法村圭緒がアントレを加えた新振付での『パキータ』よりグラン・パとゾベイダ&金の奴隷を堤本麻起子&厚地康雄が踊った『シェヘラザード』

ワールドレポート/大阪・名古屋

すずな あつこ Text by Atsuko Suzuna

法村友井バレエ団

『パキータ』よりグラン・パ 法村圭緒:改訂振付、『シェヘラザード』法村牧緒:演出、杉山聡美:振付

法村友井バレエ団の初夏の公演はダブルビル。
まずはじめに上演されたのは、『パキータ』よりグラン・パ。ロシアのプティパ版をよく知る法村圭緒が、今回、新たにアントレを加えての上演となった。アントレは男女5カップルによるクラシック・バレエの魅力が感じられるもので、その後に繰り広げられる踊りとのトーンも合っていた。
パキータ&ルシアンを踊ったのは、佐野光里&西岡憲吾。華やかな笑顔で芯の強さを感じさせる佐野、精悍で男らしく、さわやかさも感じさせた西岡、ともに魅力的な踊り。また、コール・ド・バレエがとても楽しげで、顔の方向含めて動きの角度もピッタリで、軽快だったのも気持良かった。パ・ド・トロワの3人、荻野あゆ子、村上萌実、池田健人も、それぞれの個性が活きて好感が持てたし、ソリストヴァリエーションも実力派揃いだった。

DSC_2696.jpg

『パキータ』よりグラン・パ オープニング
撮影:尾鼻文雄(Office Obana)

DSC_7513.jpg

『パキータ』よりグラン・パ
パ・ド・トロワ:荻野あゆ子、村上萌実、池田健人
撮影:尾鼻文雄(Office Obana)

DSC_7902.jpg

『パキータ』よりグラン・パ
ルシアン:西岡憲吾
撮影:尾鼻文雄(Office Obana)

DSC_7845.jpg

『パキータ』よりグラン・パ
パキータ:佐野光里
撮影:尾鼻文雄(Office Obana)

DSC_7990.jpg

『シェヘラザード』
ゾベイダ:堤本麻起子、シャリアール王:今村泰典
撮影:尾鼻文雄(Office Obana)

後半の『シェヘラザード』は、このバレエ団だからこその魅力が詰まった作品。法村牧緒の演出のもと杉山聡美が振付を担っての上演。ミハイル・フォーキン版を忠実に受け継いだワジム・シローチンから直接指導を受け、2006年、2011年とゾベイダを踊って来た堤本麻起子が今回もゾベイダ。舞台上ではない、例えば劇場ロビーでなどで、ふとすれ違っても、ハッと目を引く美人である堤本。清らかさも持ったその姿に、以前の公演では、動きの美しさには惹かれつつも「この人にはもっと清らかな役が似合うのでは?」という気持がぬぐい切れなかった。今も、もちろん、輝くように美しい、さらに大人の美しさも増したとも思える。
けれど、今回は以前よりも、深みのある心のあやのようなものが見える気がした。シャリアール王(今村泰典)を愛しているのは本当、けれど、金の奴隷(厚地康雄)に愛の炎を燃やすのも本当ーーそういったことの真実味。まださらにと期待したい思いもあるけれど。
金の奴隷の厚地は、素晴らしいバレエテクニックと美しい身体のラインで、最上の女が惹かれる存在を体現、2人のパ・ド・ドゥはとても美しかった。
今村のシャリアール王の、堂々としながら、押さえた演技も良かったし、奥田慎也の宦官オニックも良い味を出していた。オダリスクをベテランの実力派3人、坂田麻由美、中内綾美、法村珠里だったのも見応えがあった。
(2024年6月2日 あましんアルカイックホール)

DSC_8094.jpg

『シェヘラザード』ゾベイダ:堤本麻起子
撮影:尾鼻文雄(Office Obana)

DSC_8163.jpg

『シェヘラザード』宦官オニック:奥田慎也
撮影:尾鼻文雄(Office Obana)

DSC_2771.jpg

『シェヘラザード』シャリアール王:今村泰典
撮影:尾鼻文雄(Office Obana)

DSC_8397.jpg

『シェヘラザード』ゾベイダ:堤本麻起子、金の奴隷:厚地康雄
撮影:尾鼻文雄(Office Obana)

DSC_8257.jpg

『シェヘラザード』ゾベイダ:堤本麻起子、金の奴隷:厚地康雄
撮影:尾鼻文雄(Office Obana)

記事の文章および具体的内容を無断で使用することを禁じます。

ページの先頭へ戻る