日本初演の『竹取物語』そして『騎兵隊の休息』『ボレロ』──法村友井バレエ団のトリプルビル

ワールドレポート/大阪・名古屋

すずな あつこ Text by Atsuko Suzuna

法村友井バレエ団

『騎兵隊の休息』ユーリー・ペトゥホフ:振付、マリウスプティパ:原振付、『竹取物語』法村牧緒・宮本東代子:振付、『ボレロ』法村牧緒:振付

2003年に法村友井バレエ団がロシア3都市(サンクトペテルブルグ、プスコフ、ノブゴロド)で公演し大好評を得た時と同じ3演目の公演。そのロシア公演ではスタンディングオベーションの上、熱狂した観客が舞台に押し寄せる大好評、大盛り上がりだったと聞く。そして、この3演目の中の『竹取物語』の日本での上演は、今回が初めて。最近、続々と主役級のダンサーが育っているこのバレエ団で、3演目ということで、多彩なダンサーの実力を一堂に観ることが出来た。音楽は、江原功指揮、関西フィルハーモニー管弦楽団(『竹取物語』は録音音源)。

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『騎兵隊の休息』マリア:春木友里沙、ピョートル:池田健人 撮影:尾鼻文雄(OfficeObana)

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『騎兵隊の休息』テレーザ:今井沙耶 撮影:尾鼻文雄(OfficeObana)

幕開けは『騎兵隊の休息』。2001年のこのバレエ団の初演時に、ユーリー・ペトゥホフから指導を受け、主役ピョートルを繰り返し踊って来た法村圭緒の指導で、初役の若手達が主要な役を担った。マリアは優しげな美人で舞台に出ただけでふわっと光がさすような春木友里沙、ピョートルの池田健人は、誠実さにコミカルなしぐさも加わって、この役にとても良く合う。また、テレーザの今井沙耶は、今回はやんちゃでチャッカリ、モテモテという役柄をしっかり演じて(お姫様役などで観ることも多いダンサーながら)さまざまな役をこなせる人だと実感した。連隊長の奥田慎也を筆頭に、大尉の今井泰典、少尉の巽誠太郎のクスッと笑わせるやりとりもさすがで、とても楽しめた。また、村の娘たちのコール・ド・バレエはもちろんだが、兵士達、男性コール・ド・バレエも12人の納得できるレベルのダンサーが揃い見応えがあった。

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『竹取物語』竹麻呂:大西慎哉 撮影:尾鼻文雄(OfficeObana)

日本初演の『竹取物語』は、神秘的な竹藪、太鼓なども登場する楽しい村祭りの様子など場面の変化が絶妙で、飽きさせない展開。ただ、全体的に少しエンターティメント的に感じられ、もう少し、かぐや姫(法村珠里)や竹麻呂(大西慎哉)、翁(今中雄輔)、媼(佐野裕子)といった人物の内面を、言葉がないからこその表現でじっくり観せる部分が多くても良かったのではと思う。
とはいえ、もちろん、かぐや姫と竹麻呂の心を通わせ踊るシーンはいくつかあり、法村珠里の美しい身体のラインを活かしてのたおやかな踊り、経験を重ねてきたからこその心情表現はさすがで、大西の初々しさも感じさせる繊細な表現も良かった。月の女神の堤本麻起子が素晴らしいスタイルと存在感で物語を引き締めていたのも印象的。
ラストは『ボレロ』。法村版の『ボレロ』は、ラストに向かって高揚していく迫力はもちろんだが、"人"の美しさ、カッコ良さを際立たせながら激しさを増していくのが特徴。神木遥、今井大輔、荻野あゆ子を中心に、踊れるダンサー達がぐいぐいと引き込んだ。クライマックス、壮大な群舞の大きな波のようなうねりの末、中心の今井が叫び、爆発する──ロシアで観客が熱狂し、舞台に押し寄せたくなったのが分かる気がした。
(2023年6月4日 あましんアルカイックホール)

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『竹取物語』かぐや姫:法村珠里、竹麻呂:大西慎哉 撮影:尾鼻文雄(OfficeObana)

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『竹取物語』かぐや姫:法村珠里、竹麻呂:大西慎哉、月の女神:堤本麻起子 撮影:尾鼻文雄(OfficeObana)

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『竹取物語』 撮影:尾鼻文雄(OfficeObana)

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『ボレロ』 撮影:尾鼻文雄(OfficeObana)

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『ボレロ』中央:今井大輔 撮影:尾鼻文雄(OfficeObana)

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