「牧神とニンフの午後」ドビュッシーの曲とともに踊られ関典子の身体の変幻が見事だった

ワールドレポート/大阪・名古屋

すずな あつこ Text by Atsuko Suzuna

関典子ダンス公演「牧神とニンフの午後」

「牧神とニンフの午後」『瀕死の白鳥』バレエ版、コンテンポラリー版ほか 関典子:振付、出演

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『牧神とニンフの午後』関典子
(ピアノ連弾:佐藤一紀、三浦栄里子)
撮影:井上大志(Leo Labo)

中央に置かれた台の上で、ベールを被った関典子が、ゆっくりと動き出す──昨年、映像作品として創られ、舞台では今回が世界初演となる関振付『牧神とニンフの午後』だ。佐藤一紀と三浦栄里子のピアノ連弾に乗せての踊り。その身体はどこか不自由そうでもあり、また、どんな形にもなれそうにも思え、そして妖しげに見えたり、ニジンスキーのように狂気を孕んでいるようにも感じられる。曲はもちろん、あのクロード・ドビュッシーの『牧神の午後への前奏曲』で、古代エジプトの壁画のような横向きのポーズなどニジンスキー作品を思い起こさせる部分もある。だが違うのは、関のソロであり、女性である彼女が、ある時は牧神パンに見え、またある時にはニンフに見えるということ。もう一度観たいと思わせる作品だ。

2015年に関が兵庫県立芸術文化センターの薄井憲二バレエ・コレクションのキュレーターに就任した直後の企画展で上演された『瀕死の白鳥』のバレエ版とコンテンポラリー版も踊られた。バレエ版はミハイル・フォーキン自身の舞踊譜に基づいた復元上演で、若林絵美が踊った(ピアノ:三浦栄里子)。現在、オーソドックスとされている振付とはだいぶ違うのが興味深い。コンテンポラリー版は関の自作自演(ヴァイオリン:佐藤一紀、ピアノ:三浦栄里子)で、黒いシンプルな布を纏い黒い羽を散らしながら踊る。死を目の前にしての激しさ、キレと迫力のある踊りに圧倒された。

最後は『動物の謝肉祭』(ピアノ連弾:佐藤一紀、三浦栄里子)。関が准教授として指導する神戸大学舞踊ゼミ他有志が、人工芝を切ったものを様々な形に変化させながら踊った。フレッシュな踊りで、コミカルな魅力と、男性も女性も、ファンタジーのなかの動物ように可愛らしい。若さが眩しかった。
(2022年2月12日 伊丹アイフォニックホール)

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『牧神とニンフの午後』関典子
(ピアノ連弾:佐藤一紀、三浦栄里子)
撮影:井上大志(Leo Labo)

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『瀕死の白鳥』コンテンポラリーダンス版
関典子(ヴァイオリン:佐藤一紀、ピアノ:三浦栄里子)
撮影:井上大志(Leo Labo)

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『牧神とニンフの午後』関典子
(ピアノ連弾:佐藤一紀、三浦栄里子)
撮影:井上大志(Leo Labo)

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『瀕死の白鳥』バレエ版
若林絵美(ピアノ:三浦栄里子)
撮影:井上大志(Leo Labo)

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『動物の謝肉祭』神戸大学舞踊ゼミ他有志
(ピアノ連弾:佐藤一紀、三浦栄里子)
撮影:井上大志(Leo Labo)

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『動物の謝肉祭』神戸大学舞踊ゼミ他有志
(ピアノ連弾:佐藤一紀、三浦栄里子)
撮影:井上大志(Leo Labo)

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