ワールドレポート／大阪・名古屋

すずな あつこ　Text by Atsuko Suzuna

音楽が鳴り出すと、幕前、上機嫌でクリスマスパーティに向かう準備をしているドロッセルマイヤー（振付も手掛けた山本庸督）、気の良いおじさんという雰囲気でウキウキとした気分が伝わる。続いては、メイドさん（三島久美子）と一緒にお菓子を作っているクララ（中島希歌）、つまみ食いに来る兄フリッツ（池田健人）。そんなプロローグからパーティの場面へ。中島の素直な演技に好感が持てたとともに、高い技術も持つ実力派ダンサーである池田が、きちんとこの役に合う子供らしさを持って踊っていたのも良い。また、三島のメイドは、味のある演技で、全幕を通して大きな存在感を持つ。2幕のお菓子の国でもキャンディーボンボンの曲で、"スイーツ"の子供たちの中心のマダムスウィートとして表情豊かに観客を引き込んだ。最初のお菓子作りとこの役がクララの夢の中でリンクしていると自然に感じさせる。

山本庸督の演出・振付は上に書いたことだけでなく、小さなことも含めて様々なオリジナリティが散りばめられていて楽しい。ねずみの中心もなんとカップル！　ラットキング（マイヤー敬洋ハリー）とラットクイーン（田之畑美祐）の二人がねずみ達を率いるのだ。
お菓子の国では、さまざまなお菓子のディベルティスマンが踊った後に、クララに一論の花をプレゼントする。花のワルツは伸びやかなテクニックを楽しませた伊藤恵を中心に。そして、シュガープラムとプリンス──金平糖のグラン・パ・ド・ドゥは浅野真奈と萩本理王。この役には珍しいロイヤルブルーのチュチュに身を包んだ浅野の踊りは屈託無く明るく、そして華やか、萩本の人の良さそうな雰囲気での、軽さを持ったハツラツとした踊りとともにクライマックスを盛り上げた。
ラスト、夢から目覚めたクララに、配達屋さんが、お菓子の国でもらったのと同じお花をクララに──で、幕。可愛らしい余韻が残った。
（2023年8月5日　東大阪市文化創造館大ホール）

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