコモ・ロヴェロ、フランシスコ・セラーノ
『ラプソディー』フレデリック・アシュトン振付 高田茜、アレクサンダー・キャンベル
『モノトーンズ II』フレデリック・アシュトン振付 メリッサ・ハミルトン、リース・クラーク、二コル・エドモンズ
『チャイコフスキー・パ・ド・ドゥ』ジョージ・バランシン振付 アナ・ローズ・オサリヴァン、マルセリーノ・サンベ
『イン・アワ・ウィシュズ』キャシー・マーストン振付 ロマニー・パジャック、カルヴィン・リチャードソン
『白鳥の湖』レフ・イワーノフ振付 フランチェスカ・ヘイワード、セザール・コラレス
『マノン』ケネス・マクミラン振付 ラウラ・モレーラ、フェデリコ・ボネッリ
『コンチェルト』ケネス・マクミラン振付 ヤスミン・ナグディ、ニコル・エドモンズ
『ダンス・オヴ・ザ・ブレスト・スピリット』フレデリック・アシュトン振付 ウィリアム・ブレイスウェル
『瀕死の白鳥』ミハイル・フォーキン振付 ナタリア・オシポワ
『海賊』マリウス・プティパ振付 マリアネラ・ヌニェス、ワディム・ムンタギロフ
『ウィズイン・ザ・ゴールデン・アワー』クリストファー・ウィールドン振付
サラ・ラム、平野亮一、金子扶生、リース・クラーク、アナ・ローズ・オサリヴァン、ジェイムズ・ヘイ、レオ・ディクソン、ロマニー・パジャック、アシュリー・ディーン、イザベラ・ガスパリーニ、ハナ・グレンネル、デイヴィッド・ドネリー、デイヴィッド・ユーディス、テオ・デュブロイ
幕開作品の『スケルツォ』は、ファースト・ソリストで振付にも優れるヴァレンティーノ・ズケッティの新作で、先日、世界バレエ・デイでリハーサル風景が紹介された。
ロイヤル・オペラ・ハウスの大舞台で日本人7人を含むダンサーの活躍を心ゆくまで堪能できるストリーミングとなる。
詳しくはバレエ団ウエブサイト(www.roh.org.uk)の Tickets & Events を確認してください。
「ウィズイン・ザ・ゴールデン・アワー」© 2020 ROH Photo By Tristram Kenton
記事の文章および具体的内容を無断で使用することを禁じます。