第35回こうべ全国洋舞コンクールの受賞たちの言葉
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ワールドレポート/大阪・名古屋
すずな あつこ Text by Atsuko Suzuna
例年、GWに開催されている「こうべ全国洋舞コンクール」。コロナ禍で2回中止を余儀なくされたが、3年ぶりに約700人のエントリーを得て開催された。
受賞後に世界的な活躍をしているダンサーも多く、レベルが高いとされるこのコンクール、今回も見応えのある踊りの数々が披露された。
各部門1位、モダンダンス部門グループ、創作の優秀賞の舞台写真、表彰式終了後にインタビュールームに来てくれた各部門1位受賞者のスナップ写真やいただいたコメントとともに、結果を報告したい(表彰式後、交通機関の都合等ですぐに帰らなければならなかった受賞者もいる)。
詳細は、下記、神戸新聞NEXTへ。
https://www.kobe-np.co.jp/info/youbu/2022/result/main.shtml
表彰式後の集合写真 撮影:古都栄二(テス大阪)
クラシックバレエ部門女性ジュニア3部第1位
森幸香「<くるみ割り人形>より金平糖のVa.」
影:古都栄二(テス大阪)
クラシックバレエ部門女性ジュニア2部第1位
片岡優杏「<白鳥の湖>より黒鳥のVa.」
撮影:古都栄二(テス大阪)
クラシックバレエ部門男性ジュニア2部第1位
阿賀田澪「<コッペリア>よりフランツのVa.」
撮影:古都栄二(テス大阪)
クラシックバレエ部門女性ジュニア1部第1位&ローズ賞
三浦衣織「<パキータ>よりエトワールのVa.」
撮影:古都栄二
クラシックバレエ部門、一番小さな年齢(10歳〜11歳)、女性ジュニア3部1位を獲得したのは、『くるみ割り人形』より金平糖の精のヴァリエーションを踊った三重県の森幸香(茉莉奈バレエスクール)。11歳、小学校6年生、「おばあちゃんに勧められてバレエを始めました。吉田都さんの金平糖に憧れて、何度も映像を観て、手の使い方とか表現を参考にしました」と話す。華があり、年齢以上に落ち着きが感じられる踊りだった。
女性ジュニア2部(12歳〜14歳)1位は、『白鳥の湖』より黒鳥のヴァリエーションを踊った片岡優杏(愛知県・森高子バレエ教室)。テクニックの強さ、妖艶な表情が印象に残る。
男性ジュニア2部(10歳〜13歳)1位は、『コッペリア』よりフランツのヴァリエーションを踊った阿賀田澪(愛知県・ヨシイバレエ芸術学園)。13歳、中学2年生。白いタイツがよく似合い、マナー良く、自然な笑顔の踊りに好感が持てた。「母が踊っているのが美しくて、3歳の時にバレエを始めました。将来ですか? バレエだけがすべてではない、バレエで努力することは他のことでも役立つと思っています。将来はダンサーか違う職業かは、まだ分かりません」と冷静に話してくれた。
女性ジュニア1部(15歳〜17歳)1位は、『パキータ』よりエトワールのヴァリエーションを踊った三浦衣織(東京都・シンフォニーバレエスタジオ)。顔が小さく手脚が長い美しいプロポーションでスケールの大きな踊り、優しさおだやかさも感じられた。
男性ジュニア1部(14歳〜18歳)1位は、『ラ・フィーユ・マル・ガルデ』よりヴァリエーションを踊った安海真之介(群馬県・山本禮子バレエ研究所)。すがすがしい表情での清潔感のある踊り。4歳から母・安海久美子が主宰するバレエ教室Graceでレッスンし、中学2年生からは山本禮子バレエ研究所で寮生活をしながら取り組む。「山本先生のところで出会った元ライプツィヒバレエの横関雄一郎さんが憧れ。頑張って力をつけて、ローザンヌ国際バレエコンクールに出場したい」と目を輝かせた。
クラシックバレエ部門女性ジュニア3部第1位 森幸香
クラシックバレエ部門男性ジュニア2部第1位 阿賀田澪
クラシックバレエ部門男性ジュニア1部第1位&ローズ賞 安海真之介
クラシックバレエ部門女性シニア第1位&兵庫県知事賞
伊東葉奈「<エスメラルダ>よりVa.」
撮影:古都栄二(テス大阪)
女性シニア(18歳〜31歳)1位は、『エスメラルダ』よりヴァリエーションを踊った伊藤葉奈(京都府・Etsuko.BALLET School)。タンバリンを持つこのヴァリエーションを歌うように楽しげに、高度なテクニックを鮮やかに見せた。クラシック・チュチュで踊られることが多い踊りだが、ジプシーらしくセパレートのティアードスカートで。5年前にこのコンクールで1位になった佐々木夢奈の衣装もこんなだったなと思い出していたら、そのもの、佐々木夢奈の衣装を借りたということ。母がバレリーナ・山本悦子、父がバレエ公演でも活躍する舞台監督・伊藤昌彦。昨年の吹田メイシアター開館35周年記念の山本隆之振付『白鳥の湖』で悪魔の娘オディールを踊るなど、最近、大きな役に抜擢されることが多い注目の存在だ。「でも、そんな風に認められるようになったのは、ごく最近のことなんです」と話す。今、23歳、中学生の頃までは「ただ、踊るのが楽しい」だけだった。その後、頑張る友人たちに刺激を受けて取り組んで、その蓄積が「最近、結果として現れるようになったのかな」と話す。コロナが落ち着いたら、機をみて海外のバレエ団のオーディションに挑戦したい思いもある。
男性シニア(19歳〜31歳)1位は、『タリスマン』よりヴァリエーションを踊った佐々木嶺(大阪府・佐々木美智子バレエ団)。伸びやかで柔らかみのあるジャンプ、しっかりとした回転技、繊細な気品も漂うとても魅力的な踊りだった。ご存知の通り、佐々木大と杉原小麻里の子息、姉・夢奈も上に書いた通り、やはりこのコンクールの1位を過去に受賞しているし、妹・須弥奈はローザンヌ国際バレエコンクール3位受賞を経て英国ロイヤルバレエで活躍中だ。嶺自身も、6年前にこのコンクールのジュニア1部1位受賞後、スウェーデン王立バレエ学校に留学、スペインのBallet de Catalunya、ポーランド国立ウッチ歌劇場バレエ団と海外でダンサー生活を送っていたがコロナ禍で帰国し、今、国内に活動の拠点を移している。「力をためて、また、海外も視野に入れて今後のことを考えていきたい。同じような境遇の仲間もいるので、相談できるのも心強い」とじっくり考えて進んでいく様子。
クラシックバレエ部門男性ジュニア1部第1位&ローズ賞
安海真之介「<ラ・フィーユ・マル・ガルデ>よりVa.」
撮影:古都栄二(テス大阪)
クラシックバレエ部門男性シニア第1位&神戸新聞社賞
佐々木嶺「<タリスマン>よりVa.」
撮影:古都栄二(テス大阪)
©クラシックバレエ部門女性シニア第1位&兵庫県知事賞 伊東葉奈
クラシックバレエ部門男性シニア第1位&神戸新聞社賞 佐々木嶺
モダンダンス部門シニア第1位&神戸市長賞 足立真珠
そして、モダンダンス部門。シニア1位は、なんと同点で2人が受賞。『虚空に堕ちる泪』を踊った足立真珠(神奈川県・野坂・坂本NSバレエスタジオ)と『瞬刻に啼く』を踊った平塚達也(茨城県・流通経済大学ダンス部 宗宮研究室)。
足立真珠に話を聞くことができた。21歳、日本女子体育大学ダンス学科の4年生。「大学には、いろんなジャンルのダンスの学生が集まっていて、とても刺激になります」と話す。今回、踊った作品は「コロナ禍前に坂本信子先生が創ってくださった作品です。コロナ禍で舞台が減ってしまって気持ちが落ちてしまった時期もありましたが、そのなかで2年間、踊りこんで」。昨夏の埼玉全国舞踊コンクールで入賞、その後、あきた全国舞踊祭モダンダンスコンクールで6位、東京新聞の全国舞踊コンクールで4位と着実に順位を上げてきて、今回、見事に1位に輝いた。「やはり、スタジオで踊るのと舞台で踊るのとは、空気感が違う。また、ビデオを見返して客観的に改善したりして......」。メドゥーサをモチーフにした作品、そのなかに、このコロナ禍での想いも込めた。「モダンダンスの、枠にとらわれない、自由に、自分らしく表現できるところが好き」。大学を卒業したら、海外に留学して、ゆくゆくはプロのダンサーになりたい。「観ているお客様を魅了できるダンサーになりたい」。
モダンダンス部門、ジュニア1〜3部でも熱戦が繰り広げられたが、複数のダンサーで出場するグループ部門、創作部門は出場者が少なく寂しい状況だった。コロナ禍で集合しての練習が難しい時が続いたこともあるかと思うが、エントリー数がグループ部門が7、創作部門は2。それでも、受賞作品は興味を引くものだったのだが、せっかくの機会なので、来年はもっと多くの作品を観ることができたら......と思う。
(2022年5月1日、3日〜5日 神戸文化ホール大ホール・中ホール)
モダンダンス部門シニア第1位&神戸市長賞 足立真珠「虚空に堕ちる泪」
撮影:文元克香(テス大阪)
モダンダンス部門シニア第1位&神戸市長賞 平塚達也「瞬刻に啼く」
撮影:文元克香(テス大阪)
モダンダンス部門ジュニア1部第1位
青笹玲那「眠りの前に、私は祈ろう」
撮影:文元克香(テス大阪)
モダンダンス部門ジュニア2部第1位
沖本真季「古ノ鎮魂歌」
撮影:岡村昌夫(テス大阪)
モダンダンス部門ジュニア3部第1位
池内せり「ココロなき 少女」
撮影:岡村昌夫(テス大阪)
モダンダンス部門グループ優秀賞
高塚祐希、上嶋葵、小松崎万由、青笹玲那、稲澤成実、生方芽、洪舒義、沖本真季「つめたいよるに」
撮影:文元克香(テス大阪)
創作部門優秀賞
磯結夏「侵食するAI」
撮影:文元克香
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