深川秀夫と親交の深かった一流ダンサー、音楽家、スタッフが集結し『深川秀夫バレエの世界』~オーケストラの調べと共に~が開催される
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ワールドレポート/大阪・名古屋
すずな あつこ Text by Atsuko Suzuna
1969年のモスクワ国際コンクール銀賞&ニジンスキー賞、翌年にはヴァルナ国際バレエコンクールで金賞なしの銀賞に輝き、東ベルリンのコーミッシュ・オペラを経て、シュツットガルト・バレエに入団、ジョン・クランコのもとで踊った深川秀夫。その後、ミュンヘンのバイエルン国立歌劇場でも活躍し、1980年に日本帰国を決意。その後、日本で、踊り、振付、指導してきた。
卓越した才能を持ったダンサーが素晴らしい振付家でもあるという例は意外と少ないように思うけれど、深川は確実にそんな1人だろう。帰国後、コロナ禍のなかで亡くなる2020年まで、多くの作品を創り、指導してきた。その作品の数々は、今も様々なバレエ団体で上演されている。
そんな彼の作品群を、できる限り正確に、その魅力を伝えて行きたいと、彼の死後間もなく設立された「Fukagawa Ballett Welt」と指揮者の守山俊吾の提案によって企画されたこの公演。深川のオリジナル作品を、生のオーケストラに乗せて、東西のダンサーが集い、踊る、とても贅沢な舞台となりそうだ。
「深川秀夫 バレエの世界」リハーサル風景
レペティトワ:太田由利、大寺資二
ダンサー:上山榛名、春木友里沙、水城卓哉、今井大輔
撮影:岡村昌夫(テス大阪)
「深川秀夫 バレエの世界」リハーサル風景
ダンサー:上山榛名、春木友里沙、水城卓哉、今井大輔
撮影:岡村昌夫(テス大阪)
出演は、中村祥子、厚地康雄、米沢唯、速水渉吾、池田理沙子、渡邊峻郁、上山榛名、水城卓哉、春木友里沙、今井大輔、青山季可といった日本を代表するダンサー達。
演目も深川独自の魅力が楽しめそうな『ソワレ・ド・バレエ』『顔のない女』『レ・ゼトワール』『ラフマニノフ・コンチェルト』『新たなる道へ』『ディ・フェーダー』と6演目が予定されている。ちなみに、深川のこういったオリジナル演目は、生前、録音上演で、ほとんど生演奏で上演されたことがないので、今回は、そういった意味でも貴重な公演となる。
会場である吹田メイシアターで行われたインタビュー会でお話を聞いた。
指揮の守山俊吾は、阪神・淡路大震災まで行われていた「宝塚バレエ」」で実行委員長として、深川作品に関わったという。その時は、もちろん生演奏だったが、「他では録音で上演されることの多い深川作品を、自然な音楽で観ていただきたい」。その守山の深川のテンポの取り方についての話を継いでくれたのは、レペティトアの太田由利。深川の帰国直後から、多くの作品を踊って来たプリマだ。「テンポが凄く大事なんです。1、2、3、1、2、3というワルツのリズムでも、ダンサーは1、2、3、では動いていない。(前の拍からの息づかいと強弱と理解すれば良いだろうか)、でも、最終的には合って来るんです」
同じくレペティトアの大寺資二は、「踊る楽しさ、客席と一緒になる喜び」を伝えたいと話す。もちろん、厳しさもあるわけだが、だからこそ。そして「団結」。深川はよくこの言葉を口にし、いろいろな団体から集ったダンサーたちによる公演だった時にも、その時は「深川バレエ団」と話したという。
『深川秀夫の世界』を継承する会の深川知巳は「亡くなってすぐから、皆さんが『秀夫先生のために何かしたい』と集まってくださって感謝にたえません」、今回の公演も本当にありがたいと話す。
「深川秀夫 バレエの世界」リハーサル風景
ダンサー:上山榛名、春木友里沙、水城卓哉、今井大輔
撮影:岡村昌夫(テス大阪)
「深川秀夫 バレエの世界」インタビュー会にて
(前列左から)
水城卓哉、上山榛名、大寺資二、深川知巳(『深川秀夫の世界』を継承する会)、守山俊吾(指揮)、太田由利、春木友里沙、今井大輔
(後列左から)
澤田友子(制作)、藤森秀彦(公演統括)、日和香(吹田市文化振興事業団)
撮影:岡村昌夫(テス大阪)
ダンサー達にも聞いた。
水城卓哉は、深川作品を踊るのは2回目、「難しいことをしていても自然、そして"香り"が漂う」のが魅力と話す。上山榛名は、今回はじめて深川作品を踊る。「観ていると音楽に乗って流動的なのに、踊ってみると難しい」と、これから磨いて行きたい様子。今井大輔は、深川作品は2回目だが「以前も亡くなられた後だったので、直接、お会いしたことはありません。カウントではなくて、その前の呼吸からとか、いろいろ考えてしまうところですが、考えすぎるより、とにかく音を聞いてと思っています」。春木友里沙は「凄く難しくて、音に追われて、わちゃわちゃしたりしてしまっていますが、これから無駄なものをそぎ落として、クリーンな綺麗なものに仕上げていきたいと思います」と話してくれた。
公演統括は長年、深川作品の舞台監督として活躍して来た藤森秀彦。「現在の日本で、亡くなってからも、その振付家の作品を継承していきたいと、『継承する会』が出来るといった例はほとんどないのではないでしょうか。今回は日本のスターが集う公演、秀夫先生は昔からスターだったけれど、この公演で、もう一度輝く星になるのでは」と話してくれた。また、リハーサルを見ていても、今回のダンサー達ののレベルの高さに感嘆しているという。
主催者である吹田市文化振興事業団の日和香からは、深川が昔から、今回の会場である吹田メイシアターでの川上恵子バレエ(今回出演の青山季可の出身団体)の公演で訪れていた思い出に触れるとともに、公演前日の8月31日(土)と当日の9月1日、館内の展示室で、関連展示が行われることも紹介。深川の衣装や賞状、振付ノートなどが展示される予定で入場無料ということ。
また、制作を担う澤田友子からは、チケットの売れ行きが好調で、チケットを購入できなかった方や遠方の方のために、インターネット配信の準備を進めているということだった。
「深川秀夫 バレエの世界」リハーサル風景
ダンサー:上山榛名、春木友里沙、水城卓哉、今井大輔 撮影:岡村昌夫(テス大阪)
2024年9月1日(日)17:00開演 16:15開場
吹田メイシアター 大ホール
詳細は https://maytheater.jp/series/2409/0901_ballet.html
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