越智久美子とワディム・ソロマハの主演で、このバレエ団オリジナルの『ロミオとジュリエット』を再演

ワールドレポート/大阪・名古屋

すずな あつこ Text by Atsuko Suzuna

越智インターナショナルバレエ『ロミオとジュリエット』

『ロミオとジュリエット』越智久美子:演出振付

創立70周年記念公演として、2019年に越智久美子の演出・振付で初演された『ロミオとジュリエット』。その折に名古屋市民芸術賞特別賞を受賞したこの作品を再演した。当初、今回の公演は、コロナ禍で昨年の上演がままならなかった『海賊』が予定されていたようだが、今年2月に越智久美子が名古屋市芸術賞の芸術奨励賞、3月にワディム・ソロマハが外国人として初めてとなる愛知県芸術文化選奨文化賞を受賞したことで、二人が主演するに相応しい演目をと『ロミオとジュリエット』となったという。

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ジュリエット:越智久美子、ロミオ:ワディム・ソロマハ
撮影:岡村昌夫(テス大阪)

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ロミオ:ワディム・ソロマハ 撮影:岡村昌夫(テス大阪)

幕開けから、ロミオの無邪気さも見える若々しい踊りに惹き込まれる。ソロマハはもうベテランのはずなのに、少年のようなフレッシュな魅力を失わないことがつくづく素晴らしいと思う。加えて、パ・ド・ドゥでのサポートも的確。そして、ジュリエットの越智久美子も登場では少女のように弾ける感じ、そして、場面が進むにつれて、恋を知った女性の情感を持った表現を深めていった。特に心に迫ったのはラスト。仮死の薬の効果から目覚めると、傍らでロミオが倒れている。それが本物の毒薬での死だと悟ると、もう、何の逡巡もなく「この人がいないなら、この世にいる意味なんてない」という声が聞こえてきそうな迷いのない様で自らを刺して息絶えるのだ。

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越智久美子、ワディム・ソロマハ
撮影:岡村昌夫(テス大阪)

演出上の工夫も所々に凝らされていた。特に納得したのが、マキューシオ(ヤロスラフ・サレンコ)の死からティボルト(ビクトル・コスタコフ)を殺してしまうまでの場面。両家の争いを終わらせたいロミオは、マキューシオとティボルトの争いで、ティボルトを追い詰めて、ほぼ勝ちが決まったマキューシオを、仰向けに倒れているティボルトのところに仲直りさせようと連れて行く。そこで、半身を起こしたティボルトに刺されてマキューシオは死に至るのだ。ロミオがマキューシオの死に責任を感じ、狂ったようにティボルトに向かっていく心情がソロマハの卓越した演技もあって、手に取るように伝わってきた。

ソリストも良く、大下結美花を中心に、戸田蓮香、岩田わかな、加藤萌依、前田素奈、南佑奈、野寄心晴が踊ったジュリエットの友人たちは粒ぞろい。広場での道化の神谷駿斗の高テクニックも楽しんだ。彼はもう少し笑顔が大きくなるとこの役にはさらに良さそうだ。クスッとさせる演技が秀逸な乳母役の杉山聡美、柔らかい雰囲気で品を感じさせるキャピレット夫人の松本真由美などがしっかりと脇を固め、見応えのある全幕に仕上がっていた。
(2021年11月13日 愛知県芸術劇場大ホール)

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キャピレット夫人:松本真由美、キャピレット公:ワレリー・グーセフ 撮影:岡村昌夫(テス大阪)

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ジュリエットの友人:大下結美花、戸田蓮香、岩田わかな、加藤萌依、前田素奈、南佑奈、野寄心晴 撮影:岡村昌夫(テス大阪)

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ジュリエット:越智久美子、ロミオ:ワディム・ソロマハ 撮影:岡村昌夫(テス大阪)

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越智久美子、ワディム・ソロマハ 撮影:岡村昌夫(テス大阪)

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越智久美子、ワディム・ソロマハ 撮影:岡村昌夫(テス大阪)

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