YAGP2021日本予選、オンラインの画面から溢れる出場者たちのエネルギーに審査員達が圧倒された

ワールドレポート/その他

香月 圭 text by Kei Kazuki


YAGP 2021日本予選が2020年10月22日〜25日あましん・アルカイックホール/オクト・ホールで行われた。新型コロナウィルスの影響で2020年4月に予定されていたYAGPニューヨーク・ファイナルが中止となったが、ウィルス感染拡大の沈静化が未だ見られないため今年度については、会場では指導者・参加者家族などの関係者以外は無観客で、海外の審査員は来日せずインターネットを通じてのリモート審査となった。
そして今年度は、新型コロナウィルスの影響で就職活動の進捗が芳しくない状況にあるシニア部門参加者のために、参加資格年齢が20歳まで引き上げられた。またコンクール会場に足を運ぶことができない希望者のために、動画によるオーディションにのみ参加できる「ヴァーチャル・スカラシップ・オーディション」部門が新設された。
アンサンブル部門は、動画によるヴァーチャル審査だった。また今回、クラシック部門シニア女性の予選審査方法が新しくなり、プロフェッショナルとしての適性を多角的に精査するという目的で以下のような方式が採用された。課題曲はチャイコフスキーの『白鳥の湖』第1幕よりワルツ、『眠れる森の美女』第1幕よりワルツ、『くるみ割り人形』第2幕より花のワルツ、の3曲。課題曲をいくつかのセクションに分け、1人1分ほどのソロを順番に踊ったあと、曲終わりのコーダ部分40〜50秒間を5人全員で踊る。見本の動画の振付をそのまま踊るか、新たに振付けて踊るかは参加者に一任され、どの曲のどのセクションを踊るかについては、9月初旬に指定された。
この予選ではレオタードとスカートのみという服装規定が設けられている。審査ではテクニックだけでなく、将来性、音楽性、体のライン、他のダンサーとの協調性や 順応性などに基づいて評価された。

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シニア部門 コンテンポラリー 第1位 渡辺 平
©スタッフ・テス高橋大輔

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シニア部門 クラシック 女性 第1位 佐合 あこ
©スタッフ・テス谷岡秀昌

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シニア部門 クラシック 男性 第1位 渡辺 平
©スタッフ・テス根本浩太郎

このシニア女子予選の見本動画にYAGPのOGである飯島望未(ヒューストン・バレエ団)、本田千晃(スロバキア国立劇場バレエ団)、藤原青依(ヒューストン・バレエ団)、佐々木夢奈(佐々木美智子バレエ団)、岡野祐女(ポーランド国立バレエ団)、佐々木須弥奈(英国ロイヤル・バレエ団)が出演した。YAGP 日本Facebookや本田千晃のYouTube「ちあこちゃんねる」では動画撮影の様子や彼女たちのインタビューなどのコンテンツを見ることができる。シニア女子予選の際、佐々木夢奈と橋谷美香(ジョフリー・バレエ スタジオ・カンパニー)が今回日本予選で踊ることができなくなってしまった参加者のスポットに入り、出場者たちと一緒に踊った。

授賞式は2020年11月1日にYAGP設立にも参画し、現在もYAGP舞踊関係者などへのインタビューも担当しているジャーナリスト、セルゲイ・ゴルデーエフとブロードウェイの舞台で活躍し、今回の審査も担当したカリン・プランタディットの司会によってオンラインで行われた。
YAGP設立者・芸術監督のラリッサ・サヴァリエフとゲンナージー・サヴァリエフすら来日できない状況下、日本のスタッフたちが陣頭指揮を執り、出場者の家族や指導者たちは徹底した衛生管理のガイドラインに従い、着替えやメイクなど舞台に上がる準備を事前に済ませて楽屋の長時間の使用を避けるなどといったルールを順守。結果的に日本予選会場で大きな混乱がなく整然と審査が行われた様子は、称賛に値するという審査陣からの評価が得られた。
4大陸12か国に散らばる27名の審査員たちによる審査会はオンライン・ミーティングによって行われ、その一部が授賞式で公開された。コロナ禍によってバレエ学校も長期間閉鎖され、舞台公演などもほぼなくなり自宅待機を余儀なくされていた審査員たちは、日本の出場者たちの演技の素晴らしさ、巧みなテクニックに加え、YAGPにかける意気込みといったものをインターネットの画面からも一様に感じ取ったようだ。カナダのアルバータ・バレエ・スクール トレイニー・プログラム ディレクターのアラン・マヌキアンは審査会で「演技を見るまでは期待はそれほど大きくなかったが、会場での子供たちの演技を見ると今、踊っている子はとてもいいと思った。次に登場した子供の踊りも素晴らしかったし、その次に出場する子もとてもうまいといった具合で、出場者たちの踊りの完成度の高さに驚いた」と語った。プリンセス・グレース・アカデミー芸術監督のルカ・マサラは「画面から子供たちの情熱やエネルギーが存分に伝わってきた」とコメント。スイスのバーゼル劇場バレエ・スクール 芸術監督のアマンダ・ベネットは「子供たちの演技は皆すばらしく、私の気分も晴れやかになった。彼らの未来、バレエ界の未来は明るい」と講評している。なお、この審査会の模様は後日公開されるとのこと。インターネット上で出場者たちの舞台を見守っていた筆者も、子供たちからはちきれんばかりの踊る喜びを例年以上に感じ、外出自粛で練習がままならないといった状況は微塵も感じられなかった。
授賞式では提携バレエスクールからのスカラシップも発表された。
世界中の予選を通過した参加者たちによるYAGP USファイナルズは、2021年5月3日(月)〜5月9日(日)に開催される予定で、出場者については別途、発表される。

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プリコンペティティブ部門 最優秀賞 杉之原 瑠花
©スタッフ・テス高橋大輔

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プリコンペティティブ部門 コンテンポラリー 第1位 原 明日香
©スタッフ・テス松澤綾子

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プリコンペティティブ部門 クラシック 女性 第1位 榎並 璃音
©スタッフ・テス高橋大輔

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ジュニア部門 クラシック 男性 第1位 大竹 悠佑
©スタッフ・テス根本浩太郎

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プリコンペティティブ部門 クラシック 男性 第1位 戸原 和玖 ©スタッフ・テス高橋大輔

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ジュニア部門 コンテンポラリー 第1位 國立 桃菜 フローラ ©スタッフ・テス松澤綾子

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ジュニア部門 クラシック 女性 第1位 江見 紗里花 ©スタッフ・テス根本浩太郎

《YAGP 2021 日本予選結果》
◇プリコンペティティブ部門 最優秀賞 ホープ・アワード
089 杉之原 瑠花 BALLET・LE・COEUR
◇プリコンペティティブ部門 コンテンポラリー
第1位 012 原 明日香 BALLET・LE・COEUR
第2位 059 川上 杏 シンフォニーバレエスタジオ
第3位 100 上阪 友香 Ballet Studio forte
◇プリコンペティティブ部門 クラシック 女性
第1位 072 榎並 璃音 Aristo BALLET STUDIO
第2位 059 川上 杏 シンフォニーバレエスタジオ
第3位 077 塚本 萌夏 YARITA YU BALLET STUDIO
◇プリコンペティティブ部門 クラシック 男性 
第1位 160 戸原 和玖 K-Grace Ballet
第2位(タイ) 157 秋田 瑛汰 ワクイバレエスクール
第2位(タイ) 161 福山 壮一郎 創美バレエスクール
第3位 162 松本 澪 ヨシイバレエ芸術学園
◇ジュニア部門 コンテンポラリー
第1位 251 國立 桃菜 フローラ BALLET・LE・COEUR
第2位 308 依光 杏夏 金田・こうのバレエアカデミー
第3位 387 萬矢 にいな エトワールバレエスクール
◇ジュニア部門 クラシック 女性
第1位 344 江見 紗里花 橋本幸代バレエスクール
第2位 371 田中 杏咲 シンフォニーバレエスタジオ
第3位 357 笠井 優迦 BALLET・LE・COEUR
◇ジュニア部門 クラシック 男性
第1位 462 大竹 悠佑 横倉明子バレエ教室
第2位(タイ) 451 木田 礼 バレエスタジオコンチェルト
第2位(タイ) 452 熊野 悠大 バレエスタジオ22クラシック&コンテンポラリー
第3位 455 大野 孝年 法村友井バレエ学校
◇シニア部門 コンテンポラリー
第1位 752 渡辺 平 美佳バレエスクール
第2位 513 小林 彩曖美 Swan International Ballet School
第3位 537 灰谷 亜珠 sAtsukiBallet
◇シニア部門 クラシック 女性
第1位 563 佐合 あこ L'espoir de ballet
第2位(タイ) 590中川 奈奈 ふのうまさみバレエスタジオ
第2位(タイ) 649 山田 佳歩 白鳥バレエ学園
第3位 518 小林 愛里 デパルクバレエスクール
◇シニア部門 クラシック 男性
第1位 752 渡辺 平 美佳バレエスクール
第2位 776 森本 晃介 田中バレエ・アート
第3位 758 堀 貴文 バレエスタジオDUO
◇アンサンブル部門 パ・ド・ドゥ 第1位 804 デパルクバレエスクール 『海賊』よりパ・ド・ドゥ
◇アンサンブル部門 グループTop 3
第1位 910 シンフォニーバレエスタジオ 『Life』
第2位 902 地主薫 エコール・ド・バレエ 『海と真珠』よりヴァリエーション
第3位 908 バレエスタジオアッサンブレ 『The sting of loss』

《YAGP 2021 日本予選 審査員》
総勢27名のうち一部抜粋。(詳しくはYAGP日本公式サイト「YAGP 2021 日本予選 プログラム」を参照のこと。)
エルダー・アリエフ=マリインスキー劇場プリモルスキー分館(ロシア)チーフ・バレエ・マスター
ジェイソン・ビーチー=ドレスデン・パルッカ ダンス大学(ドイツ) 学長
パオラ・カンタルポ=ロゼラ・ハイタワー国際ダンスセンター(フランス)芸術監督
ホセ・カラヨル=ジョフリー・ダンス・アカデミー(アメリカ) スタジオ・カンパニー/トレイニー・プログラム主任
ジャン・イヴ・エスキュール=ヨーロピアン・スクール・オブ・バレエ(オランダ)芸術監督
ユーリ・ファテーエフ=マリインスキー劇場バレエ(ロシア)舞踊監督
小尻健太=ダンサー、振付家、Dance Base Yokohama、元ネザーランド・ダンス・シアター ダンサー
ルカ・マサラ=モナコ王立プリンセス・グレース・アカデミー(モナコ) 芸術監督
タデウス・マタチ=シュツットガルト・バレエ ジョン・クランコ・スクール(ドイツ)校長
オリヴァー・マッツ=チューリッヒ・ダンス・アカデミー(スイス)校長
アーンスト・マイスナー=オランダ国立バレエアカデミー(オランダ)芸術監督
クリストファー・パウニー=英国ロイヤル・バレエ・スクール(イギリス)芸術監督
サシャ・ラデツキー=ABTスタジオ・カンパニー(アメリカ)芸術監督
アレッシオ・シルヴェストリン=元ウィリアム・フォーサイス&フランクフルト・バレエ ソリスト、振付家、作曲家。他

■YAGP日本語サイト
https://yagp.org/japan/index.html

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