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『ドキュメンタリー:フレディの魂を追悼するバレエ』と『バレエ・フォー・ライフ』が間も無く放映される!

ワールドレポート/その他

関口 紘一 Text by Koichi Sekiguchi

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20世紀バレエの巨匠、モーリス・ベジャールがクイーンのロックスター、フレディ・マーキュリーと不世出のダンサー、ジュルジュ・ドンの死を悼んで振付け、二人の魂に捧げられた『バレエ・フォー・ライフ』。WOWOWでは5月16日に「クイーン×ベジャール特集」として、このバレエの背景と制作過程を追った『ドキュメンタリー:フレディの魂を追悼するバレエ』(2018年)と『バレエ・フォー・ライフ』(1997年ローザンヌ、メトロポール劇場収録)の舞台映像を連続放映する。
『バレエ・フォーライフ』は、クイーンのファンだったモーリス・ベジャールが、1991年と92年に相次いで亡くなったフレディ・マーキュリーと、ジョルジュ・ドンの若過ぎる死を悼んで振付けた。二人はともに当時は未だ解明されていなかったAIDSに冒されて旅立った。それは著名なアーティストたちが正体不明のこの病によって、次々と亡くなっていった不安の時代の最中だった。『バレエ・フォー・ライフ』は、あるいは死が身近に迫っているのではないか、という危機意識が潜行する中で創作され、1997年1月にパリのシャイヨー劇場で初演されたのである。

まず、バレエの舞台を超えてロック・ミュージックと融合した『バレエ・フォー・ライフ』という傑作が、どのようにして誕生したか。その時、ベジャールやクイーンのメンバーたちは何を思っていたのか、などを綿密に追った『ドキュメンタリー:フレディの魂を追悼するバレエ』をご紹介しよう。国内初放映である。
このドキュメンタリーは、1996年にスイスのモントルーで行われたフレディ・マーキュリーの銅像の除幕式の映像から始まる。フレディはモントルーのレマン湖が見えるアパートが気に入っていて、最後の曲はここで書かれたという。
そしてクイーンの最後のアルバムのジャケット写真を見たベジャールは、それが見慣れた風景であることに驚く。ベジャールの別荘もこの近くにあったのだ。さらにフレディが亡くなった翌年、<ベジャール・バレエの体現者>と言われたジョルジュ・ドンもまた同じ病で亡くなってしまった。
「いろいろなことが重なった」とベジャールは、『バレエ・フォー・ライフ』創作の誘因を感慨を込めてコメントしている。
このドキュメンタリーは、1997年、パリで初演された『バレエ・フォー・ライフ』の舞台の一部とバックステージの映像、再演されたベジャール・バレエ・ローザンヌ(BBL)のダンサーたちが踊る映像、そしてベジャール、エルトン・ジョン、ロジャー・テイラーやブライアン・メイ、BBL芸術監督ジル・ロマン、英国ロイヤル・バレエの元プリンシパル、ウエイン・スリープ、振付家のアーリン・フィリップス、初演も踊ったジュリアン・ファブロー、エリザベット・ロース、再演を踊った若いBBLのダンサーたちのインタビュー、リハーサル映像などで構成されている。そのほかにもジョルジュ・ドンの『ボレロ』『第九シンフォニー』、1977年のフレディのインタビューなどの映像も収められている。

死の役を踊ったジル・ロマンが背景に大きなレントゲン写真を吊るして踊る、長いソロはダンスと演技的表現がバランスよく表わされていて素晴らしい。彼は当時まだ20世紀バレエ団と名乗っていた1979年に入団し、ジョルジュ・ドンの亡き後、ベジャール作品の主要な役を踊り、偉大な二人が不在になった後もBBLを全力で支えている。歴史に名を残したアーティストの仕事を後継していくという困難な仕事と取り組んでおり、ダンサーたちの信頼も厚い。ジルが踊った死の役は、再演ではガブリエル・アリナースが踊っている。また、カトリーヌ・ズアナバールというキューバ出身の女性ダンサーのしなやかな身体性が一際目を惹いた。
『バレエ・フォーライフ』の舞台を彩る独特の衣装をデザインしたのはジャンニ・ヴェルサーチ。ベジャールとともに仕事をし親しかったのだが、彼もまた、1997年にこの世を去る。もう一人、ルドルフ・ヌレエフというベジャールとほぼ同時代を生き、同じ病で死んだ天才ダンサーへの追悼の意も込められている。さらに17曲流れるクイーンの音楽とともにモーツァルトの曲も使われているのだが、モーツァルトもまた35歳という若さで、この世を去っている。ベジャールは常に舞台芸術の歴史をみており、これだけの多くの素晴らしい可能性を秘めた才能を奪った死。その悲しい現実をわれわれは受け入れなければならない、とベジャールは優しく諭す。それがまた生成し消えていく舞台芸術の本質の一つでもあるからだ。

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photo F.Paolini

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photo F.Paolini

そしてパリのシャイヨー劇場の初演の映像では、有名な『ショー・マスト・ゴー・オン』が歌われるラスト・シーンのバックステージを、リハーサルからベジャールやクイーンのメンバー、エルトン・ジョン、ダンサーたちの動きなどまでかなり細かく捉えている。「ブレイク・フリー」とともに映されたジョルジュ・ドンの映像が終わりスクリーンが上げられると、それぞれのダンサーたちがオープニングで使っていた白い布を持って舞台に上がる。そしてエルトン・ジョンの登場だ。白い布に包まれて床に倒れていたダンサーたちが立ち上がり、エルトン・ジョンとともにクイーンの演奏による『ショー・マスト・ゴー・オン』が全員で歌われる。ベジャールがダンサーたちを手厚く労い、二人の二度と現れないかもしれない素晴らしい才能を奪い、忍び寄る死の恐怖を打ち砕くかのように、舞台を囲んで熱いスタンディングオべーションを贈る観客とともに圧巻のエネルギーが会場に溢れる。まさに感動のエンディングだった。

「ショー・マスト・ゴー・オン」。「人生も同じだ。人生は続けなければならない。しかし、言葉にするだけではだめだ。進み続けるために闘えるかどうかが問題なのである」――モーリス・ベジャール。

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photo F.Paolini

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photo F.Paolini

WOWOW放映

『ドキュメンタリー:フレディの魂を追悼するバレエ』2020年5月16日(土)17:20〜
クイーン×ベジャール『バレエ・フォー・ライフ』2020年5月16日(土)18:25〜
詳細は
https://www.wowow.co.jp/release/005447

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