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マーゴ・フォンテイン生誕100年記念ガラ公演、ジュネ国際バレエコンクールは「マーゴ・フォンテイン国際バレエコンクール」に改称される

ワールドレポート/その他

香月 圭 text by Kei Kazuki

気品あるプリマとして英国ロイヤル・バレエを象徴する存在であり、ロシアから亡命したヌレエフと「奇跡のパートナーシップ」を組んで踊ったことでも後世に語り継がれているプリマ・バレリーナ・アッソルータ、マーゴ・フォンテイン。今年は彼女の生誕100年にあたり、いくつかのイベントが開催された。まず、フォンテインの100回目の誕生日にあたる2019年5月18日、ウェストミンスター寺院で英国ロイヤル・バレエ芸術監督ケヴィン・オヘアなどの列席のもと、彼女の石碑に献花する式典が行われた。

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1971年『白鳥の湖』カーテンコールでのフォンテイン(C)G.B.L. Wilson, Royal Academy of Dance

そして2019年6月8日、ロイヤル・オペラハウスではマーゴ・フォンテイン生誕100年記念ガラ公演が行われた。最初の演目はフォーキン振付の『火の鳥』。ファースト・ソリストのイツィアール・メンディザバルが火の鳥を踊った。これはフォンテイン自身のお気に入りだった役であり、前芸術監督モニカ・メイソンは火の鳥をフォンテインから教わった際、「フォーキンはこうしてほしいとカルサヴィナが言っていたわ」と振付師・初演ダンサーから受けた貴重なアドバイスを伝授されたという(The Sunday Times, 2019,6,9)。
英国ロイヤル・バレエにはフレデリック・アシュトンがフォンテインのために創作した作品が数多く現存する。今回のフォンテイン生誕100年記念ガラのプログラムにもアシュトンの作品が多く選ばれた。とりわけダーシー・バッセルが現役の時にペアを組んでいたゲイリー・エイヴィスをパートナーに12年振りに舞台に復活し、アシュトンによる『ファサード』よりコミカルな「タンゴ」を披露したことは観客にとって嬉しいサプライズとなっただろう。また、アシュトン振付『誕生日の贈り物』よりフォンテインのヴァリエーション・パートのアレグロを踊った金子扶生は「輝いていた」と評された(The Times, 2019, 6, 10)。またこの作品の初演時、フォンテインとマイケル・ソムズが踊ったパ・ド・ドゥにサラ・ラムと平野亮一が出演し、「夢のような時間を醸し出した」という(同上)。これは吉田都の最後の舞台となる2019年8月の公演「ラストダンス」で、彼女自身が選んだ演目である。
その他、アメリカン・バレエ・シアターのデヴィッド・ホールバーグとナタリア・オシポワがマクミラン版『ロミオとジュリエット』のバルコニー・シーンを、ワディム・ムンタギロフとヤスミン・ナグディが『海賊』よりパ・ド・ドゥを披露するなど、フォンテインとヌレエフが共演したなかでも特に評価の高かった作品も披露された。
ガラ公演の最後には、1979年にロイヤル・オペラハウスでフォンテインの60歳の誕生日に彼女がエルガーの名曲『愛の挨拶』(アシュトン振付)を踊る姿を写したフィルムが上映された。これは終盤にアシュトンが舞台に登場しフォンテインと二人で踊るシーンもある貴重な映像である。

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5歳の頃のフォンテイン

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ドレス・リハーサル。1967年ロイヤル・オペラハウス(C)G.B.L. Wilson, Royal Academy of Dance, ArenaPAL

また、ロイヤル・アカデミー・オブ・ダンス(RAD:英国王室舞踊アカデミー)創立者の名を冠したアデリーン・ジュネ国際バレエコンクールがRAD創立100周年を迎える2020年から「マーゴ・フォンテイン国際バレエコンクール」と改称される。フォンテインは初代アデリーン・ジュネに代わって二代目RAD総裁として歴代最長の期間、英国バレエの発展やRADの国際的拡充に貢献した。彼女の功績を称えた今回の名称変更について、RAD現総裁ダーシー・バッセルは次のように語る。「私がダンサーになりたての頃、彼女から『白鳥の湖』の指導を受けたことを決して忘れることはないでしょう。次世紀を担う生徒たちにとってデイム・マーゴ・フォンテイン・プリマ・バレリーナ・アッソルータという名前ほど励みとなるものはないでしょう」(RADプレスリリース)。

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フォンテイン生家に掲げられた英国歴史的建造物プレートの除幕式、ダーシー・バッセル。2016年(C)English Heritage, Lucy Millson-Watkins

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1981年ジュネ国際バレエコンクール。優勝したリアン・ベンジャミン(右)とフォンテイン(C)G.B.L.Wilson, Royal Academy of Dance

2020年9月に開催されるロンドン大会では、ダーシー・バッセルが審査員長を務め、コンクール創設以来初めてロイヤル・オペラハウスでの開催となる。コンクール参加者はロイヤル・バレエスクールにて世界的に著名な振付家や教師のもとで5日間に渡るレッスンを受け、2020年9月2、3日ロイヤル・オペラハウス内リンベリー・シアターで準決勝、9月5日ロイヤル・オペラハウス・メインステージで決勝が行われる。初代RAD総裁ジュネの名前はアデリーン・ジュネ・ゴールド・メダルという名称に引き継がれ、最優秀の成績を残した参加者に贈られる。
RAD創設者アデリーン・ジュネの名を冠してきたこの国際バレエコンクールは15〜19歳のRADシラバスで学んできた生徒たちが対象となっており、これまでスティーヴン・マックレー、アレクサンダー・キャンベル、ローレン・カスバートソン、フランチェスカ・ヘイワードなどが入賞し、現在の英国ロイヤル・バレエで活躍。日本からはバレエ・ダンサーの下村由理恵、俳優・振付家の小林十市、新国立劇場バレエ・プリンシパルの小野絢子などが参加している。今年のコンクールは、カナダのトロントで2019年8月20〜29日の10日間に渡って行われる。審査員はカレン・ケイン(決勝のみ)、モニカ・メイソンなど。

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『ラ・バヤデール』フォンテイン、キース・ロッソン1970年(C)G.B.L. Wilson, Royal Academy of Dance, ArenaPAL

◇2019年度ジュネ国際バレエコンクールWebサイト
https://www.royalacademyofdance.org/the-genee/genee-2019/
◇ガーディアン紙フォンテイン生誕100年写真特集(2019/5/18付)
https://www.theguardian.com/stage/gallery/2019/may/18/margot-fonteyn-centenary-ballerina-in-pictures

6月21日からスタートするロイヤル・バレエの来日公演の「ロイヤル・ガラ」でもフォンテインの演技が絶賛された『眠れる森の美女』や『オンディーヌ』『ロミオとジュリエット』『シンフォニー・イン・C』が上演される。カルロス・アコスタ版『ドン・キホーテ』も今回日本で初披露となるが、この作品での演技が評価され6月7日付でプリンシパル・ダンサーに昇進したマルセリーノ・サンベの勇姿を拝見できるのもバレエファンとしては嬉しい。日本から羽ばたいていった平野亮一、金子扶生、崔由姫を生の舞台で観られるのも見逃せない。

◇英国ロイヤル・バレエ団2019年来日公演Webサイト
https://www.nbs.or.jp/stages/2019/royalballet/index.html

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