"カンパニーでこぼこ"らしく気取らない岡田倖奈のシンデレラと脇塚優の王子を中心に──脇塚力振付『シンデレラ』

ワールドレポート/大阪・名古屋

すずな あつこ Text by Atsuko Suzuna

カンパニーでこぼこ

『シンデレラ』脇塚力:振付

初めて観る人にも親しみやすいバレエを、とスタートしたカンパニーでこぼこが、誰もが知っているお話ということで、本当は旗揚げでやりたかったという『シンデレラ』。だがプロコフィエフの素晴らしい音楽に加え、世界中のさまざまな演出を思うと、旗揚げ時は力不足と感じた主宰の脇塚力は、第6回公演で初演に取り組んだ。その時の王子役は脇塚力、15年を経た今回の王子は、彼の息子でローザンヌ国際バレエコンクール4位からヒューストン・バレエ、現在、イギリスのノーザン・バレエで活躍する脇塚優。ちなみに、現在のノーザン・バレエの芸術監督はフェデリコ・ボネッリで、昨年のディヴィット・ニクソン振付の『くるみ割り人形』ではソロで踊るとてもテクニカルなスペインに抜擢されるなど、良いチャンスを与えられて、良い指導も得、グングン成長している様子。

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シンデレラ:岡田倖奈 撮影:田中聡(テス大阪)

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王子:脇塚優 撮影:田中聡(テス大阪)

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継母:脇塚力、姉:今西胡桃、妹:藤岡麻友(ソワレ) 撮影:田中聡(テス大阪)

そして、今回の公演。カンパニーでこぼこの公演は、開演前から楽しめる工夫が用意されているのも良い。今回はチケットがA6サイズの招待状の形。観客が持つこれと同じものが、舞台上で舞踏会への招待状として使われる。舞踏会へとはしゃぐ意地悪な姉妹(松田えりか、福井友美)がシンデレラの招待状を破ってしまったり、夜に現れた魔法使い(増野佳恋)が、シンデレラに新しい招待状を手渡したり。観客が舞台とより近くなれる演出だ。他にもさまざまなオリジナリティーがある。物語の流れを重視し、四季の精は登場するけれど、1人ずつヴァリエーションを踊るなどということはなく、シンデレラが舞踏会へ向かうのを助ける。時計の踊りの中心で、時の神クロノス(矢木一帆)が迫力を持って踊るのも、"必ず時間を守らないと大変なことになる"緊迫感が伝わって良かった。また、舞踏会後に王子が、各国にシンデレラを探しに行く場面、オリエンタル(アラビア風)では、女性が王子の顔を見て「私好みじゃないわ」といったしぐさをする、これも楽しい。また、脇塚優がジャンプや回転といったバレエテクニックで格好良さを見せながら、そういったコミカルな場面で、ちょっと三枚目的に楽しませるのも関西人らしくて自然。
タイトルロール、岡田倖奈のシンデレラは飾らない魅力で、1幕の辛い暮らしの中でも、誰も恨まない、とても前向きでポジティブな女の子、そんな姿にとても好感が持てた。
(2024年7月21日マチネ 東リ いたみホール)

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継母:郷原信裕、姉:松田えりか、妹:福井友美 撮影:田中聡(テス大阪)

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王子:脇塚優 撮影:田中聡(テス大阪)

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オリエンタル:藤岡麻友、矢木一帆(マチネ) 撮影:田中聡(テス大阪)

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スペイン:今西歩、中嶋美晴、松本昭浩(マチネ) 撮影:田中聡(テス大阪)

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©魔法使い:増野佳恋(マチネ) 撮影:田中聡(テス大阪)

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