ワールドレポート／大阪・名古屋

すずな あつこ　Text by Atsuko Suzuna

女性ダンサーは全員40歳以上というバレエ公演が大阪、吹田市のメイシアター主宰で開催された。改訂振付と指導を高岸直樹が担当し、国田美和が指導するとともに『ライモンダ』第3幕を主演した。
今、40歳代、50歳代と年齢を重ねても、身体の衰えをあまり感じさせず、内面表現がより深まるダンサーの踊りをあちらこちらで観る。バレエのレッスンメソッドだけでなく、身体のケアの方法なども日々研究され取り入れることができる状況の中で、もちろん若い頃以上の努力は必要になるだろうけれど、踊ることができる身体を保ち続けるベテランダンサーが増えているのだろう。そんななかでの興味深い企画。
実際、主役やソリストを踊ったダンサーたちは、皆さん、なかなか良い踊りを観せてくれた。まず幕開けは『レ・シルフィード』、しっとりとした大人の落ち着きが期待できる演目だ。これは男性も40歳以上の今村泰典で、さすがにプロらしく。溌剌とした魅力の林杏樹のマズルカ、優しげで柔らかくバレエ経験の良い積み重ねが感じられる篠崎留美、清らかな雰囲気が良い西端光子のワルツで楽しませてくれた。

後半は『ライモンダ』第3幕「結婚式の場」。こちらは男性は若手も共にで、今村に伊藤大地、田中惇、岩崎賢人が加わっての４人のソリスト、そしてジャン・ド・ブリエンヌは水城卓哉。４人のソリストをパートナーにグラン・パ・クラシックを踊った女性は大山ヘスキと篠崎、林、西端だった。
また、マズルカ、チャルダッシュといった民族舞踊も踊られた。チャルダッシュの中心は華やかで堂々としたダンサー・舞原聖子。また、40歳代以上というなかでも特に人生の先輩と思える方々が豪華なドレス姿で貴婦人役を担われた。
そして、ライモンダとジャンヌ・ブリエンヌ、国田と水城はさすがに惹きつける踊り。水城は甘いマスクに、最近、堂々とした雄々しさも加わり風格を感じさせる。国田は50歳代に差し掛かっている筈だが、衰えないテクニック、若い頃よりも気品が増して主役に相応しい輝きを持った踊り。気持ちよさそうな笑顔での回転技、シャープなシェネも健在だった。

ただ、全体のことで少し気になったことを正直に書くと、今回S席6000円と、プロのバレエ団公演とほぼ同様の値段設定でされていたのだが、正直なところコール・ド・バレエ、群舞の中には、プロ公演としては力不足かと感じるダンサーもいた。初めての企画ということで、なかなかすべては理想通りにはいかない中で関係者の方々が尽力されたのだと思うが、様々なタイプの方に舞台出演の機会を考えるなら、主役やソリストはプロでもアマチュアの舞台にするという形もあったかもしれない。だが、そうではなく、もし、コール・ド・バレエの隅々まで、納得できるレベルの40歳以上のダンサーが揃ったら、それぞれの長い経験も活かした素晴らしい公演になる気がする。もし、同様の企画の2回目を開催されるチャンスがあったら、そんな方向を目指して創っていただけたら......と思う。
（2023年5月29日　吹田・メイシアター大ホール）

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