名村空がお伽の国の女王デビュー──貞松・浜田バレエ団『くるみ割り人形』お伽の国ヴァージョン

ワールドレポート/大阪・名古屋

すずな あつこ Text by Atsuko Suzuna

貞松・浜田バレエ団

『くるみ割り人形』貞松正一郎:演出、マリウス・プティパ、レフ・イワーノフ:原振付

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クララ:宮本萌、ドロッセルマイヤー:貞松正一郎
撮影:古都栄二(テス大阪)

貞松・浜田バレエ団恒例のクリスマス時期の『くるみ割り人形』公演。お菓子の国ヴァージョンとお伽の国ヴァージョンという2つのヴァージョンをレパートリーに持ち、2つを日替わりで上演する時期が続いていたが、コロナ禍以降の昨年と今年は、お伽の国ヴァージョンのみの上演となっている。少女クララ(宮本萌)が、くるみ割り人形=お伽の国の王子(幸村恢麟)にお伽の国に招かれ、お伽の国の女王と王(名村空と水城卓哉)を中心に様々なお伽話の登場人物達に歓迎されるという流れで物語が進むヴァージョンだ。昨年は残念ながら録音での上演だったが、今年はまた、江原功指揮、びわ湖の風オーケストラの演奏に乗せて行われた。

まず、クララの宮本の目を輝かせ、全てを楽しんでいるような踊りに惹き込まれた。フリッツの切通理夢もフレッシュで良い。また、お伽の国の王子の幸村は、他の演目で高いテクニックが特に印象に残るダンサーだが、小柄ながら真面目で礼儀正しい雰囲気に、王子らしい気品が感じられることを再認識した。そんな宮本と幸村のパ・ド・ドゥはイキイキとして清々しい喜びに溢れていた。

雪のワルツは上山榛名と大門智を中心に。毎年、このバレエ団の雪ではコール・ド・バレエも実力者が揃っているからこそのスピーディーで複雑なフォーメーション変化が楽しめる踊りに「ワァ!」と声を上げたくなる。

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雪の女王:上山榛名 撮影:古都栄二(テス大阪)

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お伽の国の女王:名村空、お伽の国の王:水城卓哉
撮影:古都栄二(テス大阪)

2幕。エスパーダにぴったりの武藤天華と大きな踊りが印象的な松尾珠里中心のロライロ&エスパーダ(スペイン)、佐々木優希の抜けるような色白の肌での憂いある踊りが眼に残るシェーラザード(アラビア)、ちょっとキッチュで可愛らしい福田咲希と切通のファーメイ(中国)、スタイル抜群の美女達(上山榛名、尾﨑理沙、山野井萌、井上ひなた)とピエロ(上村輝)のおしゃれでコミカルなパリジェンヌ&ピエロ(あし笛)、いつ見ても衰えないキレのある動きの恵谷彰のトレパーク、井勝と小さな子供達のサンタクロースとスノーマン(キャンディボンボン)と、適材適所の配役でのディベルティスマンを楽しんだ。

そしてお伽の国の女王は今回、この役が初となる名村空。
経験を重ねた水城卓哉の優しげで堂々としたサポートを得ながら、品格が感じられる端正な踊りを観せてくれた。金平糖のヴァリエーションでの空気の揺れを感じさせるような繊細な魅力の踊りも良かった。
(2021年12月19日 神戸文化ホール・大ホール)

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ロライロ&エスパーダ:松尾珠里、武藤天華
撮影:古都栄二(テス大阪)

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シェーラザード:佐々木優希、桑田充
撮影:古都栄二(テス大阪)

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トレパーク:恵谷彰 撮影:古都栄二(テス大阪)

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クララ:宮本萌 撮影:古都栄二(テス大阪)

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