夏山周久改訂振付の『ラ・バヤデール』婚約の宴を中心に多彩な演目を上演──全日本洋舞協会合同公演

ワールドレポート/大阪・名古屋

すずな あつこ Text by Atsuko Suzuna

全日本洋舞協会合同公演

『ラ・バヤデール』婚約の宴 夏山周久:改訂振付、ほか

全日本洋舞協会の合同公演。この舞台のために創られた意欲的な作品も複数楽しめる協会員の方々の意欲が感じられる舞台だった。

幕開けは『ジゼル』第2幕よりパ・ド・ドゥ。片岡典子と速水渉悟が踊った。片岡の丁寧な踊りに好感が持てる。ただ、深い表現が要求されるこの踊りには、つい欲が出てしまう。まだ少し硬さが感じられるので、踊り重ねて、さらに良いものにしていって欲しい。速水の美しいテクニックと自然な演技はさすが。

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『ジゼル』第2幕よりパ・ド・ドゥ 片岡典子、速水渉悟 撮影:尾鼻文雄(OfficeObana)

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『La belle danseuse』辻本響子 撮影:尾鼻文雄(OfficeObana)

次の『Change(チェンジ)』は、肥田亘の自作自演。トランスジェンダーの彼女そのものが出るような作品。後半の悩みから吹っ切れたような大きな踊りが良い。一柳麗の振付で辻本響子が踊った『La belle danseuse』は、リゾートウェアのような明るさを感じる衣装にポアントで楽しく。肩の力を抜いたショーのようでセンスの良い振付。辻本の根の真面目さが感じられたが、この作品ではもっと力を抜いても良かったかもしれない。

大前光市は、SHUNJI、Tomoka、Chihiroとさまざまな障がいを持つダンサーたちと4人で、それぞれのソロも含んだ作品をプロデュース。障がいでもあるかも知れないけれど、それぞれの持ち味からくる表現は確実に独特の個性であることを納得させられる。それぞれのダンサーの強いオリジナリティを興味深く観た。

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大前光市、SHUNJI、Tomoka、Chihiro
撮影:尾鼻文雄(OfficeObana)

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『ラ・バヤデール』より太鼓の踊り
趙晟智、ほか 撮影:尾鼻文雄(OfficeObana)

最後は、夏山周久改訂振付で『ラ・バヤデール』婚約の宴。実力派ダンサー、赤木佑里恵、池尾奈穂子、大成遼、久保本美咲、ド・ユンジェ、森本晃介のパダクションに観応えを感じたとともに、黒川月菜中心の壺の踊りマヌの可愛らしさも微笑ましかった。趙晟智を筆頭とした、とても元気で勢いのある太鼓の踊りも印象的。そして、伸びやかで、主役に相応しく堂々とした矢部希実加のガムザッティ、速水渉悟のちょっとやんちゃな魅力も感じさせるメリハリを持ったソロルに惹き込まれて幕を閉じた。

この舞台、ゲスト以外の出演者を対象に4つの賞が贈られた。大阪府知事賞にガムザッティを踊った矢部希実加、枚方市長賞に『ジゼル』の片岡典子、枚方市教育委員会教育長賞に大前光市プロデュース、一般社団法人全日本洋舞協会賞に「太鼓の踊り」チームが輝いた。
(2022年6月26日 枚方市総合文化芸術センター関西医大大ホール)

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『ラ・バヤデール』よりパダクション
赤木佑里恵、池尾奈穂子、大成遼、久保本美咲
撮影:尾鼻文雄(OfficeObana)

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『ラ・バヤデール』
ガムザッティ:矢部希実加 撮影:尾鼻文雄(OfficeObana)

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『ラ・バヤデール』
ガムザッティ:矢部希実加、ソロル:速水渉悟 撮影:尾鼻文雄(OfficeObana)

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