[ミュージカル]宝塚歌劇 雪組公演『ロシアン・ブルー』『RIO DE BRAVO!!』
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『ロシアン・ブルー』『RIO DE BRAVO!!』
宝塚歌劇団雪組
公演プラグラムを繰ると、ブルーグレーの毛並の美しい猫を抱いたトップスター水夏希が、こちらに微笑みかけている。なぜ、猫? ああ、タイトルは猫の名前だったのね! と、そんな茶目っ気たっぷりの粋な芝居『ロシアン・ブルー』と、オリンピック開催決定に沸く現地リオデジャネイロにも負けない熱さのラテンショー『RIO DE BRAVO!!』の2本立て。
水と、今年5月に退団した白羽ゆりの後を継いで雪組トップ娘役に就いた愛原実花の、新トップコンビお披露目公演だ。
『ロシアン・ブルー』は、アメリカとソ連の仲が冷え切る少し前の時代の、ソ連でのお話。
アメリカからやってきた下院議員アルバート(水夏希)は、アメリカ産の本場レビューを土産に国際交流を図ろうと、"鉄の女"と呼ばれる中央芸術事業局のイリーナ(愛原実花)に上演許可をもらおうと躍起になる。あの手この手で画策するもむなしく、鉄の女は揺るがない。かくなる上は惚れ薬...? そんなアルバートを手助けする秘書のヘンリー(彩吹真央)や、ミュージカルレビューの演出家グレゴリー(音月桂)らを巻き込んで、ふたりの恋の行方やいかに!? と物語の骨格はシンプルなラブコメディだが、その肉付きの細部に工夫が凝らされている。
宝塚歌劇 雪組公演
『ロシアン・ブルー』
綿密な時代考証をもとにした脚本の手腕に定評のある座付き演出家・大野拓史らしく、当時のソ連に実在した人物や出来事のエッセンスをうまく取り入れて、架空の登場人物たちのフィクションとバランスよく仕上げている。
実在の人物で印象的だったのは、音月が扮したミュージカル・コメディ映画の監督で有名なグレゴリー・アレクサンドロフや、未来優希が演じた、スターリンの「大テロル」を実行した人物として知られるニコライ・エジェフ、そして名バイプレイーヤー汝鳥伶がさすがだった"スターリンのそっくりさん"俳優、ミハイル・ゲロヴァニ。3名とも要所要所で光っていた。
また、アメリカとソ連のレビュー団がミュージカルレビューの楽しさを歌い踊り、合作をつくろうと意気投合するくだりは、パリのレビューに倣って日本人も楽しめるエンターテインメントを追及してきた宝塚歌劇らしい心躍る場面だった。主演の水と愛原は、コメディならではのセリフの間が自然と笑いを誘い、早くも息の合ったコンビぶり。それを支える彩吹も、得意の歌だけでなく芝居もダンスも安定感が増していて、雪組は今、充実している印象を受けた。
宝塚歌劇 雪組公演『ロシアン・ブルー』
2幕のショー『RIO DE BRAVO!!』では、1幕の舞台モスクワから、ブラジルのリオデジャネイロへトリップ!
粋なスーツ姿からうって変わって、黒塗りの舞台化粧でスパンコール尽くしのコスチュームに身を包んだ水夏希が迎えてくれる。5年振りにショーを担当する座付き演出家・齋藤吉正によれば、『ノバ・ボサ・ノバ』をはじめ『オペラ・トロピカル』『ラ・ノーバ!』『サザンクロス・レビュー』などの宝塚史に残る "ラテンショー" の流れを受け継ぐ作品だとか。注目は、チアリーダーが持つような "ポンポン" が、観客向けにグッズショップなどで販売されていること。ショーの中盤に出演者が教えてくれる振付に合わせて、劇中で一緒に振ることができる。タカラヅカ初の試みだというこの "ポンポン" で、客席は大盛り上がり。新トップコンビのデュエットダンスでは、入団6年目の初々しい愛原を相手役に迎えた、入団17年目、トップスター3年目のベテラン水が見せる包容力に、これぞタカラヅカ!とうっとりできる。「キャリオカ」、「イパネマの娘」、「コパカバーナ」、「風になりたい」などなど名曲尽くしの約55分で、楽しい時間はあっという間に過ぎ去っていった。
宝塚歌劇 雪組公演
『ロシアン・ブルー』
宝塚歌劇ではミュージカル+ショーの2本立てがメインだが、最近では韓流ドラマ『太王四神記』やゲーム『逆転裁判』を舞台化したりと、レパートリーの幅広さに驚く。今後はなつかしの名画『カサブランカ』や、なんと人気ドラマ『相棒』も上演予定とか。ダンス好きの目に留まる作品もあるはずなので、今後も注目していきたい。公演は10月18日まで。
(2009年9月25日 東京宝塚劇場)
宝塚歌劇 雪組公演『ロシアン・ブルー』
ワールドレポート/その他
- [ライター]
- 三方 玲子