【ニュース】英国ロイヤル・バレエ団がリアム・スカーレット版の新『白鳥の湖』を世界初演した!

ワールドレポート/ロンドン

アンジェラ・加瀬  Text by Angela Kase

5月17日、英国ロイヤル・バレエがリアム・スカーレット版、新『白鳥の湖』全幕を本拠地であるコベントガーデンのロイヤル・オペラ・ハウスで世界初演した。ロイヤル・バレエ団が『白鳥の湖』の改定版を上演するのは30年ぶり。
これまで上演されてきた『白鳥の湖』プティパ、イワーノフ版には、デヴィッド・ビントレー振付のワルツ(1幕)とフレデリック・アシュトン振付のナポリタン・ダンス(3幕)が挿入されていた。スカーレット版はこの全幕版の2幕の湖畔の情景、3幕の黒鳥のグラン・パ・ド・ドゥとアシュトンのナポリタン・ダンスを残し、主として1幕と4幕の振付に手を加えている。
スカーレットの改作版のロットバルトは、魔術師という設定で冒頭には、少女のオデットを白鳥の姿に変える場面が加えられている。またロットバルトは、ジークフリートの母の助言者で軍隊の最高司令官の地位についている権力者でもあり、影で王妃とジークフリートを操っている。王子の親友ベンノは1幕と3幕でパ・ド・トロワを踊るが、彼と共に踊る女性2人は王子ジークフリートの妹たちである。3幕の舞踏会の場面にはジークフリートの結婚相手としてイタリア、スペイン、ハンガリー、ポーランドのお姫様が家来を伴って登場する。

17日の世界初演でオデット・オディールを踊ったのはマリアネラ・ヌニェズ、ジークフリートはヴァディム・ムンタギロフ。ロットバルトはベネット・ガートサイド、ベンノはアレクサンダー・キャンベル、王子の妹をフランチェスカ・ヘイワードと高田茜が踊った他、3幕のイタリアのプリンセスを崔由姫が務めた。イギリスとヨーロッパではこの初日キャストによる6月12日の公演が映画館にライブ中継される他、ロンドンのトラファルガー広場をはじめとするイギリス国内の大中都市の広場の特設スクリーンに映し出される予定。ダンサーの降板がなければ、日本のファンも8月下旬にこの配役を映画館で観られることだろう。

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ヌニェズ、ムンタギロフ Photo:Angela Kase@2018ROH

 世界初演当日は、2017-18シーズン最後の演目である新『白鳥の湖』を成功させようというダンサーの気合が尋常ではなく、30年に一度の改作初日をこの目で観たいというファンの期待も大きかった。3幕のブラック・スワンのグラン・パ・ド・ドゥ終了後にヌニェズとムンタギロフの美技の掛け合いに満場のファンが熱狂。終演後のカーテンコールではダンサーとともに、まだ30代初めのリアム・スカーレットとヴェテラン・デザイナーのジョン・マクファーレンらも舞台に上がった。そして当日ロイヤル・オペラ・ハウスに集まったバレエ関係者、ファン、バレエ団後援者たちからブラボーの嵐と大きな拍手が贈られ、舞台の左右からファン有志らによる恒例のフラワーシャワーもあり大変な盛り上がりをみせた。

バレエ団は新『白鳥の湖』を6配役22公演行って、今シーズンを締めくくる。高田茜とウィリアム・ブレイスウェル組は5月19日(夜)に、サラ・ラムと平野亮一組は5月19日(昼)にファミリー・パフォーマンスの主役を務めた後、それぞれ計4回主演予定。
Dance Cubeには多くの配役の公演を7月10日更新号でご紹介する予定だ。

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ヘイワード、キャンベル、高田 Angela Kase@2018ROH

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