声明とともに想いをつむぐ『時の庭─交差する空間』ほか、向井華奈子モダンダンスリサイタル III
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ワールドレポート/大阪・名古屋
すずな あつこ Text by Atsuko Suzuna
藤田佳代舞踊研究所モダンダンス公演・向井華奈子モダンダンスリサイタル III
『雨』藤田佳代:作舞、『時の庭─交差する空間』向井華奈子:振付
向井華奈子の3度目のリサイタル。まず、幕開けは師である藤田佳代作舞の『雨』。国内外で幅広く活躍する書家・和田彩が "雨" と書いた作品を背景に踊られる作品。降る雨を描いたような、つくづく漢字は象形文字だなと思うが、眺めていると涙を流しているようにも見える書の前に、背を曲げてトボトボと表れる向井。集中度の高い踊りが出来るダンサーだと感じる。副題として「凍てついた悲しみ」、「雨は 天からやってくる」、「うす紫の月見草」と付けられた踊りが群舞とともに繰り広げられた。向井の視線は少しずつ上がって行き、何かを決意した表情でこちらをしっかりと見てのラストに前向きな意志を感じた。
『雨』中央は向井華奈子 撮影:中野良彦
そして後半は向井が振付けた『時の庭─交差する空間』。環境問題に想いを馳せ、花や地、波など自然が地球上で調和する中で、人だけが、戦争をするなど、その調和を壊しているではという思いから手掛けた作品だという。
アルヴォ・ペルトの曲に加えて、真言宗僧侶、小笹全照、捨田利義匠、鴨内栄俊の声明が心に響いた。ダンサーたちの "花" や "月" 、仏像を思わせる動きなどの中で、向井自身が演じたのは "人" 。人も自然の一部と考えると、調和を乱すことにならないのではないか、"人" として、そのようにありたいという思いが、静かなダンスから穏やかに伝わった。それが仏教の教えと重なると感じての声明とのコラヴォレーションだろう。本当に世界中の人々が、そうあることができたら、と思いながら観た。
(2022年11月26日 神戸ファッション美術館オルビスホール)
『時の庭─交差する空間』向井華奈子 撮影:中野良彦
『時の庭交差する空間』
菊本千永、かじのり子
声明:小笹全照、捨田利義匠、鴨内栄俊 撮影:中野良彦
『時の庭交差する空間』
向井華奈子、金沢景子、石井麻子
声明:小笹全照、捨田利義匠、鴨内栄俊 撮影:中野良彦
『時の庭交差する空間』 撮影:中野良彦
『時の庭交差する空間』 撮影:中野良彦
『時の庭交差する空間』 撮影:中野良彦
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