ウクライナ出身のマラーホフとウクライナから避難したバレリーナとともに──「マラーホフより愛をこめて'23」
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ワールドレポート/大阪・名古屋
すずな あつこ Text by Atsuko Suzuna
針山愛美プロデュース公演
『パキータ』ウラジーミル・マラーホフ:振付、『はじまりの鼓動〜舞〜』『ジュピター』針山愛美:振付、『IZANAI』『I'm you』宝満直也:振付,『ゴパック』カテリーナ・エフチコーワ:振付 ほか
ウラジーミル・マラーホフがベルリン国立バレエの芸術監督だった頃にダンサーとしてともに仕事をした針山愛美。現在は、世界を飛び回りながらも日本に活動の拠点を置く針山がマラーホフを招いての公演だ。マラーホフもウクライナ人だが、ウクライナ侵攻で針山のもとに避難している元リビウ国立バレエのスヴェトラーナ・シュリヒテルとネリア・イワノワも出演しての舞台となった。
『パキータ』パキータ:久保本美咲、リュシアン:クリスタップス・リンテンシュ
© ステージグラフィカ
幕開けはマラーホフ版『パキータ』のハイライト。マラーホフ版の特徴はパ・ド・トロワではなく、パ・ド・カトルになっている部分をシュリヒテルとイワノワ、初々しい魅力の佐藤伊織とベラルーシ国立バレエで踊っていて帰国した実力派、倉智太朗が楽しませてくれた。そしてリュシアンのクリスタップス・リンテンシュをパートナーに主役パキータを踊ったのは久保本美咲。彼女は、今、見る度にダンサーとして成長しているように感じられる。長身を活かし大人のレディらしい気品を持って柔らかく、程よい脱力感がまた良い。
続く『くるみ割り人形』は、マラーホフが狂言回し的なドロッセルマイヤーだった。太鼓奏者の上田秀一郎とともに観せたのは、宝満直也振付で日本の国生み神話を描いた『IZANAI』と針山振付の『はじまりの鼓動〜舞〜』。マラーホフ&針山のイザナギ&イザナミは、さすがにプロの表現力。『はじまりの鼓動〜舞〜』では、太鼓とともに群舞の迫力を楽しんだ。
ウクライナ民謡の『ゴパック』を観ながら、一日も早くウクライナが平和になることを祈り、針山とマラーホフが踊った宝満振付『I'm you』に男女の機微を感じた。ラストは『ジュピター』組曲「惑星」より。ヴァイオリン、チェロ、フルートのスペシャルジュニアアンサンブルの演奏とともに、針山の振付で、世界中、いや、それ以上、宇宙中──の平和を望みながら幕を閉じた。
(2023年10月14日 豊中市立文化芸術センター大ホール)
『IZANAI』針山愛美、ウラジーミル・マラーホフ
© ステージグラフィカ
『IZANAI』針山愛美、ウラジーミル・マラーホフ
© ステージグラフィカ
『はじまりの鼓動〜舞〜』針山愛美、倉智太朗、クリスタップス・リンテンシュ
© ステージグラフィカ
『はじまりの鼓動〜舞〜』
© ステージグラフィカ
『ゴパック』
© ステージグラフィカ
『I'm you』ピアノソナタ「月光」より
針山愛美、ウラジーミル・マラーホフ
© ステージグラフィカ
カーテンコール ウラジーミル・マラーホフを中心に © ステージグラフィカ
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