垣尾優&岡登志子、2人が "空" をテーマに創ったゾネ独特の作品を上演した

ワールドレポート/大阪・名古屋

すずな あつこ Text by Atsuko Suzuna

アンサンブル・ゾネ

「2022 空 そこはかとなく刻々に」垣尾優・岡登志子:振付

冒頭、「タマゴ」「レモン」「手ぬぐい」「アサヒ?」......と、どうも関係のないように思える単語をつぶやく女の子。その後、舞台に現れる"モノ"も、スーツケース、水差し、小さな加湿器?、ペットボトル、赤い毛糸玉......と脈絡なく見える。私がそのつながりを分かっていないだけなのかもしれない、、、でも、まぁ、ダンスを観る時、感じ方は自由だよねと心の中でつぶやきながら観る。
これとこれ、わざわざ隣り合わせって、シュールだなぁ......と思いながら、いつのまにかその世界に不思議に心地よく浸っている私。いつしか目の前で繰り広げられる世界がナチュラルに感じられる。こんな世界をスーッと自然に観客に届かせるのがアンサンブル・ゾネの凄さ、特性なのかも知れない。

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木馬少女:松村有実
撮影:Ryuhei Yokoyama

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心:岡登志子
撮影:Ryuhei Yokoyama

信じるメソッドに沿って、身体をきちんと創っているダンサーたち。ダンサーとして鍛えた身体を作っていながら、伝統的な、たとえば歌舞伎の"見得を切る"、チャイコフスキーの三大バレエの"ポーズをきっちりと見せる"といったこととは対照的な、淡々と流れるような時間。そこに、クスッとつい笑ってしまうような要素も散りばめられていて、いつのまにか見入ってしまう。
今回、公募で選出された4名のダンサーや美術家も出演し、多彩な魅力を楽しませてくれた。特に、そのなかの生駒里奈(盲目の女)は、岡登志子(心)と2人の場面でお互いが感じ合いながらの表現が伝わった。また、いつもゾネの舞台で観ている桑野聖子(工女)の踊りが、以前より格段に惹きつける力を増しているのを感じた。初めて観た頃には、どこか自信なげな少女に思えた桑野が、大人の女性になり、存在感を増しながら、繊細な部分は失わずに表現している、これからの彼女も益々楽しみになった。赤いワンピース姿の松村有実(木馬少女)の"眼"に引き寄せられそうになる踊りも良かった。他にも多彩なダンサーの個性の違いとともに、心地よく自然なゾネ独特の世界を楽しんだ。
(2022年2月20日 デザイン・クリエイティブセンター神戸 KIITOホール)

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工女:桑野聖子
撮影:Ryuhei Yokoyama

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雲雀:古川友紀、木馬少女:松村有実
撮影:Ryuhei Yokoyama

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盲目の女:生駒里奈
撮影:Ryuhei Yokoyama

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神父:垣尾優
撮影:Ryuhei Yokoyama

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『空 そこはかとなく刻々に』撮影:Ryuhei Yokoyama

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