田川陽子のカルメン、野々山亮のホセ、水城卓哉のエスカミリオ、ピアノとパーカッションの演奏とともに上演された『カルメンを奏でる』

ワールドレポート/大阪・名古屋

すずな あつこ Text by Atsuko Suzuna

田川陽子バレエアカデミー

『カルメンを奏でる』堀登:振付

ドイツのゲルセンキーシェン州立バレエ劇場で活躍後帰国し、各コンクール1位受賞など数々の優秀な生徒を育てている田川陽子。彼女が主宰する団体のサマーコンサートだ。

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『カルメンを奏でる』
カルメン:田川陽子、ホセ:野々山亮
撮影:田中 聡(テス大阪)

1部、2部は、小作品やクラシックのグラン・パ・ド・ドゥなどで構成されたコンサート。そして、第3部がメイン演目、堀登振付の『カルメンを奏でる』。鬼頭久美子と霜浦陽子のピアノ連弾、林美春のパーカーションの生演奏に乗せて、『カルメン』を約45分と比較的コンパクトにした作品。タイトルロールのカルメンを踊ったのは田川陽子、ホセを野々山亮、エスカミリオを水城卓哉、ジプシーを稲垣夏子、菰田いづみ、宮前七海の3人。
田川のカルメンは、幕開け間もないジプシーとの絡みから、粗野で蓮っ葉な雰囲気が自然で物語に引き込む。そして、水城のエスカミリオの存在感がとても大きいのが印象的。自分がカッコいいと自覚しているモテ男であるのはもちろんなのだが、加えて、とても優しげ。叙情的なメロディーの中でカルメンと踊るパ・ド・ドゥを観ていると、ただただ想い合っている相思相愛の恋人同士、二人ともがピュアな想いの上の純愛に見えてくる。まるでこの二人、カルメンと(ホセではなく)エスカミリオが主役のよう。そして、そう見えてしまうと、もう、野々山のホセが、真面目だけれど融通の効かない単なるストーカーのように感じられたり......。だが、やはり、ラストは切ない。ホセに殺されてしまったカルメンとオロオロするホセをよそに、女たちと楽しげに過ごすエスカミリオという場面で幕。前半にホセの見せ場を増やすなど、もう少し充実した長さであっても良かったのかも、とも個人的には感じたが、必要な場面を適度な長さで繋ぎ、誰もがドラマに入っていきやすい構成で楽しめる仕上がりだったと思う。
(2023年7月8日 名古屋市芸術創造センター)

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エスカミリオ:水城卓哉、カルメン:田川陽子
撮影:大藤飛鳥(テス大阪)

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カルメン:田川陽子、エスカミリオ:水城卓哉
撮影:田中 聡(テス大阪)

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カルメン:田川陽子、エスカミリオ:水城卓哉
撮影:田中 聡(テス大阪)

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カルメン:田川陽子、エスカミリオ:水城卓哉、ホセ:野々山亮
撮影:大藤飛鳥(テス大阪)

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カルメン:田川陽子、ホセ:野々山亮
撮影:田中 聡(テス大阪)

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カルメン:田川陽子、ホセ:野々山亮
撮影:大藤飛鳥(テス大阪)

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『カルメンを奏でる』カルメン:田川陽子、エスカミリオ:水城卓哉 撮影:田中 聡(テス大阪)

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