望月則彦没後10年の今年、山口陽子&河邉こずえによる新たな振付・演出による『カルミナ・ブラーナ』

ワールドレポート/大阪・名古屋

すずな あつこ Text by Atsuko Suzuna

アルティ・アーティスト・プロジェクト

『カルミナ・ブラーナ』山口陽子、河邉こずえ:振付

京都府立府民ホール "アルティ" に実力派のダンサーや振付家たちが集って作品を創り発表する "アルティ・アーティスト・プロジェクト"。その芸術監督を務めていた望月則彦が2013年に他界してから10年が経とうとしている。2010年に望月の脚本で、河邉こずえと山口陽子が振付けた『カルミナ・ブラーナ』を、河邉と山口の2人が新たに振付けしなおして上演した。

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『カルミナ・ブラーナ』 撮影:出田憲司

カール・オルフの音楽での『カルミナ・ブラーナ』、世界中で、さまざまな振付で上演されているのはご存知の通り。振付家によって、どう描くかは様々ながら、人間というものの生き様を見つめながら、人が生きることについて根源的に考えるということは共通しているのではないかと思う。望月の脚本では、"糸"が重要な役割を担う。"繋ぐ糸"、"絡まる糸"、芥川龍之介の小説のように、上から降りてくる"蜘蛛の糸"......。
全体を見渡す女神を思わせる河邉と、その伴侶のような浅井永希のさすがの存在感と迫力を持った踊り。そして、もう一カップル、中田亜優と増田唯一の若さ、瑞々しさ、喜びが溢れる踊りを中心に、ベテラン吉田ルリ子を筆頭に、それぞれの個性を表現できるダンサーたちが、その持ち味を活かして数人の踊りや群舞を担っていく。そこに、人と人を"繋ぐ糸"、全体で"絡まる糸"、遠く天から降りてくるような"蜘蛛の糸"が、舞踊作品を織り上げるように大きな役割を担う。

成安造形大学コスチュームデザインコース准教授の田中秀彦の衣装監修で同学の学生たちがデザインし制作した衣装も、動きを効果的に観せながら、この作品の世界観に沿っていることが感じられて、とても良かった。
(2023年7月7日 京都府立府民ホール"アルティ")

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中田亜優、増田唯一 撮影:出田憲司

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『カルミナ・ブラーナ』 撮影:出田憲司

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『カルミナ・ブラーナ』 撮影:出田憲司

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『カルミナ・ブラーナ』 撮影:出田憲司

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河邉こずえ、浅井永希 撮影:出田憲司

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河邉こずえ、浅井永希 撮影:出田憲司

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『カルミナ・ブラーナ』増田唯一 撮影:出田憲司

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