『白鳥の湖』第4幕を川口節子が大胆にアレンジした『SWAN LAKE』を中心に個性あふれる小作品も

ワールドレポート/大阪・名古屋

すずな あつこ Text by Atsuko Suzuna

バレエ協会中部支部 第44回中部バレエフェスティバル

『SWAN LAKE』川口節子:振付ほか

まず、第1部では8つの団体、それぞれの持ち味を活かした作品が披露された。いくつかをピックアップして紹介したい。

幕開けはアカデミー国枝バレエの『キャンディ・ボックス』。国枝真才恵がショスタコービッチの曲に振付けて、おもちゃ箱のようなキャンディ・ボックス?、可愛らしくカラフルな1人ひとり、さまざまな形の衣装を身につけての楽しい踊り。続いては幸田バレエ教室の『仮面舞踏会』。アラム・ハチャトゥリアンの曲に幸田空が振付けて、本人含む踊れる年代のダンサー10人が表情でも惹きこんだ。

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『キャンディ・ボックス』アカデミー国枝バレエ 撮影:和光写真

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『仮面舞踏会』幸田バレエ教室 撮影:和光写真

佐々智恵子バレエ団の『ウィーンの森の妖精たち』は、ヨハン・シュトラウス2世の曲に尾上千洋が振付。中心の少女を踊った大塚志音の丁寧な踊りに好感が持てた。岡田純奈バレエ団の『Carmen Suite』は、主役を重ねている石黒優美の存在感たっぷりの表情が印象的。他にも、それぞれ工夫を凝らした作品が上演された。

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『ウィーンの森の妖精たち』佐々智恵子バレエ団
少女:大塚志音 撮影:和光写真

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『Carmen Suite』岡田純奈バレエ団
石黒優美、ほか 撮影:和光写真

第2部は所属団体が力を合わせての川口節子振付『SWAN LAKE』。クラシック・バレエの名作『白鳥の湖』の第4幕、終幕の場面で、チャイコフスキーの音楽もストーリーもそれに準じている。だが、まったく新しい振付。クラシックの動きも取り入れつつのコンテンポラリーだ。
舞踏会で王子がオディールに愛を誓ってしまった後、失意のオデット姫(幸田空)が湖畔に戻ってくるところから始まる。ロングヘアをなびかせて、仲間のもとに戻ってきたオデット姫、そこに、間違いに気づいたジークフリート王子(浅井敬行)が追ってくる。オデット姫に詫びる王子、だが、なんと、いくら王子が謝っても、オデット姫は許さない。すがられても突き飛ばして逆を向く、何度もすがりつき、振りほどかれる王子━━現代のカップルの喧嘩を見ているようだ。だが、いや、本当に、あんな間違いを起こされたら怒って当然。バレエの世界では、オデットもジゼルも赦すけれど、まぁ、最終的に赦すにしても一旦は、これくらい怒った方がスッキリする気がしてくる。 そして、ロットバルト(長谷川元志)がまた凄い迫力。終盤、追い詰められて、羽が落ちてしまうのだが、それで素っ裸(実際はベージュのものを身につけているが)になってしまうのには呆気に取られた。だが、それを踊るロットバルトの長谷川の踊りがきちんとしたバレエに基づいているから、決してドタバタコメディーにはならない。オデット姫の幸田、ジークフリート王子の浅井も、しかり。加えて、コール・ド・バレエの隅々まで、この川口作品の世界観をしっかりと表す踊りで、本当に見応えのある作品に仕上がっていた。
(2024年3月17日 Niterra日本特殊陶業市民会館ビレッジホール)

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『SWAN LAKE』
オデット姫:幸田空、ジークフリート王子:浅井敬行 撮影:和光写真

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『SWAN LAKE』
ロッドバルト:長谷川元志 撮影:和光写真

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『SWAN LAKE』オデット姫:幸田空 撮影:和光写真

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『SWAN LAKE』 撮影:和光写真

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