ヨーロッパ、ロシアのオペラハウスがバレエ公演再開に向けて動き出した!

ワールドレポート/その他

香月 圭 text by Kei Kazuki

いまだかつてない新型コロナウイルス感染拡大の脅威から身を守るべく、この春から数ヶ月間も閉鎖せざるを得なかったヨーロッパ舞台芸術の中心地のオペラハウスにも、ようやくバレエ公演再開の兆しが見えてきた。新型コロナウイルスとともに生きて行かざるを得ない時代を見据え、観客との再会を模索するヨーロッパの劇場の今後の予定についてお伝えしよう。

ボリショイ・バレエ/ボリショイ劇場

本拠地モスクワのボリショイ劇場では、6月末まですべての演目がキャンセルとなっているが、2020年11〜12月には3年ぶりとなるボリショイ・バレエ団の来日公演が控えている。男性ダンサーたちによる勇壮な群舞が大きなみどころである『スパルタクス』、クラシック・バレエの不朽の名作『白鳥の湖』、そしてワジーエフ芸術監督とザハーロワがプログラム編成中という「ボリショイのすべて」では『ラ・バヤデール』より「影の王国」、『ジュエルズ』より「ダイヤモンド」ほかが予定されている。
また、ボリショイ劇場では アメリカのデジタルIQ企業ABBYY(アビー)と協同して一般のバレエ愛好家が所蔵するボリショイ劇場のポスター、カタログなどをデジタル・アーカイブ化するプログラム「オープン・ボリショイ・ヒストリー」が完成した。60カ国以上、7,800人を超える人々がこのプロジェクトに参加し、発行された48,000枚のポスター、12万冊のカタログ、10万枚の写真200年分を所蔵する劇場博物館コレクションを基に、新たに加わった資料を抽出し、電子化し、再分類した。シャリアピンやプリセツカヤなどのスターたちが出演した舞台を含むオペラ28,000作、バレエ18,000作、そしてコンサート5,000回分がひとつの電子データベースに格納された。この歴史的資料はオンライン・検索データベース archive.bolshoi.ru(ロシア語)として公開中。一般バレエ愛好家から寄せられた情報についてさらに知りたい場合は、 openbolshoi.ru.(ロシア語)を参照のこと。
ボリショイ・バレエ来日公演2020特設サイト
https://www.japanarts.co.jp/Bolshoi/
ボリショイ劇場公式サイト
https://www.bolshoi.ru/en/

マリインスキー・バレエ/マリインスキー劇場

今シーズンの公演は7月末まですべてキャンセルとなり、毎年恒例の白夜祭は延期となったが、劇場再開の第一歩として、6月20日に白夜祭オープニング・コンサートが催された。
ほぼ3ヶ月ぶりに再開された劇場へ最初に招待されたのは、新型コロナウイルス感染による患者への対応に、長期間にわたって尽力してきたサンクトペテルブルクの医療関係者たちだった。会場となったマリインスキー劇場新館1900席のうち500席のみに限定しての公演である。白夜祭の残りの演目についての新たな日程は、現在調整中とのこと。
9月新シーズンより本格的に劇場が再開されるが、3月下旬以降、新型コロナウィルス感染のために上演できなかった演目が予定されている。
永久メイがジュリエット役をヴィクター・カイシェタとフレッシュなコンビを組んで踊る『ロミオとジュリエット』は、9月17日に上演予定となっている。彼女のジュリエット役デビューはマリインスキー劇場閉鎖前の3月だった。
オンライン配信チャンネル「マリインスキーTV」では引き続きライブ配信、過去の公演などを多数オンエア中。またマリインスキー劇場のYouTubeチャンネルでは、オンライン・バレエクラス動画もアップされており、キミン・キムがマルガリータ・クリークの指導によるバーレッスンの模範を務めている。
マリインスキー劇場公式サイト
https://www.mariinsky.ru/en/

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『ロミオとジュリエット』 永久メイ
Photograph By Natasha Razina © State Academic Mariinsky Theatre

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永久メイ
Photograph By Natasha Razina © State Academic Mariinsky Theatre

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永久メイ、ヴィクター・カイシェタ
Photograph By Natasha Razina © State Academic Mariinsky Theatre

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永久メイ、ヴィクター・カイシェタ
Photograph By Natasha Razina © State Academic Mariinsky Theatre

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永久メイ、ヴィクター・カイシェタ
Photograph By Natasha Razina © State Academic Mariinsky Theatre

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永久メイ、ヴィクター・カイシェタ
Photograph By Natasha Razina © State Academic Mariinsky Theatre

ウィーン国立バレエ/ウィーン国立歌劇場

2018年ウィーン国立バレエ団来日公演でも披露された「ヌレエフ・ガラ」が6月25日にwww.staatsoperlive.comでライブ配信される。また6月28日ルグリ版『海賊』もオンライン・プログラムに予定されている。パリ・オペラ座バレエ時代にヌレエフから薫陶を受けたルグリが恩師の功績を記念して始めたこのガラ公演は、ウィーン国立バレエの人気プログラムとして定着しているが、今回をもってルグリはウィーンを去り、次なる新天地ミラノ・スカラ座バレエの芸術監督に就任する。ルグリの後任には、9月新シーズンより、バレエ・アム・ラインを率いていたマーティン・シュレップァーがウィーン国立バレエの新しい芸術監督に任命された。

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『ジュエルズ』より「ルビー」ケテヴァン・パパヴァ© Wiener Staatsballett / Ashley Taylor

2020/21シーズンスケジュール
9月24、25日、10月3、9、18、22、27、29日 、11月1日『ジュエルズ』
11月24、27日、12月4、7、8、12、23、27、29日『マーラー、ライブ』(ハンス・ファン・マーネン、マーティン・シュレップァー振付)世界初演
ウィーン国立バレエ団公式サイト
https://www.wiener-staatsoper.at/en/staatsoper/staatsballett/
ウィーン国立オペラ・オンライン配信サイト
www.staatsoperlive.com
ヌレエフ・ガラ2020プログラム
https://www.wiener-staatsoper.at/en/staatsoper/news/detail/news/nurejew-gala-2020-stream/

ハンブルク・バレエ/ハンブルク州立歌劇場

9月6日 ノイマイヤー新作『ゴースト・ライト』
12月13、15、17、19、29、31日『ベートーヴェン9』
12月20、22、26日『くるみ割り人形』
新作『ゴースト・ライト』は、外出規制の期間中ノイマイヤーがソーシャル・ディスタンスに配慮した少人数のダンサーたちと創作のエクササイズを続けていくうちに、個々のグループのクリエイションをつなげてひとつの作品を編み出した。「交響曲における個々の楽器のパートをつなげるようなイメージ、または小鉢に美しく盛り付けられた料理が次々と並べられ、全体として美しい調和を生み出すような伝統的な和食のイメージに近い」とノイマイヤーは語る(ハンブルク・バレエ公式サイトより)。「ゴースト・ライト」とは終演後舞台が無人となり次回の公演のために関係者が劇場に到着するまでひと晩中舞台にランプが灯されるというアメリカ演劇界のしきたりを指す。
ハンブルク・バレエ公式サイト
https://www.hamburgballett.de/

シュツットガルト・バレエ/シュツットガルト州立歌劇場

2019/20シーズンの公演はすべてキャンセルされているが、7月25、26日ミックス・プログラム「Response 1」が予定されている。バレエ団ソリストのファビオ・アドリシオ、ロマン・ノヴィツキー、ルイス・シュティンス新作、ハンス・ファン・マーネン新作のほか『瀕死の白鳥』、『オネーギン』パ・ド・ドゥ、『ボレロ』(ベジャール)、『レクイエム』(マクミラン)よりソロなど。シュツットガルト州立歌劇場に99名限定で鑑賞可能。この公演の無料ライブ配信がビール祭りとして知られるオクトーバーフェストの会場カンシュタッター・クルトァヴァーゼン・ドライブイン・シアターで行われる。このライブ配信はシュツットガルト・バレエのスポンサー、ポルシェによる冠イベントとなっている。
シュツットガルト・バレエ公式サイト
https://www.stuttgart-ballet.de/

ベルリン国立バレエ/ベルリン国立歌劇場

8月27〜29日「ベルリンより愛を込めて〜ベルリン国立バレエ・ガラVol.1」
パ・ド・ドゥ、ソロからアンサンブル作品まで。
会場:ベルリン・ドイツ・オペラ
9月3〜5日 「LAB_WORKS COVID_19」
バレエ団のダンサーたちが自宅待機中に創作した作品群。
会場:ベルリン・コーミッシェ・オパー
9月18〜20日 「ベルリンより愛をこめて〜ベルリン国立バレエ・ガラVol.1」」
会場:ベルリン国立歌劇場
マリシア・ハイデ版『眠れる森の美女』、サシャ・ワルツ『SYM-PHONIE2020』などもラインナップされている(上演日時詳細は未定)。
ベルリン国立バレエの公式サイトではポリーナ・セミオノワの『ラ・バヤデール』、ヤーナ・サレンコとダニール・シムキンによる『テーマとバリエーション』のリハーサル映像、ダンサーたちが自宅で踊る様子を編集した動画、屋外で『SUNNY』(エマニュエル・ガット振付)を踊るダンサーたちの様子を捉えた映像などが見られる。
ベルリン国立バレエ公式サイト
https://www.staatsballett-berlin.de/en/

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『SUNNY』(エマニュエル・ガット振付)© Jubal Battisti

ミラノ・スカラ座バレエ/ミラノ・スカラ座

2020/21シーズンのスケジュールはまだ発表されていないが、アレッサンドラ・フェリやロベルト・ボッレがマイヤー総裁とトークを交わしている映像がFacebookにて公開されている。スカラ座バレエのダンサーたちによるピルエットやパ・ド・ブレといったバレエのパの解説映像バレエも興味深い。
ミラノ・スカラ座公式サイト
http://www.teatroallascala.org/en/season/2019-2020/balletto/index.html

※最新の情報は各劇場の公式サイトをご確認ください。

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