このスタジオで育った福岡雄大、石川真理子、福田圭吾ら中心に大迫力の矢上恵子振付『Toi Toi』など──K★バレエスタジオ

ワールドレポート/大阪・名古屋

すずな あつこ Text by Atsuko Suzuna

K★バレエスタジオ 37th Concert

『Toi Toi』『FROZEN EYES[凍りついた眼]』矢上恵子:振付、『タランテラ』矢上香織:振付、『レ・パティヌール(スケートをする人々)』矢上久留美:振付

矢上香織、久留美、恵子の3姉妹が立ち上げたK★バレエスタジオ。ここから、山本隆之、福岡雄大、福田圭吾、福田紘也といった優れたダンサー、振付家が続々と育っているのは皆さんご存じだろう。今、とても残念なことに香織、恵子が相次いでこの世を去ってしまったが、久留美のもとで、その作品は受け継がれ、優れたダンサー達の出演で上演された。

幕開けは、香織振付、再振付を黒瀬美紀が担っての群舞『タランテラ』を軽快に。『コッペリア』第3幕よりグラン・パ・ド・ドゥは長谷川梨央と福田圭吾。福田の優しげなフランツをパートナーに、一つ一つのパを大切に踊る長谷川のスワニルダが好印象。そして2人ともが一流のダンサーであることをつくづく感じたのは渡辺恭子と福岡雄大による『ジゼル』第2幕よりパ・ド・ドゥ。やわらかくすべての動きが繋がるような渡辺のジゼルはフランスメソッドを学んだ人だからこそ、と実感。そして福岡のスケールが大きく想いがほとばしるアルブレヒト。スターダンサーズ・バレエ団と新国立劇場バレエ団、それぞれを代表するこの2人が組んで踊るのは珍しいのではないかと思うが、このスタジオ出身の福岡と、渡辺が今年、福田紘也と結婚したという縁がきっかけの様子。素晴らしいものを観ることができて嬉しい。

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『コッペリア』第3幕よりグラン・パ・ド・ドゥ
長谷川梨央、福田圭吾 撮影:岡村昌夫(テス大阪)

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『ジゼル』第2幕よりパ・ド・ドゥ
渡辺恭子、福岡雄大 撮影:岡村昌夫(テス大阪)

続いては、この6月のジャクソン国際バレエコンクールで2人ともが金賞を受賞して話題になった徳彩也子と佐々木嶺の『FROZEN EYES[凍りついた眼]』。恵子振付のこの作品を2人はコンクールのセミファイナルで踊った。ガラスが割れるように心が壊れ凍りついた眼になったた女の子──『薔薇の精』で聴き慣れたウェーバーの「舞踏への招待」に乗せての作品に入り込み、メリハリを持った2人の踊り。この踊りが受賞に寄与したことは間違いないと思える。ちなみにこの2人は、10月4日、京都に移転した文化庁で、この庁舎で初の授賞式という文化庁長官表彰を受けた。

久留美振付の『レ・パティヌール(スケートをする人々)』は、ベテラン山本隆之から若手までがそれぞれのパートを。女性もだが、美濃大和、井上あるもといったこれから伸びそうな若手男性がまた現れているのも嬉しい。

そして最後は、恵子振付『Toi Toi』、この上演直前、激しい夕立に雷。矢上恵子が亡くなったと病院から連絡があった時もこんな激しい雷だったという。「恵子先生が来たんだ」とダンサー達。石川真理子と福岡雄大の目が離せないキレのある踊り、福田圭吾、惠谷彰、佐々木嶺を筆頭に群舞も、霊をあの世から呼んでつかまえて離さないような迫力。
こんな素晴らしい矢上恵子作品を、いつまでも引き継いで行って欲しいと心から思う。
(2023年9月10日 東大阪市文化創造館大ホール)

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『FROZEN EYES[凍りついた眼]』
徳彩也子、佐々木嶺 撮影:岡村昌夫(テス大阪)

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『レ・パティヌール(スケートをする人々)』より
長谷川梨央、山本隆之 撮影:岡村昌夫(テス大阪)

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『Toi Toi』石川真理子、福岡雄大 撮影:岡村昌夫(テス大阪)

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『Toi Toi』 撮影:岡村昌夫(テス大阪)

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『Toi Toi』 撮影:岡村昌夫(テス大阪)

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フィナーレ 撮影:岡村昌夫(テス大阪)

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