若手注目株の2人、春木友里沙と今井大輔を主役に──法村友井バレエ団『シンデレラ』

ワールドレポート/大阪・名古屋

すずな あつこ Text by Atsuko Suzuna

法村友井バレエ団

『シンデレラ』法村牧緒:演出、法村圭緒:振付

スター性のあるダンサーが育っている、そう実感できる公演だった。2020年6月に予定されていた法村友井バレエ団の『シンデレラ』。前年、2019年秋の『海賊』の主役メドーラで文化庁芸術祭新人賞を受賞した春木友里沙がタイトルロールということで、とても楽しみにしていたのだが、コロナ禍で「中止」と発表され、とても残念に思っていた。その後、バレエ団は秋の公演『眠れる森の美女』を冬に延期するなどの変更をしながら公演活動を再開。その『眠れる森の美女』の3幕、結婚式の場面のディヴェルティスマンでシンデレラ役を踊る春木を観ながら「全幕のシンデレラの予定もあったよね??」と更に気になるようになっていた。

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シンデレラ:春木友里沙、王子:今井大輔、継母:大力小百合、義姉:中内綾美、義妹:中谷亜衣子
撮影:尾鼻文雄(OfficeObana)

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シンデレラ:春木友里沙 撮影:尾鼻文雄(OfficeObana)

そんな中、公演活動を少しづつ、コロナ前のペースに戻しつつあった同バレエ団。2021年秋の『ロミオとジュリエット』では、今井大輔がロミオ役で文化庁芸術祭新人賞を受賞。いよいよ、今回、その春木と今井が主演する『シンデレラ』が実現した。法村牧緒が日本人初の留学生としてワガノワ・バレエ学校で学んでいた折に現地で観たコンスタンチン・セルゲーエフ版『シンデレラ』の記憶を元に、ここに合うオリジナリティを持って振付けたこのバレエ団が大切にするレパートリー。今回、彼の演出で法村圭緒が振付を担った。音楽は、江原功指揮、関西フィイルハーモニー管弦楽団。

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シンデレラ:春木友里沙、仙女:堤本麻起子 撮影:尾鼻文雄(OfficeObana)

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シンデレラ:春木友里沙、王子:今井大輔 撮影:尾鼻文雄(OfficeObana)

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時の精:法村珠里 撮影:尾鼻文雄(OfficeObana)

春木と今井は2人ともが恵まれたルックス、体のライン、華があり、この作品の主役にぴったりだとあらためて実感。春木は、そんな華やかさを持ちながら、虐げられる部分では目を引きつつも自然な演技で、観客の心にスッと入ってきた。今井も、優しく甘い雰囲気の上での雄々しくダイナミックな動きで存在感を示した。
加えて、継母の大力小百合、義姉の中内綾美、義妹の中谷亜衣子のコミカルな魅力、気の弱そうな父役、奥田慎也の演技力、振付の法村圭緒が踊ったダンス教師もキャラクターによく合っていた。また、四季の精のバレリーナたちは、それぞれが主役を踊れるような実力派ばかりで、とても見応えがあった。

そして、子供達の中心で踊った時の精は法村珠里。鋭さを持った踊りは秀逸だ。また、3幕の始め、王子が世界中を旅してシンデレラを探すが、そこで、皆がガラスの靴に足を合わせようとするわけでないというのも印象に残った。スペインの踊りの中心、坂田麻由美は、踊り終えると「私じゃないわ!」という声が聞こえてきそうな潔さで靴から離れる。こんな女性もいることが自然で気持ち良い。とても自然な演出だと感じた。
(2022年6月5日 あましんアルカイックホール)

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シンデレラ:春木友里沙、王子:今井大輔 撮影:尾鼻文雄(OfficeObana)

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シンデレラ:春木友里沙、王子:今井大輔 撮影:尾鼻文雄(OfficeObana)

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シンデレラ:春木友里沙 撮影:尾鼻文雄(OfficeObana)

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