野間景&山本隆之主演により28年ぶり『みだれ髪...晶子賛歌』を再演した、野間バレエ団"Progressive Dance Part 9"

ワールドレポート/大阪・名古屋

すずな あつこ Text by Atsuko Suzuna

野間バレエ団"Progressive Dance Part 9"

『クラシカル・シンフォニー』、『みだれ髪...晶子賛歌』他 野間康子:振付、『Symphony for 6』『ボレロ・フェニーチェ』野間景:振付、『Wingless soul』正富黎:振付

振付や指導に専念していた野間景が9年ぶりに舞台に立った。28年前に野間康子の振付で、このバレエ団のある堺生まれの歌人与謝野晶子を描いた『みだれ髪...晶子賛歌』。その主役・晶子役を踊ったのだ。28年前の初演時は姉・野間彩がこの役を踊り、景は山川登美子役。今回の登美子役は藤本瑞紀。そして、なんと与謝野鉄幹役は初演時も今回も変わらず山本隆之。彩の指導、彩と景による改訂振付での再演となった。

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『みだれ髪...晶子賛歌』
与謝野晶子:野間景、与謝野鉄幹:山本隆之
撮影:文元克香(テス大阪)

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『みだれ髪...晶子賛歌』
与謝野晶子:野間景
撮影:古都栄二(テス大阪)

『みだれ髪...晶子賛歌』は、30分前後くらいかと思える中作品でプロローグとエピローグを含む6つの場面で構成されている。堺の浜辺で想いを馳せるところに始まり、鉄幹への恋、妻子ありながら晶子のみならず登美子も愛する鉄幹への晶子のどうしようもない感情から、斬新な歌を次々と詠み才能が開花していく様子。鉄幹との結婚、12人の子供を育てながら鬱となった鉄幹を支え続ける晶子。感情を抑えたような静かな表現だからこそ伝わるもの──日本人だからこそかと感じられるそんな表現を、これまでにも『ジゼル』等、さまざまな演目で観せてくれた野間景。これはまさに、そんな表現が必要な作品で、加えて、こんな壮絶な晶子の人生を踊るには、きっと、人生経験を積み重ねた今が良かったのだろう、そう実感する仕上がりだった。
他にもさまざまな作品が上演された公演。幕開けの『クラシカル・シンフォニー』は野間康子がプロコフィエフの音楽に振付けて日本バレエ協会主催第22回夏季定期公演で振付賞を受賞した作品で、アシンメトリーな部分が組み込まれていたり、今も観ても色褪せない振付。また、この団体出身でチェコのモラビアン・シレジアン劇場で活躍する正富黎振付の『Wingless soul』は、平和とは言えない現在の世界の情勢を見ながら、プッチーニの『蝶々夫人』の音楽を使って「叶わぬ想い」を表したという作品で、水速飛鳥と後藤俊星が自然さを持った踊りで惹き込んだ。野間景がショスタコーヴィチの曲に振付けた『Symphony for 6』は、花井美夢と今井大輔を中心に6人で。それに、やはり景が振付けたラヴェルの音楽での『ボレロ・フェニーチェ』。この中心のフェニーチェ(不死鳥)は水速飛鳥が踊ったのだが、中背と思える彼女が、存在感と独特の雰囲気、魅力で、とても大きく見えてきた。クリアな意志を強く突きつけるような、良いダンサーだとあらためて思った。

ラストは、小野絢子と水城卓哉が『ロミオとジュリエット』よりバルコニーのパ・ド・ドゥを野間康子振付の版で。小野のジュリエットは繊細で、一瞬一瞬の想いが手に取るように、観る者の胸に飛び込んでくる。ロミオの水城も優しげな表情でそんな彼女に呼応しながら恋心がどんどん膨らむのが伝わってきた。見どころが詰まった舞台だった。
(2024年8月16日 フェニーチェ堺大ホール)

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『みだれ髪...晶子賛歌』
与謝野晶子:野間景、与謝野鉄幹:山本隆之
撮影:古都栄二(テス大阪)

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『みだれ髪...晶子賛歌』
与謝野晶子:野間景、与謝野鉄幹:山本隆之
撮影:古都栄二(テス大阪)

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『Wingless soul』
水速飛鳥、後藤俊星
撮影:古都栄二(テス大阪)

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『Symphony for 6』
花井美夢、今井大輔、浅井莉香、今井ひな子、中井絢加、前田実里
撮影:文元克香(テス大阪)

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『ボレロ・フェニーチェ』
撮影:古都栄二(テス大阪)

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『ロミオとジュリエット』よりバルコニーのパ・ド・ドゥ
小野絢子、水城卓哉
撮影:古都栄二(テス大阪)

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