山本隆之、福岡雄大、福田圭吾、本島美和、細田千晶などが矢上香織・久留美・恵子や福田紘也の振付作品を踊った──K★バレエスタジオ36thコンサート

ワールドレポート/大阪・名古屋

すずな あつこ Text by Atsuko Suzuna

K★バレエスタジオ36thコンサート

『海賊』矢上香織:振付、『死神』福田紘也:振付ほか

新国立劇場バレエ団で活躍する福岡雄大、福田圭吾、福田紘也、それに彼らの先輩で現在、同バレエ団オノラブルダンサーの山本隆之を育てたK★バレエスタジオ。その36回目のコンサート。当然、彼らも出演したとともに、彼らとともに踊って来た元新国立劇場バレエ団の本島美和や細田千晶も出演しての見応えのある公演となった。
幕開けは矢上香織振付の『海賊』第3幕より花園。藤原遙香、吉田來実を中心に女性ダンサーたちがオープニングらしく華やかに。続いて若手のヴァリエーションやグラン・パ・ド・ドゥが続き、『海賊』第1幕よりのグラン・パ・ド・ドゥでランケデムを踊った、いつもこのスタジオとともに活動することの多い佐々木美智子バレエ団の佐々木嶺や、『ゼンツァーノの花祭り』のグラン・パ・ド・ドゥを踊った美濃大和など、また、下の世代でも、女性だけでなく、楽しみな男性ダンサーが育っていることが感じられた。

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『海と真珠』せむしの仔馬より 本島美和、細田千晶、福岡雄大
撮影:文元克香

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『パキータ』エトワール:長谷川梨央、リュシアン:福田圭吾
撮影:岡村昌夫(テス大阪)

そして、強く印象に残ったのは、『せむしの仔馬』より「海と真珠」。明かりがついた瞬間、2人の女性の美しさに目を見張った。踊ったのは本島美和、細田千晶と福岡雄大。華奢で輝くように美しい女性2人と、雄々しい筋肉がまた美しい福岡雄大。女性らしさと男らしさのコントラストが素晴らしい。私はもちろん生き方など社会的な意味では男女平等でないといけないと思っているけれど、芸術作品のなかで、"女らしさ"、"男らしさ"が魅力的に出ているものは素晴らしいと思う(それは、同時に、女役を男性がしたり男役を女性がしたりする場合も含めて)。
落ち着きをもってエトワールを踊った長谷川梨央と、とても伸びやかなリュシアンの福田圭吾を中心とした『パキータ』も楽しめた。

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『死神』福岡雄大、三木志月
撮影:岡村昌夫(テス大阪)

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『死神』本島美和、福岡雄大、福田紘也、三木志月
撮影:岡村昌夫(テス大阪)

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『Bardo』福田圭吾 撮影:文元克香(テス大阪)

『死神』は、福田紘也が、落語「死神」を言葉を用いない表現に変換するなら、と、創った作品だという。本島美和、福岡雄大、福田紘也自身と、子役の三木志月の4人だけのダンサーによるもの。和を感じさせるメロディーも使いながらの秀作で、4人の踊りの迫力に惹き込まれた。

続いて上演された『Bordo』は、矢上恵子振付の名作。中に、以前、ヴァルナ国際バレエコンクールで福岡雄大が踊って評価が高かった「Bourbier」も組み込まれており、今回、このパートを踊ったのは福田圭吾。踊るダンサーによって、やはり印象が変わるわけだが、彼の踊りからは優しく自然体であることがより強く感じられる。この踊りの最後の、神聖なものを両手で大切にしながら、そっと天に返すところは、やはり心に深く染み入った。何度も観たい踊りだ。

可愛らしい魅力が満喫できる矢上香織振付『マーチ』を経て、ラストは、矢上久留美振付『宝石の踊り アラジンより』。吉田千智と山本隆之、長谷川梨央と福田圭吾、細田千晶と福岡雄大など、本当に宝石のようなキラキラとしたダンサーたちの踊りを楽しんで幕となった。
(2022年9月18日 吹田メイシアター)

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『Bardo』撮影:岡村昌夫(テス大阪)

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『宝石の踊り アラジンより』撮影:岡村昌夫(テス大阪)

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