「世界からバレエの舞台が消えた時」シリーズを始め、多くのダンサー、振付家に短期集中インタビューを敢行しました

ワールドレポート/その他

web magazine "DANCE CUBE" 編集長 関口 紘一

web magazine "DANCE CUBE" postscript<2020. 06>

Dance Cubeでは、世界中からバレエの舞台がなくなる、と言う未曾有の事態を迎えて、「今、舞踊家は何をどのようにしたら良いか」と言う質問を基に短期集中インタビューを敢行しました。4月末から6月初めにかけて、話を聞くことができた振付家とダンサーは16名。7カ国の9都市におよびました。
Dance Cubeは小さな媒体ですが、常日頃に築いてきた関係をたどって短時日のうちに多くの話を聞くことができました。快くインタビューに答えてくださった振付家、ダンサーの方々に深く感謝いたします。

ダンサーとして踊り、振付家としても活動し、バレエ団の運営者でもある堀内元、20年間オーストラリア・バレエ団の芸術監督を務めたデヴィッド・マカリスター、パリ・オペラ座のエトワールの中心、マチュー・ガニオなどの経験豊かな舞踊家の言葉には、やはり、重みがあり、事態を冷静にかつ深いところで受容し熟慮していました。
また、舞台という貴重な表現の場を失ったダンサーたちが、創意工夫をめぐらして身体の維持のみならず発展をも視野に入れて活発に活動している様子を知り、バレエの未来に希望を抱きました。失望したり嘆いている人は一人もいません。却ってクラスやリハーサルに追いかけられていないことから、自分自身の表現をしっかりと見直そうとしていたり、なかなかできなかった新たな身体性の獲得にチャレンジしていたりと、実に闊達なスピリットが発露されているのを感じ、頼もしく心強く思いました。
そして、カンパニーもまたそれぞれの国により事情は異なってはいたものの、オンラインを通じて、ダンサーへの積極的な支援を行い、観客へのサービスにも積極的に努めていることも知りました。過去に上演した貴重なバレエの映像が自由に見られたり、オンラインのクラスも開催され、活況を呈していました。

とはいえ、このかつて経験したことの無い事態が(未だ終焉していません)、世界の舞踊界に残した爪痕は甚大で根深いものがあります。一時は「ヨーロッパからあらゆる舞台芸術がなくなってしまうのでは無いか」という声すら聞かれました。現在、各国でロックダウンは解除されつつありますが、2020年内にどれだけのオペラハウスや劇場が復活することができるのか、その答えを持っている人はいないでしょう。一つの舞台を創るためには、どれほど広い裾野が必要だったのか、今更ながら強く思い知らされています。
それだけに、16名の舞踊家が "Dance Cube" のインタビューで示してくださったクリエイティヴなスピリットにわれわれは共鳴共感し、たくましく育っていただきたいと、観客の側から切に切に願っています。

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