二山治雄の『薔薇の精』から今年のファイナリスト、齋藤杏の『フローラの目覚め』まで── ローザンヌ国際バレエコンクール出場者達の祭典

ワールドレポート/大阪・名古屋

すずな あつこ Text by Atsuko Suzuna

Dance at the Gathering2023

西尾智子:プロデュース
法村牧緒:芸術監督

昨秋には、ローザンヌ国際バレエコンクールの日本で初めての予選(1989年の東京大会は予選ではなく本大会)が行われたことが記憶に新しい。その主催でもあったダンスウエストが例年行っている「Dance at the Gathering」 。

東條裕子振付で6人のダンサーによって踊られた『ヴァイオリンミューズ』で幕を開け、続いては、上記の予選で選ばれて今年のスイスでの本大会で出場、ファイナリストになった齋藤杏の『フローラの目覚め』より』フローラのヴァリエーション。日本予選の際にも強く印象に残った彼女、素直で柔らかい動き、自然な雰囲気で惹きつけられるダンサーの卵。ハンブルク・バレエスクールに留学予定だそうだが、これからがとても楽しみだ。
海外で活躍するダンサーによる日本ではあまり観られない演目を観られたのも嬉しいところ。ポーランド国立バレエの岡野祐女、北井僚太による『ロミオとジュリエット』より バルコニーのパ・ド・ドゥは、クリストフ・パストール版。伸びやかで自然な踊りが心地よかった。また、吉田合々香、JOEL WOELLNERが踊った『真夏の夜の夢』は日本初演。心が溶け合うようなパ・ド・ドゥ。ニュージーランドのクイーンズランド・バレエ団プリンシパルの2人。リアム・スカーレット振付だろうか、独特の動きが興味深い。
イングリッシュナショナル・バレエ団の加瀬栞と仲秋連太郎の『ライモンダ』はタマラ・ロホ版。 

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『ロミオとジュリエット』より バルコニーのパ・ド・ドゥ(クリストフ・パストール版)岡野祐女、北井僚太
撮影:岡村昌夫(テス大阪)

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『パリの炎』栁澤郁帆、淵山隼平
撮影:岡村昌夫(テス大阪)

栁澤郁帆、淵山隼平による『パリの炎』は若さ溢れる感じが良い。スロヴェニア国立マリボル歌劇場バレエ団の中島麻美と大巻雄矢は『エスメラルダ』。中島の憂いを感じさせながらのしなやかな強さが良く、大巻のメリハリをもったチャーミングな踊りも魅力的。石原古都、吉山シャール ルイは『くるみ割り人形』を品良く、優しさを感じさせて。
大石裕香は自作自演で『呼風/Kohû』。能の謡や鼓童の太鼓、石田弥仙による衣装、ヘアメイクも良い効果をあげ、中性的な、"神"?と感じさせるような踊りに目が離せなかった。

そしてラストは、栁澤郁帆、二山治雄の『薔薇の精』。二山の踊りは、本当に"薔薇の精"そのもの。ジャンプの美しい残像が眼に焼き付いて帰途についた。
(2023年7月26日 兵庫県立芸術文化センター阪急中ホール)

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『エスメラルダ』中島麻美、大巻雄矢
撮影:岡村昌夫(テス大阪)

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『真夏の夜の夢』吉田合々香、JOEL WOELLNER
撮影:岡村昌夫(テス大阪)

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『くるみ割り人形』石原古都、吉山シャール ルイ
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『呼風/Kohû』大石裕香
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『フローラの目覚めより』フローラのヴァリエーション 齋藤杏
撮影:文元克香(テス大阪)

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『薔薇の精』栁澤郁帆、二山治雄
撮影:岡村昌夫(テス大阪)

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