意欲的な創作作品と『オーロラの結婚』──ゆかりバレエ公演2022

ワールドレポート/大阪・名古屋

すずな あつこ Text by Atsuko Suzuna

ゆかりバレエ公演2022

神原ゆかり、中村隆彦、牧村直紀:振付

101A3317.jpg

『オーロラの結婚』オーロラ姫:齊藤耀、デジレ王子:牧村直紀
© エー・アイ 撮影:山崎光彦(Mitsuhiko Yamazaki)

『眠れる森の美女』からの『オーロラ姫の結婚』で幕を開けた舞台。妖精のパ・ド・シスや宝石、猫や赤ずきんちゃんとお馴染みの踊りの数々が繰り広げられた。フロリナ王女と青い鳥を踊ったのは、福当音々と檜山和久で、穏やかで優しい雰囲気の踊りに好感が持てた。主役、オーロラ姫とデジレ王子は、谷桃子バレエ団で活躍する齊藤耀と牧村直紀。さすがに2人とも正確な技術、こなれた踊りに安心感がある。齊藤のうっとりと天を仰ぐような優雅な雰囲気、牧村のバネの効いたダイナミックな踊りが目を引いた。

休憩を挟んでの2部は、神原ゆかり振付、民謡集団Pureの演奏での創作作品。「祭り─SAWAGI」、「枯れ葉─MAI」、「藍の段─水の流れ」、「妖炎」、「桜─FUBUKI」、「KAMI─NARI」の6つのピースで構成されており、"和"の様々な姿が表現される。檜山和久と神原ゆかりの「枯れ葉─MAI」、その2人に彫刻のように均整のとれた身体のダビデ・デリアが加わっての「藍の段─水の流れ」に引き込まれ、さらに、次の「妖炎」では、中心の近江奈央の迫力を持った踊りに眼が釘付けに。近江は続いてデリアと「桜─FUBUKI」を踊った。ヨーロッパで活躍する2人、2人ともが惹きつける力のあるダンサーだと実感。ラストは全員での「KAMI─NARI」で壮大に締めくくった。

そして3部がまた、興味深い演目が続いた。まずは、バレエの指揮で定評のある稲垣宏樹のピアノ演奏での2曲。松本直樹と神原ゆかりが踊った『月の光』はナチュラルで美しいパ・ド・ドゥ。神原のソロ、『亜麻色の髪の乙女』は、少女のトキメキが感じられ、何かをそーっと大切にするようなラストも記憶に残った。
ガラッと変わってモダンディーズの中村隆彦振付『ボレロ』は、年配男性ダンサー7人による独特のニュアンスが素晴らしい。高齢と言えるだろう年齢ながら、鍛えられたダンサーの肉体だからこそのしっかりとした動き。"無表情のユーモアに目が話せなかった。
公演の最後は、牧村直紀振付の『Delibes suite』。ドリーブの曲に乗せて、クラシック・チュチュで。牧村、檜山、齊藤、神門亜美を中心に実力派ダンサーたちが華やかに締めくくった。
(2022年9月19日 日本特殊陶業市民会館ビレッジホール)

101A4069.jpg

『枯れ葉ーMAI』檜山和久、神原ゆかり
© エー・アイ 撮影:山崎光彦(Mitsuhiko Yamazaki)

101A4617.jpg

『月の光』松本直樹、神原ゆかり
© エー・アイ 撮影:山崎光彦(Mitsuhiko Yamazaki)

101A4687.jpg

『亜麻色の髪の乙女』神原ゆかり
© エー・アイ 撮影:山崎光彦(Mitsuhiko Yamazaki)

5K4A0096.JPG

『オーロラの結婚』オーロラ姫:齊藤耀、デジレ王子:牧村直紀
© エー・アイ 撮影:山崎光彦(Mitsuhiko Yamazaki)

5K4A0330.jpg

『KAMIーNARI』
© エー・アイ 撮影:山崎光彦(Mitsuhiko Yamazaki)

5K4A0447.jpg

『ボレロ』(モダンディーズ作品)
石井登、市伊孝、清水フミヒト、高谷大一、武井一仁、中村隆彦、松本直樹
© エー・アイ 撮影:山崎光彦(Mitsuhiko Yamazaki)

5K4A0485.jpg

『Delibes suite』
© エー・アイ 撮影:山崎光彦(Mitsuhiko Yamazaki)

ページの先頭へ戻る