オデッサ・バレエから避難したダンサーたちがウクライナの現状と重ねた『ラ・ペリ』を上演

ワールドレポート/大阪・名古屋

すずな あつこ Text by Atsuko Suzuna

『ラ・ペリ』

ユリヤ・コズロヴァ:振付

ウクライナのオデッサ歌劇場出身で、2004年に来日、現在神戸で活躍するユリヤ・コズロヴァ。戦禍のウクライナから、彼女の元に避難してきたダンサーを中心に上演された『ラ・ペリ』だ。男性主役である皇帝イスカンダルを芦屋大学バレエコースの深見瑛斗が踊るなど、芦屋大学バレエコースの卒業生や在校生も出演しての舞台となった。

1幕の作品。当日配布された印刷物によると、ペルシャ神話をもとにしているけれど、現代にもあてはまる現状として描いたとの演出意図。というのは、これは、皇帝イスカンダルが不死の花である蓮をもとめて、フェアリー・ペリの「不死の花」であるエメラルドを強引に奪い取る。ペリは弱まり天国へ導かれるが、奪い取った「不死の花」は、ペリに属していたものなので、イスカンダルのもとではまったく意味のないものだったという物語。これをロシア軍のウクライナへの攻撃と重ね合わせた。「ウクライナからすべてを奪ってもロシアには何も残らない、みんなに気付いて欲しいです」という印刷された言葉が心に響く。

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© 後藤仙太郎

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© 後藤仙太郎

ラ・ペリを踊ったのはオデッサ・バレエ団の マラ・ヴァレリア。愛らしく繊細に悲劇のヒロインを踊った。皇帝イスカンダルの深見瑛人は大役への緊張も伝わったが、丁寧に役に向き合い仕上げていた。彼は経験を重ねることでもっともっと伸びることが出来そうだ。
また、ウクライナからのイザベラ・アンナのほかに、日本人ダンサー数人がソロヴァリエーションを踊ったが、そのなかで久保本美咲の成長が目を引いた。以前は高身長で長い手脚の恵まれたスタイルということに目が行っていたが、数年のうちに、その良い点を活かしながら、メリハリを持って惹きつけることができる大人のダンサーになっていることを実感した。
(2023年3月24日 芦屋ルナ・ホール)

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© 後藤仙太郎

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