実力派ダンサー達が熱演、リン・テイラー・コーベット振付『ガチョーク讃歌』ほか

ワールドレポート/大阪・名古屋

すずな あつこ Text by Atsuko Suzuna

GGGプロジェクト2022

『ガチョーク讃歌(Great Galloping Gottshalk)』リン・テイラー・コーベット:振付ほか

1982年にABTで初演され、来日公演でも上演されて多くのバレエファンの記憶に強く残るリン・テイラー・コーベット振付『ガチョーク讃歌(Great Galloping Gottshalk)』。踊りたいと思うダンサーは多いものの、小さな団体ではその交渉も躊躇してしまうものだった。だが、そこを躊躇せずにSNSで見つけたリン・テイラー・コーベットにメッセージを送ったのが今回の主催者、シェリバレエスクール代表の春田琴栄。コーベットから快い返信を得て、彼女の指導をリモートで受けられることに(実際の来日も望んだが、コロナ禍、彼女の持病もあり、それは実現しなかった)。佐々木大をバレエマスターに、ミストレス兼通訳に岸田あずさを迎え、下村由理恵、米沢唯、福岡雄大といった錚々たるダンサー、ローザンヌ国際バレエコンクールを経て英国ロイヤル・バレエに入団した伸び盛りの佐々木須弥奈など実力派ダンサーが集い見応えのある舞台となった。

1部では、ガラコンサートということで、クラシック・バレエのグラン・パ・ド・ドゥが多数上演された。そのラストには、菅井円加が福田昴平をパートナーに『眠れる森の美女』第3幕を踊るなど、これもとても見応えのあるもの。菅井の、とてもナチュラルに思える美しさ、独特のニュアンスを持ちながらスーッと心に入ってくる踊りに『眠れる森の美女』のオーロラ姫には珍しい独特の魅力を感じた。また、良い意味で意外でもあり印象的だったのは、佐々木須弥奈がポーランド国立歌劇場バレエ団の北井僚太と踊った『ジゼル』第2幕よりパ・ド・ドゥ。まだ若手ながら、深みを感じさせる踊りで、今後が益々楽しみになった。

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『ガチョーク讃歌』
ある詩人の死:米沢唯、福岡雄大 撮影:JVSフォト

そして2部はいよいよ『ガチョーク讃歌』。佐々木須弥奈を中心に、実力派ダンサーたちの群舞が重厚感を持って引き込んだ「プエルトリコの土産」で始まり、「ある詩人の死」は、新国立劇場バレエ団のプリンシパルカップル米沢唯と福岡雄大。軽さを持った動きで初々しい初恋の喜びが伝わって来て、とても良かった。石本晴子、佐々木夢奈、細川莉沙、3人娘の「トーナメントギャロップ」は、とてもテクニカルな動きを遊ぶように楽しく、対して、振付家コーベット自身の人生をテーマにしたという『サバンナ』を踊ったのは下村由理恵。人生と向き合う、その深みある表現は、ベテランのプリマ、下村だからこそ。
ライバルの男性2人が技を競い合う『バナナツリー』は、佐々木嶺、山口浩輝。軽快で、コミカルで、何度も観たくなる楽しさ。そして、コーダのように技が飛び交う全員での「マンチェイガー」で華やかに幕を閉じた。 
(8月9日 大阪国際交流センター大ホール)

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プエルトリコの土産:佐々木須弥奈 撮影:JVSフォト

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バナナツリー:佐々木嶺、山口浩輝 撮影:JVSフォト

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サバンナ:下村由理恵 撮影:JVSフォト

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トーナメントギャロップ:石本晴子、佐々木夢奈、細川莉沙 撮影:JVSフォト

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プエルトリコの土産 撮影:JVSフォト

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プエルトリコの土産:北井僚太 撮影:JVSフォト

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プエルトリコの土産:佐々木須弥奈 撮影:JVSフォト

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