ワールドレポート／大阪・名古屋

すずな あつこ　Text by Atsuko Suzuna

川口節子バレエ団の創作作品を上演する公演「舞浪漫 My Romann」。クラシック全幕の折はオーケストラ演奏で上演する同バレエ団だが、これまでの「舞浪漫」は、いつも録音上演だった。だが、今回は、稲垣宏樹指揮、中部フィルハーモニー交響楽団の演奏とともに踊った。特に川口の創作作品はクラシック音楽を使ったものが多いので期待が膨らんだ。ところが残念なことに、本番日はスケジュールが合わず、前日のゲネプロを拝見した。

オペレッタ『こうもり』より舞踏会で幕開け。J・シュトラウス2世の音楽に乗せて松村一葉が振付けた。主要ダンサー男女が出演して、群舞はコミカルな動きも織り込みながら、速い！　これを大人数でこなせるのは実力あるダンサーたちだからこそ。
続いては、川口節子がモーツアルトの曲に振付けた『オー！ マイリトルマエストロ』。なんと、一番小さな男の子（松村周）が燕尾服を着た"マエストロ"＝"指揮者"で、その向こうでチュチュの女の子たちが踊る。今回は、本当のマエストロ＝稲垣が、その前のオーケストラピットにいて、余計に微笑ましかった。パッヘルベルの「カノン」に川口節子が振付けた『生きる力』は今回の新作。立てられた木片の左右に男女9カップル、加えて子供が2人。その木片が私には墓標のようにも思え、それとともに穏やかな調子で、"生きる"ということの根源的な意味に向き合わせてもらった。

休憩という形で『ラ・ヴァルス』演奏に続いては『奇跡の人』。マーラーの曲を使って2003年に川口節子が振付けた。この作品もそうだが、川口がこういったストーリーのある作品を創る時、このために作曲されたわけではない筈の曲が、あたかもこのために作曲されたように馴染むのが素晴らしいと思う。それを今回は生演奏で味わえたのだ。今回、ヘレン・ケラー役は高橋莉子、サリバン先生を高木美月。もがき、苦しみながら、やがて前へ進む姿が心に沁みいった。
ユーリ・ポソポフ振付の『Bells』よりパ・ド・ドゥを素晴らしいプロポーションの2人、ジェラルディン・メンドーサとディラン・グティエレスが稲垣ちひろのピアノ演奏で踊ったのを挟み、この団体の作品に度々出演している木原浩太が自作の『瀕死の白鳥』。やはり"生死"に向き合わせてくれる作品。彼の透明感ある中性的な雰囲気が死と向き合う白鳥にしっくりと重なる。彼は川口の作品にも群舞の中心で踊り作品をレベルアップさせていた。『ドン・キホーテ』第3幕よりグラン・パ・ド・ドゥは、この団体で育ち、現在、ウエスト・オーストラリア・バレエ団で活躍する野黒美茉夢とその双子の兄弟・野黒美拓夢。さすがにに華のあるキトリと好青年バジル。

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