松岡伶子舞踊生活75周年記念公演『ドン・キホーテ』──田中沙季と市橋万樹の主演で

ワールドレポート/大阪・名古屋

すずな あつこ Text by Atsuko Suzuna

『ドン・キホーテ』

ナターリャ・ボリシャコーワ:原振付、松岡璃映・市橋万樹:演出・再振付*

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『ドン・キホーテ』キトリ:田中沙季、バジル:市橋万樹 撮影:むらはし和明

戦後間もない頃にバレエを始め、越智バレエ団を経て上京、谷桃子バレエ団で20年近く活躍し、現在、名古屋で指導を重ねる松岡伶子。その舞踊生活75年の節目の公演だ。育てた生徒には、ローザンヌ国際バレエコンクールのスカラシップでパリ・オペラ座バレエ学校に留学した河合佑香や、バレエ・インターナショナル・インディアナポリスのプリマを務めた大岩千恵子、様々な賞に輝き、現在もバレエ団で活躍する碓氷悠太など素晴らしいダンサーが多数いる。

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キトリ:田中沙季、バジル:市橋万樹 撮影:むらはし和明

今回は75年のお祝いに相応しい演目、明るく楽しい『ドン・キホーテ』。主役キトリ&バジルを踊ったのは田中沙季と市橋万樹。市橋は、高いテクニックにちょっとやんちゃな雰囲気がバジルにぴったり。田中は、長い手足を美しく活かした踊り、クラシック・バレエのプリマに大切な清楚さが見えたことにも好感が持てた。2人のパ・ド・ドゥはとても爽やかだった。

また、主役以外にも目を引くダンサーが多いことも実感。成熟した大人の魅力を表現した大道の踊り子の御沓紗也、さすがの存在感で惹きつけた碓氷悠太。夢の場のソリスト、愛の妖精の兵藤杏の軽く鮮やかで、伸びるべきところは気持ちよく伸びる踊り、森の女王の仲沙奈恵の恵まれたスタイルを活かした穏やかな微笑をたたえた踊りも良かったし、3幕の結婚式の3人のソリスト、近藤璃季子、渡部もえ、御沓もそれぞれ高レベル。特に、ジャンプの多い第1ヴァリエーションを、フワッとした軽さを感じさせて着地音なく見せてくれた近藤の踊りには目が釘付けになった。
コール・ド・バレエを観ていても、しっかりとした基礎に基づいた良いダンサーが続々と育ちつつある団体であることを実感した。
(2021年12月5日 愛知県芸術劇場大ホール)

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キトリ:田中沙季、バジル:市橋万樹 撮影:むらはし和明

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大道の踊り子:御沓紗也、エスパーダ:碓氷悠太 撮影:むらはし和明

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ドルシネア姫:田中沙季、愛の妖精:兵頭杏、ドン・キホーテ:高宮直秀 撮影:むらはし和明

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ジプシーソリスト:田頭果枝、奥田丈智 撮影:むらはし和明

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キトリ:田中沙季、バジル:市橋万樹 撮影:むらはし和明

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