新・フォンテイン国際バレエコンクールについて/ヘルシンキ国際バレエコンクールは2022年5月末〜6月開催に/RADのニュース:ケヴィン・オヘアはどのようにロックダウンに対処したか 他

ワールドレポート/その他

香月 圭 text by Kei Kazuki

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『白鳥の湖』カーテン・コールに応えるマーゴ・フォンテイン The Royal Ballet at the Royal Opera House, London, UK, 1971© G.B.L. Wilson, Royal Academy of Dance

英国ロイヤル・アカデミー・オブ・ダンス(RAD)主催のアデリーン・ジュネ国際バレエコンクールはRAD総裁を最も長く努めたマーゴ・フォンテインの名を冠し、昨年フォンテイン国際バレエコンクールと改称された。9月5日ロイヤル・オペラ・ハウスで決勝を開催する運びになっていたが、今年は新型コロナウィルス感染拡大を受けて中止となった。
また2020年6月に予定されていた、第9回ヘルシンキ国際バレエコンクールは2022年5月30日〜6月6日に開催となった。15〜25歳の100名ほどのダンサーが集結する。ヘルシンキ国際バレエコンクール委員長のヨルマ・ウオティネン(「楽しいムーミン一家」の振付で知られる)は「2022年はフィンランド国立バレエ創立100周年の記念の年にあたり、フィンランドの舞踊界におけるこの節目のときに、バレエ団とともに世界最高級のバレエをお届けすることができて光栄です」と述べる。コンクール参加への応募は2021年秋から行われるが、詳細は後日。当初決定していた2020年6月開催告知時に選ばれた参加予定者には事務局より連絡がいく。

マーゴ・フォンテイン国際バレエコンクール(旧・アデリーン・ジュネ国際バレエコンクール公式サイト
https://www.royalacademyofdance.org/the-fonteyn/

第9回ヘルシンキ国際バレエコンクール
ibchelsinki.fi/news/

「フォンテイン国際バレエコンクールにズーム・イン」シリーズ

RAD公式サイトではフォンテイン国際バレエコンクールおよび伝説のプリマ・バレリーナ、マーゴ・フォンテインにまつわる関係者のオンライン・インタビューを9週連続で公開していく。RADメンバーなら全編みられる。
【第1回】RAD芸術監督ジェラルド・チャールズがノーザン・バレエ団の芸術監督デイヴィッド・ニクソン、オーストラリア・バレエ団芸術監督デヴィッド・マカリスター、リン・ウォリス元RAD芸術監督にコンクールに挑む際の心構えや準備などについて聞く。
【第2回】南アフリカ、ケープタウン出身で現在ノーザン・バレエのリーディング・ソリストであるムリンディ・クラシェ(Mlindi Kulashe)のインタビュー
【第3回】ソロ作品の創作について、RAD芸術監督チャールズがモニカ・メイソン、スコティッシュ・バレエ団総裁クリストファー・ハンプソン、バレエ・ピアニストのジョナサン・スティルに聞く。
【第4回】マーゴ・フォンテインの人柄や思い出について、彼女の当時の同僚などイギリスのバレエ関係者に聞く。コメントするのはダーシー・バッセル、アンソニー・ダウエル、モニカ・メイソン、メール・パーク、ウェイン・イーグリング、ウェイン・スリープなど。彼女の美しい写真の数々も挿入されている。ダウエルによると「彼女がクラスに現れるときはヘアもメークも完璧だった」そう。またメール・パークは「彼女の半分くらいの年齢だった新人の私にも話しかけてくれて、最後は一緒に笑っていた」と話し、ウェイン・スリープは「『人には親切にしたほうがうまくいくのよ』と彼女に言われました。トップに立つ者は礼儀正しくあれという人生訓を教わったのです」と語る。
https://www.royalacademyofdance.org/the-fonteyn/fonteyn2020/zoom-in-on-the-fonteyn/

そのほかRAD公式サイトのなかで興味深いコンテンツをいくつかご紹介する。

ロイヤル・バレエ団総裁ケヴィン・オヘアはロックダウンとどう対峙したか

ロックダウンが始まる前から現在までケヴィン・オヘアが非常事態にどのように決断していったのか、また再開に向けての動きや彼の思いなどをRADの機関誌Dance Gazette編集長デイヴィッド・ヘイズが取材している。
ロックダウンがロンドンにも迫りくる中、ロイヤル・バレエでは注目の若手振付家キャシー・マーストンによる『ザ・チェリスト』の世界初演、その後『白鳥の湖』のロングランが控えていた。『白鳥の湖』演出のリアム・スカーレットはロイヤル・バレエ・スクールの生徒に対する性的違法行為の疑惑のため2020年3月にロイヤル・バレエのアーティスト・イン・レジデンスの座を辞していた。2020年3月12日木曜日、5日目の『白鳥の湖』の主演はマリアネラ・ヌニェスとワディム・ムンタギロフ。「この公演でマルセリーノ・サンベがパ・ド・トロワを踊ったときから会場が突然興奮に包まれた。出演者たちは全身全霊を込めて踊り、圧巻の出来だった。マリアネラとワディムの名演で観客は叫びながら二人の足元に駆け寄った。会場は輝くような雰囲気だった。ロックダウンを覚悟してか、皆劇場を去ろうとしなかった」とオヘアは当時を振り返る。翌週3月16日月曜日の予定に関してオヘアはダンサーたちにこう言った「月曜には劇場に来ないように。おそらく何らかの決定がなされる」。実際、その日上演されるはずだったオペラは中止となった。
それ以降、オヘアは2年後世界がどう変わるかも見据え、あらゆるシナリオを想定してシーズン・プログラムやキャストの編成に追われる。予定されていたウェイン・マクレガーの新作『ダンテ』の公開は見送られたが、オンライン配信用にがらんとした劇場でフランチェスカ・ヘイワードとセザール・コラレスのカップルが抜粋バージョンを踊った。リハーサルを見ていたオヘアは「黄金の宝石のような、素晴らしいものだった」と印象を語る。同じ状況のイギリスの芸術監督たちとはZoom会議で、世界の100以上のバレエ・カンパニーのディレクターたちとはオランダ国立バレエ団芸術監督テッド・ブラッセンがスタートさせたメールグループで意見交換を行っている。「ダンサーたちが安全に戻ってこられる機会を提供すること、これが私たち全員の最重要課題だ」とオヘアは述べる。団員たちのクラスはすぐにZoomに切り替えられ、いつもと同じように朝10時半にスタートする。筋肉トレーニングやコンディション・ワークなどはほかのバレエ団とシェアするが、クラスだけはロイヤル・バレエ団員限定のもので、プライベート感がある。「マリアネラ・ヌニェスであろうとバレエ学校を卒業したばかりの新人であろうと、同じように教師の注意を受ける。クラス開始前の歓談もまた格別のひとときとなる。毎週土曜日には特別ゲスト・ティーチャーと祖国で家族と滞在中の団員も加わる」とオヘアはクラスの様子を語る。団員とは毎日ミーティングを開いて彼らの近況報告に耳を傾ける。このあまりあるほどの自由時間にミーガン・グレイス・ヒンキスのようにミック・ジャガーの音楽に振付けたダンス・フィルムを制作するという者まで現れた。
2020年7月中旬頃から、ダンサーたちは劇場のスタジオに戻りつつある。しかし、エレベーターや更衣室は使用禁止、通路は一方通行などといった厳しい安全管理の下で、という条件つきである。休業中の経済的補償やパフォーミング・アーツの再開について具体的な指示を出してこない政府に対してオヘアをはじめとする劇場関係者はやるせない思いも抱く。「バレエのトレーニングは集団の中で行われてきたため、この集合体が解体されると、まとまりはあっという間に崩れ去る。しかもそれを元通りにするのには余計に時間がかかる。これこそ私が最も恐れていることだ」とオヘアは不安を隠さない。しかし、これほどの未曾有の事態に屈することなくオヘアは劇場再開へ確実に歩みを進めている。
https://www.royalacademyofdance.org/people-need-this-in-their-lives/

アフリカ系イギリス人によるショート・フィルム『BODIES』

3分間のショート・フィルム『BODIES』を制作・公開したダヴィ・ラザールDavy Lazarreと主演のブランドン・ローレンス(バーミンガム・ロイヤル・バレエ プリンシパル)へのインタビュー。2020年5月にアメリカ合衆国ミネソタ州ミネアポリスでアフリカ系アメリカ人のジョージ・フロイドが警察官の不適切な拘束行為で死亡した事件がきっかけとなって#Black Lives Matter運動が世界的に広がりを見せる。自身もアフリカ系イギリス人であるラザールが自ら綴った詩をスポークン・ワード(音楽がなく、詩・歌詞・物語を「話す」形式のアート)で話し、その語りに呼応するようにローレンスがロックダウン中のバーミンガムでの屋外のロケーションで踊る姿を捉えた短編フィルムだ。ラザールとローレンスへのインタビューも公開中。
https://www.royalacademyofdance.org/interview-with-the-creators-of-bodies-a-davy-lazare-film/

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『BODIES』ブランドン・ローレンス

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『BODIES』ブランドン・ローレンス

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『BODIES』ブランドン・ローレンス

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『BODIES』ブランドン・ローレンス

RAD@HOME

イギリスでも自宅からアクセスできるオンライン講座の需要は日本同様いっそう高まっており、RADでも子ども向け、様々な年代向けに動画レッスンを用意している。
【子どもオンライン・エクササイズ Children's Online Exercises】
バレエ経験のある子ども向け。有酸素ウォームアップ、筋力および柔軟性強化のためのフロア・エクササイズ、プリエ、バットマン・タンデュ、ロン・ド・ジャンブ、フォンデュなどを仰向けになって確認するエクササイズとバー・エクササイズ。教師はノーザン・バレエでダンサーを経て、現在はノーザン・バレエ・アカデミーで教鞭をとるジェイン・タッカー。ウェストエンドの『ビリー・エリオット』のボーイズ・コーチも務めた。
https://www.royalacademyofdance.org/rad-at-home/childrens-online-exercises/

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RAD@Home

【体を動かす夏 A Moving Summer】
RAD教師イモジェン・ナイトImogen Knightとジョシュア・トゥイフアJoshua Tuifuaが開発した15分×8週間のオンライン・ダンス・プログラムが2020年7月1日からスタートした。バレエを基にしたエクササイズを通して体を動かし自分のなかの内なる創作欲を解放し自己表現を通して自分自身の体や身近にいる人と再び繋がろうと呼びかける。指導するのはイモジェン・ナイトとリーナ・バッタジャージーReena Bhattacharjee。VOGUEインターナショナルビューティーディレクターのキャシー・フィリップスが開発したスキンケア・ブランドthisworksとRADのコラボレーションによる。
https://www.royalacademyofdance.org/rad-at-home/a-moving-summer/

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A Moving Summer © Spiros Politis

【大人バレエ「シルバー・スワン」クラス Silver Swans Classes】
バレエの経験の有無を問わず、自宅で音楽に合わせて体を動かすための無料オンライン・クラス。怪我をしないようウォームアップを行ってからバーレッスンに入る。正しい姿勢やプリエ、バットマン・タンデュ、ピルエットなどバレエの基本ステップを丁寧に解説。
指導するのは大学院でも舞踊教育の学位を取得し、生涯教育への関心から大人バレエ教育に広く携わるサラ・プラット。RADの副パトロンに就任する英国王室カミラ妃もこのレッスンに参加したそうだ。「これまでバレエを習ったことはありませんでしたが、バレエの経験の有無は関係なく、気分がすっきりします。自分自身に少し自信が生まれて、ちょっとした鍛錬になります。クラスを受けている皆さんを訪問して仲間のように感じました」とコメントしている。
https://www.royalacademyofdance.org/rad-at-home/silver-swans-classes-online/

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RAD Silver Swans © David Tett

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RAD Silver Swans © David Tett

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RAD Silver Swans © David Tett

RAD(ロイヤル・アカデミー・オブ・ダンス)公式サイト
https://www.royalacademyofdance.org/

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