高田茜がオデット/オディールを踊り喝采を浴びた英国ロイヤル・バレエ『白鳥の湖』

ワールドレポート/ロンドン

アンジェラ・加瀬  Text by Angela Kase

英国ロイヤル・バレエは本拠地コベントガーデンのロイヤル・オペラ・ハウス(ROH)で3月5日より、リアム・スカーレット版『白鳥の湖』を再演中。
3月5日の再演初日は昨年の世界初演キャストのマリアネラ・ヌニェズとヴァディム・ムンタギロフ、翌6日はこの作品を得意とする高田茜が、未だに怪我のリハビリに余念がないスティーヴン・マックレーの代役に立ったフェデリコ・ボネッリと共に全幕主演した。

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© ROH2019 Bill Cooper

高田とボネッリの2度目の主演公演である3月10日の公演を観た。
ROHの観客席に入ると1階中央最後列、1階ストール席中程左右、2階席の各所にカメラが入り、日本人のカメラ・クルーが立っていた。6日の舞台も収録していたというNHKの撮影隊である。

高田は昨年ウィリアム・ブレイスウェルとフェデリコ・ボネッリを相手役に、スカーレット版を全幕主演。その際から白鳥の羽ばたきを彷彿とさせる腕使いとオデットとオディールの巧みな演じ分けで、イギリスのバレエ関係者やファンに高く評価されていた。特に腕使いについては、バレエ団の他のバレリーナの追従を許さぬ程の芸術性の高さで観る者を驚かせている。
高田は2幕と4幕に持ち前の腕使いで悲劇の姫君オデットの繊細な心の動きを表現。一転して3幕の黒鳥のグラン・パ・ド・ドゥでは、誘惑者黒鳥オディールとして余裕たっぷりのバランスやグラン・フェッテ・アン・トゥールナンにダブル、トリプルを組み込むウルトラC級の技量を奮って堂々作品を支配。バレリーナのサポート技術では英国ロイヤル・バレエの男性プリンシパル中、ナンバー・ワンと評されるボネッリの巧みな技術に高田の魅力が200パーセント発揮される大変素晴らしい舞台となり、ROHに集まった観客が熱狂した一夜であった。

当日は日本出身ダンサーたちも要所要所で大活躍。
冒頭で人間のオデットがロットバルトによって白鳥に変えられる場面では、前田紗江が人間オデット役を、また王宮の男性召使の1人には、今年のローザンヌ国際コンクールのエキシビションで華々しいパフォーマンスを観せ、バレエ団の研修生として内定をもらっているロイヤル・バレエ・スクールの五十嵐大地の姿もあり、彼は3幕の民族舞踊ナポリの踊りではタンバリンを打つ姿も観られる。軍人の1人として中尾太亮、1幕と3幕でパ・ド・トロワを踊る王子の妹の1人には崔由姫、3幕4人の花嫁候補のうちハンガリーのプリンセス役で艶やかな姿を見せていたのは、3月28日の『白鳥の湖』全幕主演デビューが期待される金子扶生、ナポリタン・ダンスはアクリ瑠嘉が闊達なフットワークを振るっている。

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