ワールドレポート／大阪・名古屋

すずな あつこ　Text by Atsuko Suzuna

こうべ全国洋舞コンクールが、今年もGW後半の5月3日〜6日の4日間、神戸文化ホールの大ホールと中ホール、2つのホールを会場に行われた。37年と関西ではもっとも長い歴史を持ち、全国的に見てもレベルの高い参加者が集うコンクール。このコンクールから世界に羽ばたいたダンサーは数えきれず、直近では、昨年のアメリカ、ジャクソン国際コンクールで金賞に輝いた徳彩也子と佐々木嶺。2人は、それぞれ昨年と一昨年のシニア部門1位獲得者で、今、アメリカで活躍し始めている。
老舗とも言えるコンクールだが、よりよくする工夫も重ねられており、今年は審査だけでなく予選日にワークショップも行われた。そんななか、今回、特に残念だったのは、創作部門のエントリーがゼロだったこと。このコンクールでは、ソロではなく複数で踊る部門が2つあり、振付が評価される創作部門に対して、踊りが評価されるグループ部門というものがあり、こちらは5組のエントリーがあった。だが、それでも少ない。日本固有かと思える事情として、「現代舞踊」に取り組んできた流れと「コンテンポラリー」として取り組んできた流れで、評価基準が違ってくるように感じられること。それが出場しにくいと感じさせる一端になっているかもしれない。
とはいえ、グループ部門で優秀賞を獲得した阪本佳奈代表の『紡ぎあう先に』（茨城・Yuko-D-Academy【K.M.D.I付属】）は、2人の女性の関係を軸に、10人でのダンサーがストーリーを表現、身体能力も高く見応えのある作品に仕上がっていた。

表彰式後にインタビュールームに来てくれた1位受賞者の声も混じえながら、結果をレポートしたい。

まず、第31回から分けられたクラシック女性ジュニア3部（10歳〜11歳）とモダンダンスジュニア3部（8歳〜11歳）。
クラシック女性ジュニア3部（10歳～11歳）1位は、青木優奈（大阪・佐藤由子バレエスタジオ）。『眠れる森の美女』よりフロリナ王女のヴァリエーションを華のある笑顔、活発な魅力で踊った。「将来はバレエ・ダンサーになりたい。大好きなのはアリーナ・コジョカルさん！」と話してくれた。
モダンダンスジュニア3部（8歳～11歳）1位は、赤坂向日葵（岩手・金田尚子舞踊研究所）。金田が彼女のためにアニメ『紅の豚』にも出てくるシャンソンに振り付けた『思い出は風と共に』を踊った。「4歳からダンスをしてきて踊るのが大好き」という小学6年生だ。初めての出場ということ、これからの成長が楽しみ。

クラシック女性ジュニア2部1位は中田沙綾（愛知・森高子バレエ教室）。『海賊よりヴァリエーション』を、いろいろな色を使った個性的なセパレートのチュチュ、タイツを履かない足にトゥ・シューズで、野性的な魅力を見せて伸び伸びと踊った。顔が小さく長い手足に健康的な雰囲気が独特で良い。「観客が笑顔になる踊りがしたい」と話す。
クラシック男性ジュニア2部1位は、木原琥珀（京都・スコレーバレエアート）。12歳という年齢、小さな体で、『タリスマン』よりヴァリエーションを子供らしい笑顔を見せながら、次々と高テクニックをこなして踊った。先日のYAGP（ユース・アメリカ・グランプリ）NY決戦にも出場、コンテンポラリーで2位に輝き、クラシックもトップ20、ベルリン国立バレエ学校への留学が決まっている。「なかなかできない時は苦しいこともあるけれど、舞台に出たら楽しくて！　日本でも、海外でも、活躍できるダンサーになりたい」。

クラシック女性ジュニア1部1位は宮入眞愛（兵庫・Variation Ballet School）。『エスメラルダ』よりヴァリエーション、ジプシーらしく観客を惹きつけるシーンだ。こんなジプシーが目の前で踊っていたら虜になってしまうと思わせる楽しげで踊り心が溢れる仕上がり。今、15歳、高校1年生。「将来はバレエダンサーになりたい。昨年、オーストラリアに留学して良い学びができたので、これからの留学についても考えているところ」ということ。
クラシック男性ジュニア1部1位は水沼翔輝（大阪・Bright Ballet Studio）。空中で開いた脚の形、アラセゴン・トゥールもとても美しい。そして、技術だけではない惹きつけるものを感じさせるダンサーだ。17歳、高校3年生、物心ついた頃から母・小浜千亜輝さんのもとでバレエを学んできた。「何回も辞めたいと思ったけど、戻って来た。バレエしかないから。結局、バレエが好き」。高校卒業後の道もバレエ、という彼。良い作品の上演を重ねるバレエ団に所属して貴重な学びを重ねる、そんな、さらなる成長をと心から願う。

モダンダンスシニア1位は板橋玲奈（埼玉・伊東みどり・由里ダンスパレット）。さまざまなコンクールで上位入賞を果たしている『SWAN-最後の羽音-』を踊った。日本女子体育大学ダンス学科で学ぶ21歳。ますますの活躍を期待したい。
クラシックシニア女子1位は小森世楽（大阪・有紀バレエスタジオ）。手脚の長い恵まれたスタイルで飾らず、技術も達者で楽しげに『サタネラ』よりヴァリエーションを踊った。ノーザン・バレエで活躍する白井沙恵佳などを排出する有紀バレエスタジオで、幼い頃から森田有紀に学び、ジョン・クランコ・バレエスクール留学でも学びを重ねた19歳。今後、さらに花開きそうな楽しみな存在だ。
クラシックシニア男子1位は小森慶介（兵庫・貞松・浜田バレエ団）。『海賊』よりアリのヴァリエーションを幸せを感じさせる笑顔をたたえて踊った。特にジュテ・アントールナンは、他の出場者より更に一回り大きいかと思える円を描いての軽くて大きなジャンプ、見ていてとても気持ちの良い踊りだった。既に貞松・浜田バレエ団で主要な役の数々を踊っている彼。今後、さらに活躍の場が広がるような気がする。

順位詳細は下記、神戸新聞HP「神戸新聞NEXT」に。
https://www.kobe-np.co.jp/info/youbu/2024/

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