[ ロシア ]第6回マリインスキー・インターナショナル・バレエ・フェスティバル < Part 2 >

ワールドレポート/その他

関口 紘一
text by Koichi Sekiguchi

ファルフ・ルジマトフ・ガラ・パフォーマンス

今回のマリインスキー・バレエ・フェスでは、ツィスカリーゼ、ゼレンスキー、ルジマトフの三人の男性ダンサーをフューチャーしたガラが行われた。ゼレンス キーとルジマトフの日を観ることができた。ゼレンスキーの演目は最終日の全体のガラとも重複しており、朝日新聞の記事でも触れたので、ここではルジマト フ・ガラについてお伝えしよう。

当初、ルジマトフ・ガラの演目は、『放蕩息子』『ムーア人のパヴァーヌ』『スパニッシュ・サイ』と発表されていた。しかし当日のプログラムには、『放蕩 息子』ではなく『シェヘラザード』となっており、予定にはなかったザハロワが出演すると記されていた。 周囲の人たちの反応によると、マリインスキー劇場ではしばしばこのような変更が行われることがある、という。

ザハロワ・ファンの私としては、ルジマトフの踊る舞台は観たことがないが、いささか抹香臭い(といってはバランシンに失礼かもしれないが)『放蕩息子』 より、絢爛華麗で耽美的な世界でザハロワとルジマトフが踊るエキゾティックな『シェヘラザード』(日本公演を観たことはあるのだが)を存分に堪能したい、 と思ってしまう。

『シェヘラザード』ルジマトフ、ザハロワ

『シェヘラザード』ルジマトフ、ザハロワ

リムスキー-コルサコフの音楽、バクストの美術。フォーキンの振付は娘のイザベルとアンドリス・リエパが復元している。バクストの美術は大向こうを狙ったケレン味たっぷりの極彩色で細部に至るまで豪華絢爛なものである。

サルタンの留守中にハーレムで阿片や美酒美食がふんだんに供され、美女と奴隷と宦官が繰り広げる酒池肉林の狂宴、頽廃の極みの中できらりと光った愛の瞬間。エロスとタナトスの閃光のような交歓を描いている。

『スパニッシュ サイ』ルジマトフ

スパニッシュ サイ』ルジマトフ

アンナ・パヴロワを想起させるザハロワ(ゾベイダ)の美貌と姿体、内面を押し殺したルジマトフ(金の奴隷)の得意演技、サルタンの皆殺しの思想が渾然として、この世のものとは思えないすなわちエキゾティズムの頂点へと観客を誘う。客席は盛んな喝采を贈っていた。
『ムーア人のパヴァーヌ』は、オテロの(『シェヘラザード』と同様の)疑心暗鬼が無限に拡大していく様子を心理模様の中に描いた作品。コンセントレートし てのめり込んでいたルジマトフは、カーテンコールで一瞬だったが我を失っていたのか、シャルル・ジュドに促されて、観客へ謝意を表した。

最後は『スパニッシュ サイ』。ルジマトフがロザリオ.ロメロとリカルド・ロメロと共演したもの。女性のソロ、男性のソロ、ルジマトフのソロ、三人の踊 りとなっていて、スパニッシュ・ダンスとバレエがフラメンコの曲とともに溶け込んだ舞台だった。

三つの作品とも日本でも上演されたことがあり、私も観ているのだが、別の舞台を観たかのような、強烈なインパクトで迫ってきたのには少々驚かされた。

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