【ニュース】K バレエ カンパニーのプリンシパル・ダンサー、浅川紫織が現役を引退!
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関口 紘一 Text by Koichi Sekiguchi
K バレエ カンパニーのプリンシパル・ダンサー、浅川紫織が10月の『ロミオとジュリエット』公演を最後に現役引退を決意し、記者会見を開いた。2月末の熊川哲也監督の新作『死霊の恋』では、主役を熱演していただけに大いに驚いた。まだ32歳とこれからさらに成熟した演舞を見せてくれるのではないか、という期待感があった。本当に残念なことだ。 3月21日から始まるK バレエ カンパニーの『白鳥の湖』では、オデット/オディールを踊り、『ロミオとジュリエット』ではジュリエットを踊って、プリンシンパル・ダンサー、浅川紫織の見納めとなる。 現役引退会見では、まず『白鳥の湖』のオデットとジークフリートの出会いのシーンのリハーサルが公開された。浅川紫織はチュチュを着け、「もう何も教えることはない」と言う熊川ディレクターの前で、宮尾俊太郎のジークフリートと踊った。自ら放出した感情に身を委ねるかのように踊る浅川紫織らしい見事な動き。引退するというのが嘘のような嫋やか表現を見せた。見守る熊川ディレクターの惜しむ気持ちが伝わってくるようだった。
浅川紫織、宮尾俊太郎
会見場に移って、熊川ディレクターがK バレエ カンパニー育ちの浅川紫織について、「これから活躍してくれると思っていたが、怪我したこともあり、本人には葛藤があったのだと思う。最初から輝くものがあり、容姿、脚、精神力とバレリーナの条件が整っていた。これからまたこんな出会いがあるかどうかわからない、と思うと複雑な気持ちになる。最後に踊るジュリエットには喝采を贈りたい」と話すと、たちまち浅川の姿の良い目が潤んでいく。司会者に浅川さんからひと言、と振られると感極まって言葉に詰まってしまった。熊川ディレクターが「もう少し落ち着いてから」と助け船を出し、「『クレオパトラ』では、中村祥子と二人の素晴らしいダンサーに振付けることができた。『死霊の恋』の時にはまだ知らなかったのだが、インスパイアされて創ることができた」
そして、現役引退を決意した浅川は語った。
「明日歩けなくなるかもしれない、いつ踊れなくなるかもしれない。6年前の大きな怪我から"いつ踊れなくなっても・・・"という気持ちで、毎日を過ごしていました。自分の立場を考えて、カンパニーの顔としての責任がプリンシパルにはあります。具体的にいつ決意したというよりも自然の流れの中で、ただ自分だけが歩けなくなるまで踊れればいい、というわけではないと思いました。」
「K バレエ カンパニーでの時間がすべてでしたが、私が踊らなくなっても、他にバレエと関わることができるし、私のバレエ人生が終わるわけではないと思うようになりました。」
「入団して最初に踊った『白鳥の湖』の初日の観客の喝采は忘れることができません。『白鳥の湖』のオデット/オディールは大切にしてきた役ですから、今、舞台を最後にするという時に『白鳥の湖』を踊ることができるのは幸せです。全力でできることのすべてを投入して踊りたいと思います。」
「イングリッシュ・ナショナル・バレエスクールで熊川ディレクターと出会えたことはラッキーでした。本当に数え切れないくらいたくさんのことを教えていただいて、精神面もいろいろと学ばせていただいて、最後の舞台までK バレエ カンパニーで踊って、全うできることは幸せだと思います。」
浅川紫織、熊川哲也
最後に芸術監督熊川哲也のオフィシャルコメントをどうぞ。
この度、プリンシパルの浅川紫織が11月の『ロミオとジュリエット』を最後に第一線より引退する旨を決意しました事をご報告させて頂きます。18歳よりK バレエにてプロのキャリアをスタートし、16年間、トップバレリーナとして10年間、K バレエの歴史と共に歩み育ち、名実共に真のプリンシパルダンサーまで上り詰めた彼女のバレリーナ人生は、孤高にして崇高なバレエの世界において一流の芸術家としてファンの方々に夢を与え続けた事でしょう。彼女と出会い共に夢を見た16年間は、私自身の芸術活動の結晶として永遠に脳裏に宿り、計り知れない愛情を感じずにはいられません。とりわけ最後の6年間は大きな怪我を抱え孤独と戦いながらも最高峰のパフォーマンスを演じ続けてきた姿には、私を始め多くの後輩達にも多大なる影響を与えた事でしょう。
プリンシパルダンサーとは苦境に立たされた時に、真の強さ優雅さを兼ね備え自分に打ち勝ち自身を犠牲にし、バレエ芸術に身を捧げる精神力があってこそのトップバレリーナ、ダンサーは浅川紫織を見習うべし。
試練を感動に変えるという教訓を身を持ってカンパニーの強さとして残してくれた彼女へ、満場の喝采を送ると共に、最後の公演まで、そしてこれからもK バレエの一員としての浅川紫織を応援していただきます様、心よりお願い申し上げます。