ダンサーたちの世代毎の表現を追求した苫野美亜振付『mid/point』ウィーン国立バレエの橋本清香&木本全優による『Mozart à deux』など──Contemporary Dance Pieces II

ワールドレポート/大阪・名古屋

すずな あつこ Text by Atsuko Suzuna

Contemporary Dance Pieces II

『十四夜月』『mid/point』苫野美亜:振付、『Mozart à deux』Thierry Malandain:振付

苫野美亜プロデュースで自身の作品2つ、『十四夜月』と『mid/point』に加え、同じ山口けい子バレエ出身でウィーン国立バレエ団の橋本清香と木本全優が踊るマランダイン振付『Mozart à deux』というプログラム。

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『十四夜月』 © 植村耕司

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『十四夜月』 © 植村耕司

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『mid/point』III 白鳥の歌|70代作品
尾本安代 © 植村耕司

まず、上演されたのは『十四夜月』。龍安寺の石庭に想を得た作品。満月である十五夜の「完全」には一つ足りない十四。十五あるはずなのに、どこから見ても一つの石は見えない──「不完全」。「物事は完成した時点から崩壊が始まる」という日本人の思想に向き合って創られた作品だ。石井麻依子のピアノと斎木なつめのヴァイオリンの落ち着いた音色の中で、実力派ダンサー4人、中村春奈、横山翼、山田琴音、大藤明礼生が踊った。続いては、ティエリー・マランダンがモーツァルトの曲に振付けた『Mozart à deux』。橋本の強い女性であることを実感させる堂々とした踊り、迫力とスケール感を持った木本の踊り。それでいて、どこかキッチュで記号的な面白さ。

休憩を挟んだラストは苫野美亜振付の『mid/point』。3つのパートに分け、ダンサーたちの世代毎の表現を追求した作品。まずは、横山翼、片山夏波と、歌うREMAHが登場する20-30代作品の「Inner(A)」。言葉も使いながらの瑞々しい表現だった。続く、30-40代作品は、松岡大、高瀬瑶子と、演奏の坂本弘道による「HYORI」。HYORI=表裏、だろうか? 大きな布で繋がった、舞踏の松岡とバレエの下地を持つ高瀬。スタートのジャンルは違っている筈なのに、とてもしっくりとトーンが合う。危うさと清らかさが共に感じられる──とても興味深い踊りだった。そして、谷桃子バレエ団シニアプリンシパルの尾本安代が踊った70代作品「白鳥の歌」。舞台中に広がるような大きなスカートを纏ったはじめのアームスの動きからも、この人がバレリーナなのだと実感させる。瞬間のフラッシュバックのように映し出される過去の踊り写真の数々──人生を少し振り返りつつ、落ち着いて、今もゆっくりと思う方向に歩むバレリーナ。大きな動きがなくても、しみじみと伝わる深みはさすがだ。
(2023年8月10日 神戸ファッション美術館オルビスホール)

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『Mozart à deux』木本全優 © 植村耕司

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『Mozart à deux』橋本清香、木本全優 © 植村耕司

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『mid/point』I Inner(A)|20-30代作品
横山翼、片山夏波 © 植村耕司

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『mid/point』HYORI |30-40代作品
松岡大、高瀬瑶子
坂本弘道(演奏) © 植村耕司

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『mid/point』HYORI |30-40代作品 松岡大、高瀬瑶子 © 植村耕司

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