上野水香、倉永美沙、中村祥子、近藤亜香を迎えて華やかに開催された、グラン・ドリーム・バレエ・フェス 2023

ワールドレポート/名古屋

関口 紘一 Text by Koichi Sekiguchi

グラン・ドリーム・バレエ・フェス 2023 松岡伶子:芸術監督

『パキータ』松岡璃映、市橋万樹:振付、『L'Air d' Esprit』ジェラルド・アルビノ:振付、『ライモンダ』3幕より 梶田眞嗣:振付、『ラ・バヤデール』2幕より 徳山博士:振付

上野水香(東京バレエ団ゲスト・プリンシパル)、倉永美沙(サンフランシスコ・バレエ団プリンシパル)中村祥子(K-BALLET TOKYO名誉プリンシパル)近藤亜香(オーストラリ・バレエ団プリンシパル)という世界の舞台で活躍している日本人バレリーナ4名を招いて、東海地方中心のオーディションにより選ばれたダンサーたちか踊るグラン・ドリーム・バレエ・フェス 2023が、東海テレビ放送開局65週年記念公演として昨年に続いて開催された。パートナーの男性ダンサーは、厚地康雄(元バーミンガム・ロイヤル・バレエ団プリンシパル)、中野吉章(ピッツバーグ バレエシアター プリンシパル)、今井大輔(法村友井バレエ団)、青木崇(大阪バレエ カンパニー)で、ガラ公演に相応しい精鋭のダンサーたちだった。

ファンファーレが鳴り渡り、4組のペア(上野・厚地、倉永・中野、中村・今井、近藤・青木)にスポットが当てられて幕が開けられ、会場は大きな期待が高まって喝采に包まれた。
まず、『パキータ』(松岡璃映、市村万樹:振付)は赤い帽子と赤いマントが可愛い男の子たちと愛らしい女の子たちの行進から始まり、上野水香と厚地康雄が踊った。上野水香は大きなくっきりとしたステップで堂々とした踊りを見せ、勢いのあるグランフェッテも観客を大いに湧かせた。厚地康雄もしなやかに踊って応える。パ・ド・トロワ(岩田明里咲、澤村結愛、竹中俊輔)と5つのヴァリエーションのソリストもしっかりと華やかに踊り、オープニングとしては申し分ない特別な雰囲気が溢れた。音楽と親和しているシーンは特に美しく目を奪われる。全体に『パキータ』らしい弾むようなステップの連続により、観客と一体化した良い舞台だった。

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「パキータ」©Kazuma Sugihara

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「パキータ」上野水香、厚地康雄
Kazuma Sugihara

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「パキータ」©Kazuma Sugihara

『L'Air d' Esprit(レール・デスプリ)』よりグラン・パ・ド・ドゥ(ジェラルド・アルビノ:振付)は、倉永美沙と中野吉章。アルビノは周知のようにロバート・ジョフリートとともにジョフリー・バレエの運営者であり、プリンシパル・ダンサーであり振付家でもあった。『L'Air d' Esprit』は、1910年代にマリインスキー劇場で踊り名声を確立した後も、ディアギレフのバレエ団、パリ・オペラ座ほか世界中で踊り、不世出のジゼルの踊り手と称えられたオリガ・スペシフツェワへのオマージュとして振付けられている。倉永美沙がロマンチック・バレエのテクニックの精髄を表し、その美しさを讃えるさまざまな造型をみせた。中野もとても魅力的なダンサーであり、ジゼルの踊りの魂を舞台上に可視化するかのようなパ・ド・ドゥだった。

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「L'Air d'Esprit」倉永美沙、中野吉章
©Kazuma Sugihara

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「L'Air d'Esprit」©Kazuma Sugihara

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「L'Air d'Esprit」©Kazuma Sugihara

『ライモンダ』3幕より(梶田眞嗣:振付)は中村祥子のライモンダと今井大輔のジャン・ド・ブリエンヌ。ナショナリズムを鼓舞し高揚する音楽と民族舞踊を採り入れた色彩豊かな踊りが、巧みに構成され観客の胸に響く。女性の高貴なプライドの美しさを讃歌した踊りだ。中村祥子は長身のスタイルの良さを生かした情感豊かな踊り。今井大輔も安定した踊りで華やかな舞台を作った。

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「ライモンダ」中村祥子、今井大輔
©Kazuma Sugihara

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「ライモンダ」中村祥子、今井大輔
©Kazuma Sugihara

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「ライモンダ」©Kazuma Sugihara

『ラ・バヤデール』2幕より(徳山博士:振付)は名古屋市出身の近藤亜香と青木崇。近藤は初見だったが、じつに滑らかで柔らかいラインを描く。過剰な表現が見られない。無駄な力がまったく入っていないのだろう。ガムザッティの品の良さが輝くようにごく自然に現れていた。ブノア賞にノミネートされたのも頷ける舞台姿だった。群舞も頑張っており、壺を頭に乗せたトロワ(伊藤有紗、石井心乃音、江間菜々子)や太鼓の踊り、ブロンズ像の踊り(市橋万樹)などディヴェルティスマンも楽しかった。
カンパニーを中心に据えた公演ではなく、リハーサルの調整も難しかったのではないか、と推察するがそれぞれの作品に振付家をつけてしっかりと整え、全体的にまとまりのある公演だった。
(2023年10月8日 愛知県芸術劇場 大ホール)

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©「ラ・バヤデール」近藤亜香、青木崇
©Kazuma Sugihara

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「ラ・バヤデール」近藤亜香、青木崇
©Kazuma Sugihara

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「ラ・バヤデール」近藤亜香、青木崇 ©Kazuma Sugihara

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カーテンコール © Kazuma Sugihara

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