様々な楽器や役者の声との"融合"、神原ゆかりによる実験的な試み多様に──ゆかりバレエ公演2024
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ワールドレポート/大阪・名古屋
すずな あつこ Text by Atsuko Suzuna
ゆかりバレエ公演2024
『Love&Passion』ほか 神原ゆかり:振付
『融合』その1
「瀕死の白鳥」神原ゆかり、キーボード:小笠原彩乃
撮影:脇田博史(株式会社ミヤビフォトプランニング)
第1部は様々なクラシック・バレエのヴァリエーションなどが並ぶコンサート、第2部~第4部に実験的な試みが並んだ。
「融合」と題された第2部の「その1」は、神原ゆかりが踊る『瀕死の白鳥』。通常、チェロとピアノで踊られるこの作品を小笠原彩乃のキーボード演奏に乗せて。深みを感じる表現に「この人はやはりバレリーナなのだ」とあらためて感じた。「その2」は、観るもののお腹に響く井上一倫と與那嶺祐太の太鼓、福田展博のギターに乗せて福田晴美が素朴さから激しさへ変容しながら踊る。「その3」は、民謡集団ピュアの津軽三味線に乗って、福田晴美と神原に、クラシック・バレエの高い技術を持つ男性ダンサー3人、末原雅広、市橋万樹、牧村直紀が加わる。福田と神原の表現の仕方の違いが興味深かった。
『融合』その3
津軽三味線:民謡集団ピュア
ダンス:神原ゆかり、福田晴美、末原雅広、市橋万樹、牧村直紀
撮影:脇田博史(株式会社ミヤビフォトプランニング)
『融合』その3
神原ゆかり、福田晴美
撮影:脇田博史(株式会社ミヤビフォトプランニング)
第3部は『ハムレット・マシーン』。シェイクスピアの『ハムレット』を下敷きにしながら、様々な文学作品、それにとどまらない様々なものからの引用や暗喩を含むハイナー・ミュラーの劇作品だが、この朗読や演奏とともに(獅子見琵琶、加藤真紀子、寂光根隅的父の朗読&ダンス、小笠原のキーボード、胡桃澤和香奈のフルート、福田のギター)。
浴衣姿で花道に現れる"幸せの象徴のダンス"の子供たちは、舞台で素朴に"かごめ"遊びをする。対して、朗読の言葉は、かなりおどろおどろしい......前衛的な作品だ。役者の1人もオフィーリアを思わせるが、白い衣装で現れる神原もオフィーリアなのだろう。言葉で表現するオフィーリアと踊りで表現するオフィーリア。神原は"白鳥"や"ジゼル"のような白のバレエ=バレエ・ブランの魅力に通じるような、そんな清らかさの中だからこその狂気を表現しようとしているように感じた。
ラスト第4部は神原の新作『Love&Passion』。末原雅広、市橋万樹、牧村直紀と踊れるダンサーたちと神原自身の4人で、高いバレエ技術があるからこその迫力のある踊り。市橋と神原のパ・ド・ドゥ部分は柔らかな魅力を見せ、メリハリ、緩急の効いた作品に仕上がっていた。
(2024年12月1日、名古屋市北文化小劇場)
『Love&Passion』
末原雅広、市橋万樹、牧村直紀、神原ゆかり
撮影:脇田博史(株式会社ミヤビフォトプランニング)
『Love&Passion』
末原雅広、市橋万樹、牧村直紀
撮影:脇田博史(株式会社ミヤビフォトプランニング)
『Love&Passion』市橋万樹、神原ゆかり
撮影:脇田博史(株式会社ミヤビフォトプランニング)
『Love&Passion』牧村直紀
撮影:脇田博史(株式会社ミヤビフォトプランニング)
『Love&Passion』末原雅広、市橋万樹、牧村直紀、神原ゆかり
撮影:脇田博史(株式会社ミヤビフォトプランニング)
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