佐久間奈緒と厚地康雄が初めて共演した『ロミオとジュリエット』、バーミンガム・ロイヤル・バレエ

ワールドレポート/ロンドン

アンジェラ・加瀬  Text by Angela Kase

Birmingham Royal Ballet 英国バーミンガム・ロイヤル・バレエ

"Romeo & Juliet"  Choreography Kenneth MacMillan
『ロミオとジュリエット』ケネス・マクミラン:振付

バーミンガム・ロイヤル・バレエは、6月12日〜16日までサドラーズ・ウェルズ劇場で4日間にわたるロンドン公演を行った。6月12、13日はマクミラン版『ロミオとジュリエット』を3配役で公演。休演日14日を挟んで後半の15、16日は小品3作品によるトリプル・ビルを披露した。

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© Angela Kase

6月12日『ロミオとジュリエット』初日は平田桃子とセザール・モラーレスが務めたが、初日数時間前に舞台写真家を招いて行われたドレス・リハーサルと翌13日のマチネには、月末に23年のキャリアに終止符を打って引退する曹馳と、7月7日にブリストルで『リーズの結婚』全幕を踊って引退予定の佐久間奈緒のペアが予定されていた。

ところがバレエ団がロンドン入りする数日前に曹が腰を痛めて降板。話し合いの末、バーミンガムでデリア・マシューズと共にこの作品を踊ってロミオ役でデビューする予定であった、厚地康雄が急遽代役を務めることになった。
5月のバレエ団の日本公演でも、当初名古屋でのみ『眠れる森の美女』で全幕共演する予定であった佐久間と厚地が、デリア・マシューズの降板により、びわ湖や東京でも主演し、日本のバレエファンや関係者を喜ばせたのは記憶に新しい。
この2人が、今回は全く予定されていなかった『ロミオとジュリエット』でも共演することになったのである。それも本拠地バーミンガムではなく、首都ロンドンであった。
佐久間と曹馳といえば、バレエ団が過去20年以上世界に誇ったパートナーシップ。エリザベス女王ご臨席公演でバレエ団を代表して『ドン・キホーテ』のパ・ド・ドゥを踊っている。
その2人のロンドンのさよなら公演を曹馳が急遽降板したのだから、曹のファンはパニックに陥り、厚地のファンは狂喜乱舞した。
また長いことロミオを踊ることが夢であった厚地にとっても、ロンドンで愛妻佐久間と全幕共演してデビューというのは、驚きもしただろうが願ってもないことであったに違いない。

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当日の佐久間は20代とすら感じられる若々しさで、ジュリエットを好演。美しい立ち姿は、バルコニーで初恋の人を想う場面などで観客を圧倒した。

厚地もデビューとは思えぬ充実を見せ、若きヴェローナの貴公子として当日サドラーズ・ウェルズ劇場に集まったファンを魅了。マキューシォ役のラクラム・モナハンやベンヴォーリオ役のエディヴァルド・サウザ・ダ・シルヴァとの演踊の掛け合いも楽しかった。また様々な場面で白いタイツの似合う厚地の容姿の良さと、愛妻佐久間との並びの美しさが際だった。
パ・ド・ドゥでは夫婦ペアらしい、落ち着きとしっとりした雰囲気があふれ、数日の間に『ロミオとジュリエット』全幕で共演すべくリハーサルを重ね努力した跡などみじんも感じさせなかった。
佐久間の引退により、2人による『ロミオとジュリエット』全幕共演が、たった一度限りのスペシャル・パフォーマンスとなってしまったのが何とも残念な、大変充実した舞台であった。

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