ローザンヌ国際バレエコンクール日本予選2022 レポート

ワールドレポート/大阪・名古屋

すずな あつこ Text by Atsuko Suzuna

ローザンヌ国際バレエコンクールの日本予選が、10月1日、2日、兵庫県立芸術文化センターで開催された。「ブラジルなどでは予選があるのに、どうして日本ではないのだろう?」と、日本人の活躍を見ながら疑問に思った芸術文化プロデューサー、「ダンスウエスト」代表の西尾智子が、ローザンヌ国際バレエコンクール芸術監督兼事務局長のキャサリン・ブラドニーに交渉し、次の大会が50周年の節目ということもあり快諾されて実現した。
ビデオ審査で選ばれた51名から49名が参加(会期中に1名欠場)。男女2人ずつの4名に来年1月30日〜2月5日に行われるローザンヌ本選に無償で参加する権利(渡航費も支給される)が与えられた。

選ばれた4人を紹介しよう。
まず、齋藤杏(14歳、デパルクバレエスクール)。彼女はジュニア女子101番と、全てにおいて一番最初に演技しなければいけなかったのだが、そんなプレッシャーはまったく感じさせず。クラシックの『フローラの目覚め』よりフローラのヴァリエーションは、柔らかく優しく素直で観ていて幸せになる踊り。対してコンテンポラリー『Geometric trajectory』(振付:Maurice Causey)では、ガラッと変わって、鋭くメリハリの効いた魅力を見せた。この年齢で、踊りによってこれだけ違った良さを出せることに驚く。

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齋藤杏 撮影:古都栄二(テス大阪)

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齋藤杏 撮影:文元克香(テス大阪)

松丸凜(16歳、アクリ堀本バレエアカデミー)は、まず、クラシックでは小さな顔にとても長い脚を活かして、『ドン・キホーテ』夢の場より、とても愛らしい「キューピット」。そして、コンテンポラリー『the missing voice』(振付:Kimiho HULBERT)では、ボーイッシュにも感じられるシャープな踊りの迫力に眼が釘付けになった。

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松丸凛 撮影:古都栄二(テス大阪)

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松丸凛 撮影:古都栄二(テス大阪)

島長賢汰(15歳、ルシアバレエスクール)は、クラシックで『ラ・フィーユ・マル・ガルテ』よりコーラスのヴァリエーションをチャーミングで自然な魅力、正確な軸の美しいトゥールで観せてくれたとともに、コンテンポラリー『A Boy with his Head Down』(振付:佐藤玲緒奈)での、なめらかさをもったセンチメンタルな表現も良かった。

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島長賢汰 撮影:文元克香(テス大阪)

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島長賢汰 撮影:古都栄二(テス大阪)

シニアでただ1人選ばれたもっとも年長の小嶋萌生(17歳、S・Kバレエ)は、クラシックで『眠れる森の美女』第3幕よりデジレ王子のヴァリエーション。王子らしい華を持った喜び溢れる踊り。脚を戻す時のスッとした動きも魅力的だった。コンテンポラリー『Take Off』(振付:本間紗世)が、また秀逸。スピーディーな動きと力強さをためるような部分、その変化のメリハリにセンスの良さが感じられ、動きそれぞれが意味を持ち迫ってきた。
今回、出場資格を得た参加者は、全員と言えるくらい容姿に恵まれ、技術もあったのだが、選ばれた4人は、それだけではない"観る人を惹きつけるもの"を持っていると感じた。それは天賦のものなのか、そうでなかったとしても、きっとバレエのレッスンだけでは身につけられないものなのだろう。

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小嶋萌生 撮影:古都栄二(テス大阪)

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小嶋萌生 撮影:文元克香(テス大阪)

2日間の流れも簡単に紹介しておきたい。
まず1日の朝は、クラシック・レッスンからスタート。本選同様に、14歳〜16歳のジュニア、16歳〜18歳のシニアの区分けで、舞台で行われ、それも審査された。
クラシック・レッスンを担当したのはドミニク・ジュネヴォワ。「シンプルなレッスンを行います」という言葉から始まるレッスンだったが、アレグロなどはフランス・メソッドの複雑さも感じた。とはいえ、素敵なアンシェヌマン。ビデオ審査を経ただけあって、皆、よくこなしていた。審査ということで個々への注意はなしという形(全体へのアドヴァイスはある)。2日間では難しいかとは思うが、個々へのアドヴァイスの機会が作れたら理想的だと、つい、思ってしまう。エティエンヌ・フレイによるコンテンポラリー・レッスン、各ヴァリエーションの通し稽古も行われた。

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ローザンヌ日本予選 撮影:古都栄二(テス大阪)

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ローザンヌ日本予選 撮影:古都栄二(テス大阪)

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ローザンヌ日本予選 撮影:古都栄二(テス大阪)

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ローザンヌ日本予選 撮影:古都栄二(テス大阪)

2日目はいよいよヴァリエーション審査。ジュニアのクラシック→コンテンポラリー→シニアのクラシック→コンテンポラリーと進み、審査の時間を経て決選進出者発表。10名の決選進出者が発表された。ここで驚いたのは、シニア女子が1人も決選に残らなかったこと。区分けのバランスなどは関係なく、才能や可能性をシビアに審査されていることを痛感した。
そして決選、10名が再度、クラシック、コンテンポラリーのヴァリエーションを披露。
その後の審査時間にはゲストダンサーのパフォーマンス。二山治雄の『A Solo for Diego』(振付:リチャード・ウェアロック)、小㞍健太が踊った『薮の中』より 武弘の証言(振付:島地保武)、上野水香と厚地康雄による『眠れる森の美女』よりグラン・パ・ド・ドゥと、これだけでも十分に見応えのあるものだった。
そして、上記の、本選出場者発表となった。
ところで、繰り返し言われていたのは、ここで選ばれなかった参加者も、また、参加しなかった人も、このあとのビデオ選考に例年通り応募できるということ。今回、惜しくももれてしまった方も、ぜひ、再挑戦して欲しいと思う。

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ローザンヌ日本予選 撮影:古都栄二(テス大阪)

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ローザンヌ日本予選 撮影:古都栄二(テス大阪)

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