【ニュース】小島章司がアラン・ルシアン・オイエンの作品に出演する、ふじのくに⇄せかい演劇祭 2018

ワールドレポート/その他

関口 紘一 Text by Koichi Sekiguchi

SPAC-静岡舞台芸術センター主催による「ふじのくに⇄せかい演劇祭 2018」が、静岡芸術劇場他で開催されている。これは、1999年に開催された第2回「シアター・オリンピックス」、2000年に開催された「Shizuoka 春の芸術祭」などの後を受け、SPAC設立15年目を迎え、2011年から「ふじのくに⇄せかい演劇祭として開催されているもの。毎年、各国から優れた舞台芸術作品を招聘してきたが、今年はベルリンからトーマス・オスターマイヤー、フランスからクロード・レジ、ノルウェーからアラン・ルシアン・オイエン、他にもリモージュ、メルボルン、メキシコシティなどからも日本初演作品を招聘して4月28日より開催されている。また、SPAC芸術監督の宮城聰演出による『寿歌』の野外上演、駿府城で『マハーバーラタ〜ナラ王の冒険〜』の上演、静岡市街の路上の「ストレンジシート」など盛りだくさんの企画が行なわれている。

舞踊では、ノルウェーの芸術家集団「ウィンター・ゲスツ」を率いるアラン・ルシアン・オイエンの『シミュレイクラム/私の幻影』が5月3日、4日に静岡芸術劇場で上演される。この作品には、長らく日本のフラメンコを牽引してきた小島章司とシディ・ラルビ・シェルカウイの『Te ZukA』に出演したダニエル・プロイエットが出演し、振付にも参加する。もともとオイエンとダニエルは、伝統舞踊の伝承、特に歌舞伎舞踊じ着目しており、藤間勘十郎に手ほどきを受けていた。その折に偶然、小島章司と出会い、単身シベリア鉄道でスペインに渡って、フラメンコを習得し極めた人生の軌跡に共感し、この作品が生まれたという。
オイエンは今年6月には、ピナ・バウシュ舞踊団の新作を手がけるなど注目を集めているが、この作品ではフラメンコの伝統的な踊りと歌舞伎舞踊の様式美をコンテンポラリー・ダンスの中に融合し、どのような表現を見せてくれるのか。
ダニエルは、ブエノスアイレスのテアトロ・コロンのバレエ学校で、英国ロイヤル・バレエのプリンシパル、マリアネラ・ヌニェスなどとともにクラシック・バレエを学んだ。間もなく始まるウィーン国立バレエ団来日公演の「ヌレエフ・ガラ」では、ダニエルが振付た『ル・シーヌ 白鳥』も上演される。東京・六本木のエストゥデオ・コジマで、ダニエルと小島章司が稽古していたが、藤間流の女形の訓練を受けているだけあって、柔らかく美しい所作が際立った。
オイエンは小島章司の先進的なフラメンコ・ダンサーとしての人生を知り、同時に小島の『ラ・セレスティーナ』の映像を観て、この作品を作ることを決めた。という。

この『シミュレイクラム/私の幻影』は、すでに、オスロ、ヒューストン、パリで上演されてきたが、それぞれの国の言葉を採り入れて上演している。今回は小島は日本語だけでなくスペイン語、フランス語、英語をしゃべり、ダニエルが日本語のセリフを話す。言葉だけではなく、フラメンコや歌舞伎舞踊、演劇、コンテンポラリー・ダンスなど様々な要素が渾然となって、どんな< simulacrum>が浮かび上がるのだろうか。なかなか興味深い作品である。

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小島章司とダニエル・プロイエット

ふじのくに⇄せかい演劇祭 2018 『シミュレイクラム/私の幻影』

5月3日(木・祝)、4日(金・祝)各日12:30開演
静岡芸術劇場(JR東静岡駅より徒歩5分)

◎演出・振付:アラン・ルシアン・オイエン
◎歌舞伎舞踊振付/音楽『Natsue』:藤間勘十郎
◎出演・振付:小島章司、ダニエル・プロイエット

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