菅井円加と二山治雄による心が浮き立つ『ラ・シルフィード』、ローザンヌコンクールで話題になった宮崎圭介など──BALLET AT A GATHERING

ワールドレポート/大阪・名古屋

すずな あつこ Text by Atsuko Suzuna

BALLET AT A GATHERING

末松かよ:企画・構成

これから素晴らしいダンサーに成長していきそうなコンクールなどで頭角を現す若手から、今、まさに世界の檜舞台で活躍するトップダンサーまでが集ったガラ「BALLET AT A GATHERING」。厳選された出演者で、踊ったダンサー全てが何か目を引くものを持っていたように思う。そのなかでも特に記憶に残ったものを挙げたい。

今年のローザンヌ国際バレエコンクールの日本人最上位、8位に入賞した宮崎圭介は、『白鳥の湖』より王子のヴァリエーションを踊った。まっすぐな軸、基本に忠実な美しい形に加え、初々しい素直な笑顔で王子の喜びを表現したのが良い。また、モナコのプリンセスグレースアカデミーに留学中の江見紗里花は『眠れる森の美女』第1幕よりローズアダジオのヴァリエーション。顔が小さく恵まれたスタイルでの輝きを持ったオーロラ、知性も感じさせた。

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『白鳥の湖』より王子のヴァリエーション
宮崎圭介 撮影:岡村昌夫(テス大阪)

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『眠れる森の美女』第1幕よりローズアダジオのヴァリエーション
江見紗里花 撮影:岡村昌夫(テス大阪)

伊藤華奈は武藤圭吾をパートナーに、『白鳥の湖』第3幕よりグラン・パ・ド・ドゥを踊った。彼女にとてもよく似合うオディールだった。とても伸びやかでヴァリエーション1曲の中にもドラマを見せるのが良い。また、武藤の長い手脚を活かした踊りも目を引いた。

昨年のローザンヌ国際バレエコンクール2位を経て、ノルウェー国立バレエ団に進んだ田中月乃の『エスメラルダ』よりヴァリエーションは、踊り心を感じさせる表現がとても良い。奥野亜衣は、ラヴェルの『ボレロ』を編曲した音楽に自ら振付けた『Recollection』で大人の深みを観せた。ウエイン・マクレガーの『Chroma』を踊ったのはシュツットガルト・バレエ団のガブリエル・フェゲレド。美しい甲、ポーズの一つひとつが美術作品のようで、男性には珍しいほどの柔らかさも感じさせる。

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『エスメラルダ』よりグラン・パ・ド・ドゥ
伊藤杏珠、森本晃介 撮影:岡村昌夫(テス大阪)

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『白鳥の湖』第3幕よりグラン・パ・ド・ドゥ
伊東葉奈、武藤圭吾 撮影:岡村昌夫(テス大阪)

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『エスメラルダ』よりヴァリエーション
田中月乃 撮影:岡村昌夫(テス大阪)

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『Kyouki』藪内暁大
 撮影:岡村昌夫(テス大阪)

そしてラストの菅井円加と二山治雄による『ラ・シルフィード』よりパ・ド・ドゥが圧巻。二人が登場するだけで、舞台が美しく光りさす森になったよう。二山の滞空感のあるジャンプやアレグロの脚裁きといった技術も見事だが、菅井の妖精そのもののようなキラキラとして香り立つ魅力。二人の、やりとりを遊ぶような、楽しげで、それでいて全ての動きの意味が自然に感じられる踊り──ずっと観ていたい──パ・ド・ドゥだけで終わっちゃうなんて、と、心かの底から思った。
(2023年8月4日 長岡京記念文化会館)

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『Chroma』ガブリエル・フェゲレド
 撮影:岡村昌夫(テス大阪)

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『ラ・シルフィード』よりパ・ド・ドゥ
菅井円加、二山治雄 撮影:岡村昌夫(テス大阪)

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